幕間:サイハテがおしゃれに目覚めました
最近サイハテの変態成分が足りないと言うお声を風の噂で耳にしたので、サイハテの短編です。
時系列は無視して下さい。
西条疾風、放浪者。
美少女とおっぱいを飛ばす美少女と犬を連れた訳分からない編成で遺跡に潜っている、これがワラシベシティの評価だ。奇行が多く、狂人だと言う住民も入れば、幸運の放浪者らしく様々な知識を体得していると言うものも居る。
ともかく、人口百二十万を誇るワラシベシティでも、こう言った珍妙な人物は噂になるのだ。
その噂の中心であるサイハテはワラシベシティのど真ん中で困っていた。
彼はいつもの如く全裸なのである、繰り返す、いつもの如く全裸なのである。なのではあるが……今日の彼はちょっとばかり困っていた。
「身ぐるみ剥がされちゃった……」
経緯は単純だ、ワラシベシティのカジノに遊びに行ったらディーラーがイカサマをしていたのでそれを見破ったら怖い黒服さんが沢山出てきて、それをやっつけてたらいつの間にか全裸になってしまったと言う落ちである。
股間のイチモツをぶらぶらさせ、帰って下さいとカジノのオーナーが土下座して渡してきたお金の詰まった袋もぶらぶらさせて、合わせて二つの袋がぶらぶらしている訳である。
「……そうだ、服を買っておしゃれしよう!」
あぶく銭も稼いだ事だしと、サイハテは二つの袋をぶらぶらさせて、ワラシベシティの服屋に向かった。服を買いに行く服がない、ならば全裸で行けばいいじゃないとサイハテはスキップしながら袋をすごくぶらぶらさせるのだ。
「すいませーん! 服くださーい!!」
「帰ってください!」
「ういーっす」
全くなんて店だと、サイハテはぷりぷり怒る、服がないから服屋に買いに来たのに追い返されるなんて前代未聞だ、たとえここが女性服の専門店であったとしても。
仕方ないので隣の紳士服問屋に行ってみる。
「いらっしゃいませ、お客さまにお似合いの服も用意しておりますよ」
紳士服屋は紳士的に対応してくれた、品のいい初老の紳士がタキシードを着て柔和な笑みを浮かべて客であるサイハテを歓迎してくれる。たとえ、その品のいい初老の紳士が三角木馬に乗って、頬を赤く染めていても、彼は紳士である。
「俺に似合う服を千円で用意してもらおうか……」
そう言って、サイハテは袋の中から二枚の五百円玉を取り出す。
「では、試着室へどうぞ」
初老の紳士は横柄なサイハテの態度にも怒らずに、三角木馬に乗ったまま試着室へと案内してくれる。そして予算千円からサイハテに似合いそうな服を見繕ってくれる。三角木馬に乗ってる割にはまともな対応である。
サイハテは紳士が次々と差し入れる服を着ては脱ぎ、着ては脱いで、自分に合ったコーディネートを選んでいく……そしてパーフェクトサイハテとも呼ぶべき完璧なコーディネートが見つかった。
「全部……もらおうか」
黒く輝く革のボンテージに同じく黒色のレザーパンツ、顔には美しきパピヨンのマスクを被り、右手には鞭を、左手には男性器を模した震えるアレを装備し、サイハテは輝いていた。
「お客さま……美しゅうございますよ。九百七十円になります」
そして地味に高い!
サイハテはお金を支払うと意気揚々と帰路についた。
「ただいまー、いやー、いい買い物しちゃったよー」
飯塚奈央宅にて、サイハテはご機嫌な様子でそう語る。
奈央の絶対零度の視線を浴びながらも、ご満悦だ。
「あ、ヨーコ」
「なぁに?」
「キングとお呼び!」
ヨーコを鞭で一閃、プレイ用のバラ鞭だから痛くないはずだ。
「あっ」
微妙な痛みと大きな音に、ヨーコは小さな声を上げる。
サイハテは両手を広げて待ち構えていた、前までのヨーコならここで鋭いツッコミをしてくれるはずだったのだ、だがヨーコは上着を脱ぐと真っ白な背中をサイハテに差し出す。
「……優しく、してね。私、サイハテが望むなら、なんでもしてあげる」
「あの、マジごめんなさい。いや、ほんとすんませんっした。お願いですから、服を着て下さい」
最近のサイハテはヨーコに対する戦績は黒星ばかりだ、どこかで新井が悪いなんて声も聞こえるが無視しておこう、ここは千葉で大阪ではない。
結局、その気分になってしまったヨーコが元に戻るまで、奈央の絶対零度の視線を受けながらサイハテは土下座し続けた。サイハテに再び勝利の機会はあるのだろうか。




