近衛宿舎正面門での一幕
間もなくギュンターが騎乗して、くたびれた様子で(尻の軽い火傷のせいで)門へと姿を見せる。
門番に、門の外の端に止めて連なる、四台の馬車を指差され、順に窓へと馬から身を乗り出して屈み込み、窓から顔を出す女性と喋ってる。
三番目の馬車でギュンターは、中の女性に
「折角来たのに!
追い返すなんてどういう了見?!」
と怒鳴られ、一番最後尾のマディアンとラロッタは、その様子を窓から顔を出して伺う。
ギュンターは、馬上で溜息を付きながら
「だって約束してないだろう?!」
とそれなりに鋭い声音で言い返していた。
金髪が馬が歩を進める度揺れ、その美貌は際だって見えたものの、彼は不機嫌だった。
マディアンとラロッタの馬車の前で馬を止め、三台の馬車からそれぞれ顔出してる貴婦人をその、紫色のキラリと光る瞳で見つめると、憮然。と告げる。
「暇になったら必ず酒場に顔を出すと約束する。
だから今日は帰れ」
労りさえ垣間見せる声色でそう告げられて、婦人達は本当にがっかりした顔で、窓から顔を引っ込め…やがて馬車は先頭から前へと動き出し、向きを変えて馬上に居るギュンターの横を、通り過ぎて行く。
二番目の貴婦人は
「きっとよ…!」
と投げキッスを送り、ギュンターは気の毒げに、頷いて見送った。
マディアンらの馬車の前が、綺麗すっかり消えて無くなるのをギュンターは待ち、そして窓から顔を出して待つ、マディアンとラロッタの馬車の横に馬を進める。
手綱を取って囁く。
「…ローフィスが帰ってる。
俺が案内する。
俺より、多分オーガスタスの動向に詳しい」
マディアンは歓喜の表情を見せ、ラロッタはギュンターのその誠実さに、感激した。
「ただの、垂らしじゃないのね?!」
ギュンターはそれを聞き、馬の首を門へと向けかけ、がくっ!と首を落とした。




