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栄一のことを一番よく知っているのは清司だということに、結基は下を向いた。

あんな奴に協力してもらわなくてはいけないのか。

結基は清司のことを、『違う世界の人間』だと思っていた。

自分とは違う、レベルの低い人間たちが住んでいる世界の住人だと。

結基のプライドが許さなかった。


しかしこれ以上栄一にいい思いをさせたくない。

結基は清司を学校の裏庭に呼んだ。

清司は警戒したような目で結基に「なに?」といった。

毎日毎日いじめを受けているせいで、こんな目になってしまったようだ。

またひどいことをいわれるのだろう、と始めから諦めているようにも見えた。

結基は用意しておいたセリフを、不自然に見られないよう注意しながらいった。

「あのさ、2週間後にテストがあるだろ」

清司は「うん」と小さく答えた。

結基は続けた。

「で、テスト勉強を、お前としたいと思って」

結基の胸の中で、もう一人の結基が「何馬鹿なことをいってるんだ!」と叫んでいた。

それを無理矢理抑え込んで、結基は清司にいった。

もちろん清司は驚いた。

「え……?僕と……?」

そしてまた警戒するような目になった。

結基は作り笑いをしながらいった。

「一人で勉強するより、二人の方がいいんじゃないかなって思ったんだ」

清司は少し黙った。もしかしたらこれもいじめの一つなのでは、と考えているようだ。

そして、さらに警戒した顔でいった。

「どうして僕なの?僕、頭悪いってみんなからいわれてるよ?」

結基は、絶対訊いてくるだろうな、と予想していた質問だったのですぐに答えられた。

「寂しいんじゃないかと思ってさ。俺いじめとか好きじゃないんだ」

好きじゃないというか、そんなことしてる暇があったら勉強していた方がいいと思っている。

「本当に!?」

清司の警戒の目が、また衝撃の目に変わった。

「僕なんかと勉強したいなんて」

「いいだろう?」

結基のプライドが崩れていく。

「うん!いいよ!」

清司がいった。

清司の嬉しそうな言葉を聞いて、結基の体の中は冷えていった。


これでいい、と結基は思った。

これで栄一の弱点を掴めるはずだ。

栄一のことを知ったら、清司とはもうお別れだ。

結基の目的は栄一の弱点を探ることだ。清司と仲良くする気なんて全くないのだ。






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