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食堂に行くと、待ってましたという感じで雪男が近づいてきた。

「今日は麻由美の好きなものばかりだからね。たくさん食べなさい」

麻由美は無視をして椅子に座り、テーブルの上に置いてあった水を飲んだ。


雪男は面白くも何ともない話を麻由美に話した。麻由美は雪男の話を聞かずに食事をした。

雪男はお酒を飲んでいた。強い方だとみんなに自慢している。

「まゆみい、父さんの話、少しは聞いてくれないかあ」

赤い顔で麻由美に話しかける。

麻由美はいい加減にしてよ、という顔で雪男を見た。

周りにいる者たちは冷や冷やした顔で見ていた。麻由美が雪男のことを嫌っているのは、ほとんどの者が知っている。

その時、雪男が大きな音を立てて椅子から転がり落ちた。

すぐに側にいた人間が駆け寄り「大丈夫ですか!?」と雪男の体を持ち上げた。

「医者を呼べ!」

誰かがそういい、誰かが電話をかけに廊下に出て行った。


奈那子は口に手を当てて、固まっていた。

パニックに陥っていた。

そして、すぐ側にいた麻由美に目を向けてさらに驚いた。

麻由美は全く顔を変えずに、じっと父親の体を見ていた。

少し笑っているようにも見えた。





救急車で病院に運ばれた雪男は、しばらくするとベッドから起き上がった。

「またいい気になってしまった」

酒の臭いがするため息を吐いて、反省したように項垂れた。

「この間もいったでしょう。お酒はほどほどにしてくださいって」

医師の言葉に、また雪男は息を吐いた。


四年ほど前に、酒をこれでもかというほど飲み、雪男は気を失ってしまった。

その時はもう気を失うことはないと思ったが、次も酒を大量に飲んで倒れてしまった。

しかし雪男は酒がないと生きていけないくらいの酒豪だった。

それから何度も同じことをくり返し医師に迷惑をかけているが、雪男の酒好きは止まらない。


雪男は周りの人間たちに謝った。

「すまなかった。しばらく酒は飲まないように気をつけるよ」

「もうやめてください。こっちが気を失います」

全員が、ふうっと安堵の息を吐いた。

「びっくりしました。何か悪いものがお料理に入っていたのかと思って……」

奈那子は今回が初めてだった。本当に気を失いかけた。

雪男は人騒がせな人間だ。

誰かがいなきゃ、生きていけないのだ。


麻由美は無表情で少し離れたところから眺めていた。

心配しているふうには見えなかった。



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