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ある日、清司が泣きながら栄一に話しかけてきた。
「ひどいんだよう……。今日、僕、いじめられたんだ」
うっうっと涙で詰まらせながら、清司はいった。
「いじめた?」
「そう。男子が僕のこと太ってるとか頭悪いとかいうんだ」
みんなよくわかってるじゃないか、と心の中で思いながら、栄一は答えた。
「ふうん。ひどいな」
さらりといった。清司がいじめられてようが、栄一には関係ない。
栄一の態度に清司は傷ついたようだ。
「栄一くん……、助けてくれないの……?」
きた、と栄一は思った。
この清司が一番嫌いだった。
中学生は思春期というものがあり、みんな子どもから大人に変わっていく。
心の中が繊細になって、ちょっとしたことで傷ついたりする。
中学の時が一番いじめが多くなるのはそのせいだ。
みんな不安定なのだ。よくわからないから不安になって、間違えたことををいってしまう。
まあ、清司がバカでデブなことは、間違えていないのだが。
「ひどいよね。確かに僕は太ってるけど、迷惑かけてないよ。それにおまえなんか外科医になれるかって笑われるんだ」
栄一は何も答えず、ずっと遠くを見ていた。
「僕は父さんの子どもなんだから、絶対外科医になれるのに」
思わず栄一は笑いそうになった。あんなに毎日遊んでて外科医になれるなら、この世の中の人間は全員外科医になれる。
いったいどこからそういう自信が出てくるのだろうか。
「栄一くんはどう思う?僕は外科医になれると思う?」
清司が訊いてきた。
栄一は聞こえなかったふりをして、清司から離れた。
清司は翌日も、その翌日も、さらにその翌日も、いじめのことで栄一に話しかけた。
「今日もまた太ってるバカっていわれたんだ」
そしてみっともなく泣く。栄一はうんざりしていた。
だったら、猛勉強してダイエットすればいいじゃないか……。
清司の泣き顔を見ながら、栄一は思った。
人に迷惑をかけて、しかもそれに気づかない。
だめな人間だな、と改めて思った。




