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栄一と清司は全く違う小学校生活を送った。
清司の人気は濃くなっていくにつれて、栄一の存在は薄くなった。
清司の周りには必ず誰かがいた。
そして清司の面白くも何ともないつまらない話を聞いて、喜んだ。
栄一はそれを遠くから見ながら、一人で思っていた。
馬鹿馬鹿しい。
そんなことをして何があるのだろうか。
有名な医者の友人になりたくて、みんな躍起になって『友だちのフリ』をしている。
バレバレなのに気が付かない清司も馬鹿だ。
「本当、馬鹿ばっかりだ」
まだ施設にいた子どもたちの方がしっかりしていた。
栄一は施設にいた時のことを思い出した。
栄一がいた『あさがお園』には、三十人くらいの親を亡くした子どもたちがいた。
「お父さんに会いたい」
「どうしてお母さん、死んじゃったの」
暗い気持ちが何か巨大な黒い塊のようになって、施設に浮かんでいた。
みんな「寂しい」といっていた。
「親がいなくなって寂しい」と。
栄一は「寂しい」と思ったことはなかった。
「寂しい」と思うのは、誰かに愛されていたからだ。
相手に愛されるから、相手を愛する。
その愛されていた人との糸が切れたから「寂しい」と思うのだ。
しかし栄一は誰かに愛されたことがない。
施設の人やボランティアのお姉さん、お兄さんには可愛がられた。
けれど24時間365日、栄一を想ってくれる人はいない。
みんな施設から出たら栄一のことを忘れてしまう。
詳しくは教えてもらっていないが、栄一は親に捨てられたのだと思っている。
そうじゃなきゃ6年間もずっとここにはいないだろう。
親戚が栄一のもとにやって来ることも一度もなかった。
理由はわからない。けれど……親に捨てられたんだと思っている。
生まれた子どもを捨てるなんて、自分の親は何を考えているのだろう。
子どもは可愛いものじゃないか。
愛の結晶ではないのか。
周りで泣いている子どもたちは、親を事故や病気で亡くした子どもばかりだ。
親に捨てられて施設に入っているのは自分だけだ。
栄一は、泣いたら負けだ、と自分にいい聞かせてきた。
絶対に泣かない。寂しいなんていわない。
そう思いながら、生きてきた。
そう思わなきゃ、生きていけないのだ。




