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翌日、さっそく清司が結基のもとにやってきた。
にこにこと笑っている。七福神みたいだ。昨日の警戒した顔はどこにいったのか。
結基は後悔していた。
やっぱりやめておけばよかった。
清司は結基のことを「自分の気持ちをわかってくれる人」だと思い込んでいる。
しかし結基にとって清司は、ただ利用しているだけの人間だ。
友だちでも何でもない。というか、一番付き合いたくないタイプだ。
結基は何とか残ったプライドの欠片を集めて、清司の隣に座った。
勉強が始まってほんの十分ほど過ぎて、結基は衝撃を受けた。
ありえない………。
こんなに簡単な、一年生でもわかるような問題が、解けない……?
どこまで頭の悪い奴なんだろうか。
もしかしたら、小学生の問題も解けないかもしれない。
これでよく中学二年生をやっていられるとは。
ある意味すごい人だと清司の顔を見た。
そしてすぐに甘いものを食べる。
「勉強には甘いものが大切だからね」
チョコレートの箱を一度に全部食べてしまう清司を見ながら、結基はまた後悔していた。
「本多くんも食べなよ」
清司は何度も結基にいった。しかし結基はいらないと断った。
これを食べたら、自分も頭が悪くなりそうだと思った。
ほとんど勉強は進まず、結基は唇を噛んだ。一人でやっていれば、もうテスト勉強は終わっている。
そして、いついおうか、どうやっていおうか、心の中で迷っていた。
このままテスト勉強を終わらせられない。
栄一のことを知るために、清司に近寄った。
このままでは意味がない。
結基が悶々と考えていると、突然清司が話した。
「栄一くんも、お菓子食べなよっていってもいらないっていうんだ」
「えっ!?」
『栄一』という名前が出てきて、結基は思わず大きな声を出してしまった。
そして動揺を隠すようにして、清司にいった。
「へえ、確かにそんな感じだね。っていうか、あんまりご飯食べてないみたいだね」
栄一はクラスの中で一番痩せている。
「家が貧乏なのかな」
結基が独り言のようにいうと、清司は「違うよ」といった。
「栄一くんは家が貧乏なんじゃない。家族がいないんだ」
結基は心臓が止まりそうなほど驚いた。
「家族がいない?」
「そう。だから僕の家に住んでる」
思わず結基は体が震えそうになった。
「……それって、養子だってこと……?」
「うん」と清司は何ともないような顔で答えた。
「六歳の時に来たから、もう八年経つかな」
清司の言葉に、結基は叫びそうになった。
これだ、と結基は思った。
栄一の弱点は、自分が養子だってことじゃないか……?
「ごめん。ちょっと用事があった。もう勉強終わりにしよう」
そういって結基は清司の返事も聞かずに立ち去った。




