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ニート卒  作者: you@saire
1/1

社会のごみクズ

私はPSPの画面と睨めっこをしていた。

ゲームの世界が現実の世界の様に思える。

そんな日々を続け早くも半年の月日がたっていた。


私、伊藤幸喜は有名私立女子大学、X大学の

教育学部を卒業した。

しかし人生そううまくいかない。

いや、そういう仕組みなんだ。

私がその現実を目の当たりにしたのは


教員採用試験に落ちた。


この時だった。

ショックは大きかった。多分そこが人生の大きな分かれ道だったのだろう。

採用試験に落ちたのは仕方が無いとしても

その他にも選択の余地があったのでは

無いか?少し思う。


しかし仕方が無い。

この四畳半の散らかった部屋で窮屈で退屈な生活を選んだのは紛れもなく「私」だ。


まぁこの生活も慣れれば苦では無い。

かなり甘え過ぎているのかもしれないが

一応飯が食えずに餓死する事も無い。

家族はほとほと呆れているが、見捨てる事も無い。

これは自己満足かもしれないが。


「ただいま〜」

兄の晴樹が帰って来たようだ。

兄は29歳。

有名国立大学、S大学の医学部を卒業。

今は医師として働いている。


まるで私とは雲泥の差だ。


自分と兄を比べると自分が痛々しい。


「幸喜。いつまでそんな暮らししてるんだ

父さんや母さん本当はすごく心配してるんだぞ」


お前とは違うんだ。

黙っててくれ。


体が兄に対して拒否反応を起こした。


「今からでも遅くない」



正直言って兄のことがウザイ。


正直言って兄のことがキライ。


正直言って兄のことが………


「おい!幸喜、いい加減にしろ!」


ホントにウザイ…


「お前なんかにわかるはず無い!」


部屋の入り口で立っている兄を押しのけて


私は家を出た。

無我夢中で走った。


悔しかった。



ずいぶんな距離を走った。


ふと道路の向こう側を見ると

中学校があった。

T市立東中学校だ。

T市の中では一番大きい学校であったと思う。


校門のほうに目をやると

見覚えのある人が立っていた。

私に向かって手をふっているようだ。


私も小さく手を振り返す。


道路を渡ると手をふった人は

近づいて来て

私に声を掛けた。

「幸喜、久しぶり〜」


思い出した。

大学では少し話したことがある。

すごい名前をしていた気がする。

「忘れちゃった?華櫻 真理亜だよ」

思い出した。

「はなざくら まりあ」何度聞いてもすごい名前だ。

「なんか学校に用事でもあったの?」

痛いところを突かれたような気がする。

さすがに採用試験に落ちて半年間ニートで

何もせず兄とそれが原因でけんかしてたった今家を飛び出して来たところだから特に用事が無いとも言えず、私は瞬発的に


「ううん、特に用事は無いけど真理亜、先生になって元気でやってるかなぁと思って」


と答えた。


真理亜を見ると少し疑問がありそうな顔をして私を見ていた。


「あれ私、幸喜に採用試験の合否言ってないような気がする」


「幸喜のとこの学校はどう?」


しまった採用試験に落ちたとき

あまりにも不合格したのがいやで

見栄を張って合格したと伝えたのだった。


「すっすっごくいいよ…せっ先輩の先生もかっ感じいいし…」


とだけ答えておいた。


「そっかぁ部活の顧問とかやってる?私女子バレー部でさぁ土日部活あるからけっこう大変なんだよねぇ〜」


以外なところを突かれた。


しかし教員をやっていると言った以上逃げられない。

「えっ…?じょっ情報技術部の顧問やってる

すぐにわかってしまいそうなウソだ。


「ごめん!用事あるから行くね」

ニートに用事などあるわけ無い。

しかしこれ以上この場にいるのは耐え難い

苦痛だった。


私ははや歩きでその場から去った。


家族や友達、みんなから軽蔑されているようだった。


家にはまだ帰りたく無かった。



結局、私は金も無く行く場所もない

だけど家に帰るのは気まずい


目についたのは、公園のベンチだった。

とりあえず腰掛けた。


蒸し暑く息苦しい八月の夜。

息苦しいのは心に余裕が無いからだろうか。


「私はなにがしたいんだろう」

最近よく思う。

こんな曖昧な生活をしていて、何が変わるのだろう。

何が出来るのだろう。

何度考えても、何もない。


きゅうに悲しくなった。



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