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栄一はほとんど清司の親に頼らず、何でも一人でこなしてきた。
自分のことは自分でやる。
誰かに甘えたりしてはいけない。
そして栄一はただ北原家にいただけではない。
栄一はいつも考えていたことがあった。
何か一つ清司に勝てるものが欲しいと思っていた。
清司は立派な屋敷、親、金、将来の夢、何もかも持っている。
しかし栄一は何も持っていない。
清司に負けている。
だから何か一つだけ、清司に勝てるものが欲しい。
清司に勝ちたいのだ。
そこで栄一は毎日勉強をした。
友だちがいないから遊びに誘われたりしないので、充分勉強時間があった。
清司が友だちとちゃらちゃら遊んでいる時、栄一は死ぬ気で勉強した。
古本屋へ行き、なけなしの小遣いで参考書を買って熟読した。
もちろん独学だ。
清司には家庭教師がいるけれど、栄一にはそんな人はいない。
栄一が清司に勝てるもの。
それは勉強だ。
気が付かなかったが、運動も栄一の方が勝っていた。
これで自分は生きていける。
清司に勝っている。
自分は負け組じゃない。
絶対に清司に負けたくない。
天涯孤独だから負け組なんて思われたくない。
しかしそれをみんなに見せるのはやめようと思った。
目立つのが嫌だった。
「わかるけど、わからないフリ」をして、テストで悪い点を獲り落ち込んでいる清司を遠くから眺めた。




