表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/92

栄一と清司は全く違う小学校生活を送った。

清司の人気は濃くなっていくにつれて、栄一の存在は薄くなった。

清司の周りには必ず誰かがいた。

そして清司の面白くも何ともないつまらない話を聞いて、喜んだ。

栄一はそれを遠くから見ながら、一人で思っていた。

馬鹿馬鹿しい。

そんなことをして何があるのだろうか。

有名な医者の友人になりたくて、みんな躍起になって『友だちのフリ』をしている。

バレバレなのに気が付かない清司も馬鹿だ。

「本当、馬鹿ばっかりだ」

まだ施設にいた子どもたちの方がしっかりしていた。


栄一は施設にいた時のことを思い出した。

栄一がいた『あさがお園』には、三十人くらいの親を亡くした子どもたちがいた。

「お父さんに会いたい」

「どうしてお母さん、死んじゃったの」

暗い気持ちが何か巨大な黒い塊のようになって、施設に浮かんでいた。

みんな「寂しい」といっていた。

「親がいなくなって寂しい」と。

栄一は「寂しい」と思ったことはなかった。

「寂しい」と思うのは、誰かに愛されていたからだ。

相手に愛されるから、相手を愛する。

その愛されていた人との糸が切れたから「寂しい」と思うのだ。

しかし栄一は誰かに愛されたことがない。

施設の人やボランティアのお姉さん、お兄さんには可愛がられた。

けれど24時間365日、栄一を想ってくれる人はいない。

みんな施設から出たら栄一のことを忘れてしまう。


詳しくは教えてもらっていないが、栄一は親に捨てられたのだと思っている。

そうじゃなきゃ6年間もずっとここにはいないだろう。

親戚が栄一のもとにやって来ることも一度もなかった。

理由はわからない。けれど……親に捨てられたんだと思っている。

生まれた子どもを捨てるなんて、自分の親は何を考えているのだろう。

子どもは可愛いものじゃないか。

愛の結晶ではないのか。


周りで泣いている子どもたちは、親を事故や病気で亡くした子どもばかりだ。

親に捨てられて施設に入っているのは自分だけだ。

栄一は、泣いたら負けだ、と自分にいい聞かせてきた。


絶対に泣かない。寂しいなんていわない。


そう思いながら、生きてきた。

そう思わなきゃ、生きていけないのだ。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ