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赤い獅子と芍薬の花 オーガスタスとマディアン  作者: 心響 (しのん)『滅多に書かない男女恋愛物なろう用ペンネーム』天野音色
二章
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オーガスタスの介抱 3



 夕食が終わり、オーガスタスがマディアンを寝室に運ぼう。

と抱き上げた時、彼女の母は、オーガスタスに笑顔で近寄る。


挿絵(By みてみん)


「頂き物の高級酒がございますの。

この後、飲んで行かれません事?」


オーガスタスは少し、困った顔をし

「いや、俺は…」

そう、断ろうとする。


マディアンは母が、彼の身分が近衛の左将軍補佐だと知って、愛想を振りまいてる。

と解り、母に、オーガスタスに代わって告げた。


「彼は忙しい身なのに、こうしてお世話して下さるんだから、無理は言っちゃ駄目よ。お母様」


母は、そうね。

と意見を引っ込め、食卓の席に残る近衛の隊長ローフィスに、残り四人の娘の名を次々と上げ、勧めていた。


ローフィスは

「婚約者が居るので」

と、丁寧な断りを入れ、テーブルの母と娘達を、がっかりさせていた。



 寝台に、マディアンを乗せて身を起こすオーガスタスに、彼女はそっと謝罪する。

「母はその…娘が五人も居るものですから…皆嫁(とつ)がせないと。

と必死なんです」

「貴方がたを、とても愛していらっしゃる」

「ええ。

幸福を願ってますわ」


オーガスタスが暗がりの中、胸痛む表情を見せ、マディアンはもう少しで…身体の痛みも忘れ、彼に駆け寄りそうになった。


少し…動いたところで背中と腿に痛みが走り…それで、呟く。

「…天国に居るご両親もきっと…天国に居るからこそ、余計に…貴方が幸福に成ることを、願っていらっしゃると思うわ」


オーガスタスはそれを聞いて俯き…そして…ぼそり。と言った。

「俺の中で二人は未だ、青い顔をし、目を(つむ)って、冷たい石の床の上に横たわっている」


マディアンはそれを聞いて、激しく泣き出しそうに成った。

だけど彼が、女の涙が辛いのだと思い直し、必死で…告げる。

「それは…肉体だわ。

魂はきっと…ずっと貴方を見つめているわ」


オーガスタスはそっ…と顔を上げて、掠れた声で囁く。

「そうかもしれない。

俺は…かなり、運がいい。

それを思うと…二人が俺を必死で…悪運から、引き上げようとしている。

とは…感じている」


マディアンは、ほっ。として、囁き返した。

「きっと…そうだわ」


そう言った時、子供の頃のオーガスタスが、両親に心から愛されて育った…その様子が、目に見えるようで、マディアンは涙が滴った。


そんなにも愛してる幼い息子を、この世にたった一人残し、()かなくてはならなくて、どれ程辛かったでしょう…。


そう思うと、マディアンは扉が閉まり、オーガスタスの足音が遠ざかるのを聞きながら、涙で頬を、濡らし続けた。



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