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赤い獅子と芍薬の花 オーガスタスとマディアン  作者: 心響 (しのん)『滅多に書かない男女恋愛物なろう用ペンネーム』天野音色
二章
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ヨーンの襲撃 3




 前庭に辿り着くと、ギュンターはもう、大勢の女性達に取り囲まれていた。


シェダーズが椅子を勧め、それに習って腰掛けようとして…浮かす。

「ごめんなさい。

一人になって考えたいの」


マディアンはそのまま、横の蔓の巻き付く石壁に囲まれた小道へ、歩き出していた。

シェダーズが素早く背後で囁く。

「貴方が失恋されたというのは…左将軍補佐殿ですか…?!」


マディアンは返事を返さず振り向きもせず…小道のその先。

屋根のある小さな屋外のあずまやに急いだ。


座って…一人きりで、ゆっくり考えたかった。


どうしたら…オーガスタスがあの美貌の青年と一緒に戦って、二人仲良く天国に旅立ってしまうのを、阻止できるのかを。


だって、酷い!

そんな事聞かされるぐらいだったら、ギュンターと彼が恋人だと聞かされる方が、何倍もマシだわ!


だって思えるもの!

貴方が、女性をどうしても愛せないから、無理だって!


違う…別の世界の人種だって!


貴方を取り合う相手が、天国だなんて!

よっぽどの事が無きゃ、太刀打ち出来ないじゃない!!!


固い…石のベンチだったけれど…腰掛けると、ほっとした。

心の中でもう一人の自分が呟き続けるのを、マディアンは聞いていた。


“左将軍補佐だなんて、雲の上の理解出来ない人よ。

ちゃんと足が地に付いてる、真っ当な家庭のシェダーズ様を選ぶべきよ!”


ああ、私岐路(きろ)に立たされてる…。

マディアンはぼんやり、そう感じた。


そうして…オーガスタスの事をどうやって忘れよう。

それを、考え続けた。


でも浮かぶのは…彼の手が触れたら、どんな温もりだろう…?

彼の大きな腕で抱きしめられたら。


そんな事ばかりが浮かんで、絶望的な気分になる。

“一夜の付き合いで忘れられるかも”


でも…きっとまた次。

そして次…。

そうしてる内にもう、彼の表情や仕草の一つ一つが、愛しくなるわ。


屈託の無い笑顔に浮かぶ、悲しげな表情。

彼の命を失いたく無い。

そう願う私を、悲しそうに見るあの人。


それを考えただけで、彼がどれだけ好きで失いたく無いか。

を思い知ってしまう。


けどふいに、腕を掴まれ、マディアンは振り向く。


“ヨーン!”



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