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愛子ともっと仲良くなりたいと栄一は思っていた。

いままでは栄一としか話さなかった愛子が、他の男子ともおしゃべりをするようになったのだ

愛子を可愛いという男子が増えてきた。

栄一は不安になった。

愛子は自分だけのもの……ずっと愛子と一緒にいるのは自分だけだと思っていた。

愛子が他の男子と話しているところを見ると、気が重くなった。

何となく、愛子と話しづらくなっていた。

愛子は心配そうに「大丈夫?」と訊いてきた。

その度に、「他の男子とは話しをしないでくれ」といいそうになった。


愛子は料理が得意だった。

よくボランティアのお姉さんと一緒にお菓子を作ったりしていた。

「これ、すみれお姉ちゃんと一緒に作ったんだ」

栄一は甘いものが苦手だが、愛子の作ったお菓子は全部食べた。

すみれが作ったものは食べなかった。


愛子が見つめてきたり声をかけてくると、胸の中が熱くなるのに、栄一は気付いていた。

しかしそれが初恋なのかどうかはわからなかった。

いままで人を愛すことも愛されることもなかった栄一には、そういう気持ちがわからないのだ。


そんなある日のこと、愛子がにっこりと笑いながら栄一に訊いた。

「栄ちゃんは、好きな女の子がいるの?」

栄一は持っていたジュースを落としそうになった。

どくどくという心臓の音が聞こえ、体が震えそうになった。

そしてそれがばれないように、必死に体を固くした。

何も答えない栄一を見て、愛子は申し訳なさそうな顔をした。

「ごめんね。変なこと訊いちゃったね。気にしないでね」

そういって、頭をぺこりと下げた。

気にしないことなどできるわけないだろ、と心の中で愛子にいって、栄一はふう、と息を吐いた。


その日から栄一は、愛子を見る目が変わった。

愛子と目が合うとさっと逸らしてしまう。真っ直ぐに見つめられると、何もできなくなるのだ。

いつもは大人ぶってるくせに実は全然自信がない人間なんだと、自分のことが情けなくなった。




そんな栄一をよそに、季節は驚くほど早く進んで行った。

気が付くと、施設の中はクリスマスツリーやリボンが巻かれたリースなどがキラキラと飾られていた。

栄一はクリスマスなどなくてもいいとずっと思っていた。

サンタクロースが自分のところにはやって来ないからだ。

特に欲しい物もなかったし、なぜそんなに楽しみに待っているのか栄一には理解できなかった。

「栄ちゃんは、何が欲しいの?」

愛子が訊いてきた。

「ないよ」

愛子は驚いた顔をした。

「ないの?何で?」

「何で?って……欲しいものがないから、ないよっていったんだよ」

「クリスマスなのに?」

「クリスマスでも何でも、俺は何か欲しいものなんてないんだよ。何かが欲しいなんて思ったことはないんだ」

すると愛子は悲しげに下を向いた。

「そんなあ……。クリスマスに、プレゼント欲しくないなんて」

栄一は「ごめん」と謝った。もっとクリスマスらしい、楽しい話がしたかったのだろう。

しかし欲しいものがないのだから仕方がない。


「愛子は何が欲しいんだよ?」

逆に訊いてみた。すると愛子はそっと顔を上げた。

「内緒だよ」

「何だよそれ」

栄一が訊くと、愛子は面白そうに笑った。

「きっとびっくりすると思うよ」

















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