エピローグ
「しゅーちゃん、お手紙きたよー」
夏休みもあと一週間になったある日。
ハルが白い封筒をもって、窓から部屋にやってきた。
「誰から?」
「おじいちゃんとおばあちゃん!」
結局あれから、すぐに父さんたちが迎えに来てくれた。
ハルは怒られて、ぼくは殴られた。
「ハルちゃんを危ない目にあわせたから」だそうだ。
おじさんはこってり油を絞られて、ずいぶんおとなしくなったみたいだ。
おじさんに協力した何人かの重役も、同じ目にあったらしい。
仁科さんとおじいちゃんは結局仲直りして、最近はおじいちゃんが向こうに行くようになった。
おじいちゃんは少しずつ元気がなくなってきているらしいけれど、今のところまだ倒れてはいない。おばあちゃんと仲直りできたからかもしれない。
「まったく、あの年であんなに熱々じゃ、こっちがたまんないわよ」
なんて、東さんが電話でぼやいていた。
ハルとは、あのあともあまり変わらなかった。
いつもどおり、毎朝襲撃に来て、ぎゃあぎゃあさわいで遊びに行って。
……ただ、遊びに行く時に手をつなぐようになって、
それからたまに、ほかにはだれもいないとき。
……あのおまじないを、するようになった。
「……で、手紙はなんて書いてあったの?」
ぼくの質問に、ハルは手紙をひらひら振って、
「『夏休みの旅行の続き、しませんか?』だってさ」
机の上に、手紙を広げる。
手紙の中には、おじいちゃんとの生活のことや、駿君や東さんたちのことが、ていねいにわかりやすく、あたたかく書かれていた。
そうして、その長い手紙の最後には。
「遙ちゃんも周哉くんも、まだ夏休みは残ってますよね?
あの時のお詫びをしようと思います。
ちゃんとお父さん達の許可も貰ってありますし、駿も会いたがっています。
切符を同封しますので、もし都合が良ければまた遊びに来てくださいね」
との言葉と、長くてかたい二枚の切符。
「新幹線の切符だ!ちゃんと往復、二人ぶん入ってる!」
ハルと顔を見合わせて。
にんまり笑う。
それから切符をひっつかんで、二人で一緒に走り出した。
父さん達の気が変わらないうちに、さっさと準備して行かなきゃいけない。
ハルの手を握って、階段を駆け下りる。
「あの時いけなかったところ、みんな回ろうね!」
「今度は邪魔も入らないだろうし、全部回れるよね」ハルの言葉に、うなずいて。
「じゃ、いこうよ!
……今度も二人で!」
おしまい




