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だいぼうけん  作者: ロボ
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第十八話 おはよう

 休みの日はいつだって、ベッドのなかでごろごろしてる。

 半分寝たまま、とろとろすごす。

 とくに今は夏休みだ。学校のない日がずーっと続く。

 ということは、こんな幸せな日が毎日続くということだ。

 けれど先生も、こんなぐうたらな毎日を生徒に送らせないように、ちゃんと陰謀を巡らせている。

 そしてその陰謀の手先の声が、

……聞こえてこない。


「……?」

まぶたを開ける。

いつもより、ずっと高くにある天井。

寝返りを打つ。

いつもみたいなベッドじゃなくて、大きなふとんの中。

畳に障子。

いつもと、ちがう部屋。


 ……あ、そっか。

きのうはあのまま倒れちゃって、それから…


 (ハルは?)

ハルはどこに?

あわててまわりを見る。

ぼくのふとんのとなりに、なかよくならべられた大きなふとん。

ハルはそこにいた。

きもちよさそうに、すうすう寝息をたてている。


 安心したら、急にいたずらしてやりたくなってきた。

……これは、チャンスかもしれない。ひごろのすいみんぼうがいのうらみを、いまこそはらしてやろう。

音をたてずに、そーっとハルの枕元に。

「……ううん」

なんにもしらずにねむっているハル。

……昨日されたみたいに鼻をつまんでやろうと、顔をのぞきこむ。

しあわせそうな顔。


 ……だめだ。ぼくには、できないや。

ハル、かわいすぎる。

「おはよ、ねぼすけさん」

僕が呼んでもハルはぼーっとしたままで、ゆらゆらあたまをうごかしている。

しょうがない。

ハルの小さな耳をつまんで、

「起きろーーーーっっ!!」

思いっきり叫ぶ。

とびおきたハルは、右を向いて、左向いて、もういちどくりかえしてからぼくに気づいた。

「……しゅーちゃん?」

「おはよ。ハル」

「なにするの!」

「ひとんちでぐうぐう寝てるほうがわるいんだよ」

ここで様子がおかしいことに気づいたらしい。


「……ここ、どこ?」きょろきょろとあたりを見回しながら、ハル。

「仁科さんのおうちだよ。きのうハルが寝ちゃったあと、なんとかここまで運んできたんだ」

「ごめん…」

しゅんとなったハルを、からかってみる。

「大変だったんだぞ。ここまでずるずる引きずってきてさ」

「ええっ!」

自分の体をあちこち見回して、傷がないかどうか確かめるハル。

「うそうそ。ぼくも玄関前で倒れちゃったから、たぶん仁科さんが全部やってくれたんだよ」

「……倒れた?」ぼくの言葉に、ハルの目が光った。

……まずい。

「あ、えーと……」

「……無茶しちゃだめだよ、しゅーちゃん。私が寝ちゃったからだろうけど。しゅーちゃんが倒れちゃったら……」

そのまま、ハルもぼくもだまりこんだ。


「目が覚めたかしら?」

ふすまのむこうから、いきなり人の声がした。

あわてて正座をして、返事をする。

「あ、はい。おはようございます!」


 ふすまを開けて、やさしそうなおばあさんが姿をみせた。

どこかで見たような顔。昨日聞いた声。

たぶん、このひとが仁科さんだろう。

「だいじょうぶだった?心配したのよ、いきなり玄関前で倒れてるから」

「すいません、ごめいわくおかけして」

ハルと一緒に頭を下げる。

「いいのよ、そんなこと気にしなくても」

そういって、仁科さんは笑った。

「ごはんも用意したから。あんまりたいしたものはないけれど」

「すいません、ほんとうに」

もう一度頭を下げる。

「着替えはここに置いておくから。ごはんを食べおわったら、おうちの人に連絡しなさいね」

それだけいって、仁科さんは部屋を出ていこうとした。


「……手紙は?」

ぼくのことばに、仁科さんは顔をくもらせた。

「あなた達には悪いけれど、手紙は受け取れないの。どうしてもね。せっかくここまで来てくれたのに、ごめんなさいね」

優しく、でもきっぱりと仁科さんは言った。

「……どうしてですか?」

「いろいろとね」

少し硬い声。

「おじいちゃんと、むかし何かあったからですか?」

仁科さんが何か言いかける前に、

「あの写真で、となりに写っていたひと。仁科さん、ですよね?」

「……あの写真って?」

「高月電機の昔の工場の前で、おじいちゃんと仲間のひとたちが写ってる写真です。あの写真の、たった一人の女の人。おじいちゃんのとなりにいたの、仁科さんですよね?」

もう一度、聞いてみる。


 しばらく、誰も何もしゃべらなかった。

「……おじいさんから、話を聞いたの?」

「いいえ。おじいちゃんは、手紙をとどけてほしいとしかいいませんでした」

ぼくの返事に、仁科さんはためいきをつく。

「そう……」

「ごめんなさい。たぶん、仁科さんには思い出したくないことなのかもしれません。

けれど、ぼくたち、どうしてこんなことになったのか、知りたいんです。

全部、話します。これまでにあったこと。

どうして、こんなことを考えついたかも。

ひょっとして、おじいちゃんの子供の話なんかききたくないかもしれないですけど、話だけでもきいてもらえませんか?」

ぼくのことばに、仁科さんは小さく、でもはっきりとうなずいてくれた。






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