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奈那子はいつものように、お手洗いの鏡で自分の顔を見た。
綺麗に装飾されたぴかぴかの鏡に、自分の平凡な顔が映っている。
そして、またため息をついた。
奈那子は自分の平凡で、ありきたりで、ぱっとしない顔が嫌いだった。
いま奈那子は21歳だが、一度も男性と付き合ったことがない。
好きな人は何人もいた。しかしこの顔では告白なんてできない。
結局片想いで終わった。
もうこんな惨めな思いをしたくない、と大学は受験しなかった。
片想いの人が、自分よりずっと可愛い彼女と笑いながら歩いているところを見たくなかった。
フリーターとして仕事に没頭した。恋愛なんてしない。男性と話すのはもうやめることに決めていた。
そうして毎日せっせと働いていたある日のこと、突然「うちで働きませんか」と若い男性に声をかけられた。
資産家の大豪邸のメイドの仕事だった。
「そんなことできません」と奈那子は断った。こんな顔でメイドなんてできるわけない。
しかしいつの間にか奈那子は豪邸でメイドをすることになっていた。
奈那子の仕事は豪邸に住む一人娘の世話だ。
名前は麻由美。髪が長く、スタイルのよい女の子だった。
性格は優しく話し方も丁寧。しかも14歳なのだ。
奈那子ははっきりいって、ショックを受けた。
七歳も年下の女の子が、自分よりずっと大人のようだったからだ。
ここでも惨めな思いをしなくてはいけないのか。
私も……私も、麻由美様のように、美しくなりたかった。
麻由美様は本当に美しい。羨ましい。私もあんなふうに……お姫様のようになりたかった。
麻由美の顔を見る度に、奈那子は気持ちが沈んだ。
しかしメイドの仕事をやめるわけにはいかなかった。




