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愛子との糸が次第に細くなっていくことが、栄一をあせらせていた。

愛子はいま、家庭科室で何を作っているんだろうか。

しかし愛子は栄一の気持ちに気づいてくれなかった。

栄一の胸の中は、不安定に揺れていた。




そんな日々を繰り返しているうちに、栄一にとって最低最悪な出来事が起きた。

愛子が、ある家に引き取られることになったのだ。

すみれから話を聞いた栄一は、愕然とした。

信じられなかった。思わず、その場にへなへなと座り込んでしまった。

悪い夢なんじゃないか、と栄一は思った。

栄一は夢なんて信じなかった。占いやおまじないなども、全く興味がなかった。

しかしこの時は、夢であってほしい、と心の底から願っていた。

ただの夢で、朝がやってくればもとに戻る。


だがそれは夢でもなんでもなかった。

朝が来てもあせりと不安は消えなかった。

むしろ大きく膨らんでいった。

栄一は、地獄に突き落とされたのだ。


栄一がいくら抗議しても勝てるわけがない。

そんなことをしても無駄だと、始めから知っていた。

暴れようが泣き喚こうが、愛子が引き取られるのはもう確実なのだ。

栄一はベッドの上で、自分が何のために生まれて来たのか考えた。

どうして自分はこんな目に遭わされなきゃいけないのかわからなかった。

食欲もなくなった。出された食事も、ほんの少ししか食べなかった。

すみれの話を聞いてから、栄一は2キロも体重が減った。

起き上がる力など出なかった。寝返りを打つのも億劫だった。

ただどこか遠いところを眺めていることしかできなかった。


ここは養子施設なのだということを、栄一は忘れていた。

愛子と離れ離れになるなんてことは起きるはずがない。

たとえ起きたとしても、それは何年も後のことだ。

栄一と愛子は、出会ってまだ一年も経っていないのだ。

こんなにも早く別れが来るとは、思っても見なかった。



「神様なんかいないんだ」

栄一はベッドの中で、呪文のように繰り返し呟いた。

「神様なんかいない。神様なんかいないんだ」

そういって、ベッドの中でうずくまっていた。


神様なんていないんだ。

いたとしても、誰も幸せになどしてくれない。

こうして親を亡くして天涯孤独になってしまう子どもがいるのもそのせいだ。



栄一は、初詣の時に、何度も何度も願った。


今年も、愛子と一緒にいられますように

愛子と、もっともっと仲良くなれますように


そして……自分の気持ちを、愛子に伝えられますように……







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