表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/92

39

悪魔は酒を飲むのが大好きだった。

食事をする時は必ず酒を飲み、何杯もおかわりした。

酒臭い部屋で、麻由美になった愛子は食事をした。

始めは吐き気がしてほとんど食べられなかったが、その内に慣れてしまった。

嫌な慣れっこだ。

料理をするのが好きだった愛子は、いつも「自分で作りたい」と料理長にお願いした。

しかし雪男は首を横に振った。

「麻由美がわざわざ作る必要はない」

愛子がやりたいことを、雪男は全て聞き流した。


その悪魔が倒れたのは、愛子が10歳になった時だ。

食事が終わり愛子が部屋に戻ろうとした時に、突然椅子から転がり落ちた。

大量の飲酒で、気を失ってしまったのだ。

愛子は驚いて目を見開いた。

人が倒れるところを、愛子は見たことがなかった。

なぜ倒れたのかわからず、体を硬直させた。

すぐに雪男は病院に連れて行かれた。屋敷にいた人々は、顔を真っ青にしていた。

麻由美は屋敷で待っているようにいわれた。

始めは怖くてぶるぶると体を震わせていたが、だんだん心が明るくなっていくことに気がついた。


あの悪魔が……

死ぬかもしれない……


期待で胸が膨らむのを、愛子は自覚していた。こんなことを考えてはいけないということはもちろんわかっていたが、気持ちを抑えることができなかった。

愛子はベッドの上で枕を抱きしめ、ごろごろと転がった。


やった!やっと、ここから出られるんだ!


ここから出たら、真っ先にあの施設に行こう。

四年ぶりの栄一は、どんな姿になっているだろうか。

わくわくして、ふふふっと笑い声が出てきた。




しかし残念なことに、雪男は元気よく屋敷に帰って来た。

ピンピンしていた。鳥居家の者たちは、ほっと安堵の息を吐いた。

愛子は愕然とした。どうして生き返ったんだ、と雪男を恨んだ。

まだこの悪魔が住む屋敷で、麻由美という名前で生きなきゃいけないんだ……愛子はショックで何も言葉が出てこなかった。

「ただいま。心配させて悪かったね」

にやにやと笑いかけてきた。心配なんかしてないといいたかった。もうその不快な顔を見せるなといってしまいたかった。

「お酒を飲むのはかまいませんが、大量に飲むのはやめてください」

医師からそういわれ、雪男は「はいはい」と簡単に返事をしていた。


どうして大好きなお父さんは死んだのに、この男は死なないんだ……………………


愛子はまた暗くて深い地獄に落とされた。憎しみがさらに増加した。

雪男をこの世に連れ戻した医師のことまで憎んだ。

愛子がこんな気持ちでいるのを、空で見ている父と母は、どれだけ嘆いているだろう。

しかし憎んだ。毎日毎日、雪男の死を願っていた。憎まずにはいられなかった。


医師からはタバコのことも注意された。

「タバコは体にとにかく悪いんです」

厳しくいい放った医師を、雪男は馬鹿にしたような顔で見ていた。

「お嬢さんにも悪いんですよ。お嬢さんのためにも、喫煙はやめてください」

しかし雪男は適当に返事をし、こっそりと自室で吸っていた。

親にいわれたことを守れない子どものような雪男が父親だと思うと、愛子は気分が悪くなった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ