動じないディングレー
マディアンが囁く。
「良ければそちらのお部屋でお話させて頂ける?
実は私も…こんな豪華な室内だと、落ち着かなくて」
ディングレーもギュンターも、そしてラロッタもが、ローフィスが心からの温かい微笑みを、マディアンに向けるのを見た。
ローフィスが椅子を立つと、マディアンもが同時に立ち上がる。
が、ディングレーは頬杖ついたまま、ぼそり…。
と告げる。
「オーガスタスの左将軍補佐官邸も、かなり豪華だぞ?」
ローフィスの背に続こうとしたマディアンが、目を見開く。
ラロッタはまだ座っていて、黒髪王族のその男に、尋ねる。
「こんなに、金綺羅してるの?」
ローフィスはディングレーに振り向くと、怒鳴る。
「ここよりもっと重厚で、落ち着いてる!」
言って、マディアンへと振り向く。
「豪華じゃ無い。
とは言わない」
マディアンはその気遣いに、笑顔で頷いた。
ギュンターが直ぐ、マディアンの背後に続き、ラロッタも椅子を立つ。
ラロッタがギュンターの後ろに続こうとすると、ディングレーが横に来るので彼を見上げ、呟いた。
「…一緒に、来るのね?」
ディングレーは威厳滲ませながら、ぼそり。と言った。
「何かマズいのか?」
ギュンターは振り向くと、ラロッタに説明する。
「ディングレーはローフィスの、手の焼ける弟分で、ディングレーは兄のようなローフィスが大好きなんだ」
ラロッタはそれを聞いて、思わず横の、ディングレーを見る。
ローフィスよりもうんと頑健な肩をし、逞しくて立派に見えた。
「隙あらば、ローフィス様に迫ろうとかしてる?」
マディアンが見てると、前歩くローフィスはそのラロッタの言葉に、がくっ!と首落としてた。
ディングレーは表情を変えない。
「あいつとの間に、色っぽい事は何も無いぞ?
ギュンターの言ったこと、聞いてなかったのか?」
ラロッタは肩竦め、威厳の固まりの、近寄り難い存在感の、王族の男が並んで横を歩く姿を、チラチラと伺った。




