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十七話

 ワンダラータウンが誇るレストラン『摩天楼』、終末世界でも綺麗に残ったビルを補強し、レストランに仕立て上げた昔風味のレストランだ。

 幸運の放浪者であったシェフは帝国ホテルでシェフをやっていた本格派の料理人であり、わざわざ彼の料理を食べにくる人も大勢居た。死ぬような危険を冒しても食べる価値のある味、彼の料理はそう呼ばれている。

 そんなレストランを貸切にできたのは斎藤が放浪者時代に稼いだ財産のお陰と言ってもいい、東の大きな街の近場で戦車を六台も見つけたのだ、五台を売り払って、一台は自分用としてのこしてある。


「美味しいですよね、陽子さん」


「はい、美味しいです」


 ヨーコはそう言ってぎこちなく笑う。

 彼女は内心、目の前に居るのがサイハテだったらこれ以上なく美味しかったであろう料理を残念に思う。おフランス料理と呼ばれる明治から愛された味ではあるが、目の前の男のせいで台無しだ。

 ヨーコは思わず溜め息を吐いてしまった。

 その溜め息で斎藤は更にサイハテに対する怒りを燃やす、中々に面白い男だった。


「これくらいで満足してはいけませんよ、ウェイトレスさん。特別料理を」


「かしこまりました」


 斎藤はこれ以上ない位にきざったらしく指を鳴らそうとして、鳴らなかったので普通にウェイトレスさんを呼んで、予約してあった料理を頼む。

 ウェイトレスさんを見て、ヨーコが驚いているのには気がつかず、斎藤は自分のかっこよさにトリップしている。

 そして運ばれてきた料理は滑車付きの大鍋で斎藤はその大鍋の横に立つと声高に説明を始めた。


「これは目の前で、ここのシェフが料理をしてくれるんですよ! 大鍋を見るのは僕も始めてですが……おいしい料理をお願いしますよ、シェフ」


 そう言って、斎藤は俯いたまま、顔の見えないシェフの肩を叩いた。


「おまかせくださぁい♥」


 声を出したのはサイハテだった。

 顔を上げたシェフもサイハテだった。


「まずは食材をそのまま鍋に入れます、フンッ!!」


 サイハテは唖然としている斎藤を引っつかむと水を張った大鍋の中にぶち込んだ。

 そのまま蓋をすると、ヨーコが驚いたウェイトレス、ハルカと共に大鍋を針金でグルグル巻きに仕立てあげて見せる。


「あ、あんた……生きていたの?」


「おっと、お客さま。感想は後でお聞きします。そのままミサイルに搭載します。ハルカ君」


「はいな」


 にっこり笑ったサイハテが呼ぶと、ハルカは巨大なミサイルを引きずってくる。一応巡航ミサイルの一種ではあるが、ヨーコに判別はつかない。

 サイハテとハルカはミサイルを器用に分解し、弾頭部分の爆薬やら信管を取り外すと、代わりに斎藤が入った大鍋を搭載して見せる。


「そして発射します、ヨーコ、こっちに」


 いつの間にか作られていた避難壕らしきものに引っ張られて、サイハテと一緒に隠れさせられた。


「ふ、ふざけるなよ! 僕をミサイルで発射するだと!! そんな事、正義が許しはしない!!」


 ミサイルの中で斎藤が喚いているが、ヨーコとサイハテには聞こえない。


「では、改めまして、発射します。ファイアーーーーーーーーーーー!!!」


「ふぁいあーーーーーー♪」


 サイハテとハルカが凄く楽しそうに発射スイッチをおした、レストランに流れていた落ち着くクラシックは止まり、代わりに流れてくるのはゴッ○ファーザー愛のテーマ、そしてミサイルは火を噴いて遥か彼方へと飛んでいくのだ。

 轟音がすっかり去った後、サイハテ達は避難壕の蓋を開けて這い出てくる。


「………………なんでゴッ○ファーザーなのよ!!」


 ヨーコが絞り出したツッコミはよりにもよってこれだった。


「後しっかり説明して貰うわよ! 何があったのかを! 後、助けてくれてありがとう」


「あ、お礼はおまけっすか」


「当たり前でしょ、もっとヒロイックに助けられると思ってたの、私は」


 妙に乙女チックな考えをしていたヨーコに苦笑いしつつも、サイハテはその場に座ると自分があのあとどうやってここに来たかを、説明する為に口を開いた。

正直、サイハテの登場は男体盛りか、これかで悩んだ

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