ヨーンの襲撃 3
前庭に辿り着くと、ギュンターはもう、大勢の女性達に取り囲まれていた。
シェダーズが椅子を勧め、それに習って腰掛けようとして…浮かす。
「ごめんなさい。
一人になって考えたいの」
マディアンはそのまま、横の蔓の巻き付く石壁に囲まれた小道へ、歩き出していた。
シェダーズが素早く背後で囁く。
「貴方が失恋されたというのは…左将軍補佐殿ですか…?!」
マディアンは返事を返さず振り向きもせず…小道のその先。
屋根のある小さな屋外のあずまやに急いだ。
座って…一人きりで、ゆっくり考えたかった。
どうしたら…オーガスタスがあの美貌の青年と一緒に戦って、二人仲良く天国に旅立ってしまうのを、阻止できるのかを。
だって、酷い!
そんな事聞かされるぐらいだったら、ギュンターと彼が恋人だと聞かされる方が、何倍もマシだわ!
だって思えるもの!
貴方が、女性をどうしても愛せないから、無理だって!
違う…別の世界の人種だって!
貴方を取り合う相手が、天国だなんて!
よっぽどの事が無きゃ、太刀打ち出来ないじゃない!!!
固い…石のベンチだったけれど…腰掛けると、ほっとした。
心の中でもう一人の自分が呟き続けるのを、マディアンは聞いていた。
“左将軍補佐だなんて、雲の上の理解出来ない人よ。
ちゃんと足が地に付いてる、真っ当な家庭のシェダーズ様を選ぶべきよ!”
ああ、私岐路に立たされてる…。
マディアンはぼんやり、そう感じた。
そうして…オーガスタスの事をどうやって忘れよう。
それを、考え続けた。
でも浮かぶのは…彼の手が触れたら、どんな温もりだろう…?
彼の大きな腕で抱きしめられたら。
そんな事ばかりが浮かんで、絶望的な気分になる。
“一夜の付き合いで忘れられるかも”
でも…きっとまた次。
そして次…。
そうしてる内にもう、彼の表情や仕草の一つ一つが、愛しくなるわ。
屈託の無い笑顔に浮かぶ、悲しげな表情。
彼の命を失いたく無い。
そう願う私を、悲しそうに見るあの人。
それを考えただけで、彼がどれだけ好きで失いたく無いか。
を思い知ってしまう。
けどふいに、腕を掴まれ、マディアンは振り向く。
“ヨーン!”




