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だいぼうけん  作者: ロボ
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第十一話 救援

 そのとき、入り口のドアが開いた。

男達がいっせいにそちらを見る。

入ってきたのは、30歳くらいの落ち着いた感じの男の人だった。

彼を見て、男達の顔が一瞬ゆるむ。

「やあ、こりゃ……」

笑って言いかけた男の一人に、彼はいきなり猛烈なパンチを浴びせる。

「!」

あわてて男達が彼を取り押さえようとしたけれど、彼の方が早かった。

二分もしないうちに、あいつらは全員床に転がっていた。


 あっと言う間にあいつらを片づけると、男はぼくたちの方に近づいてきた。

身構えるぼくたちの前で、男はにっこり笑って、

「お待たせしました、周哉様に遙様。平沢と申します。高月の家の方から助けに参りました」

といって、頭を下げた。


 あわててこっちも頭を下げる。

「助けに来てくれたの?」

嬉しそうな顔をするハル。

「ええ。遅くなって申し訳ありませんでした」

そう言って、すまなさそうに頭を下げる平沢さん。

「とんでもない!……ハルを助けてくれて、ありがとうございます」


 ……正直に言うと、ちょっとだけおもしろくなかった。

自分たちだけで逃げ出すことができなかったから。

でも、平沢さんが来てくれなかったら、どうなってたかわからない。

たぶんまた捕まって、もっとひどい目にあってただろう。

……ハルが無事だったんだから、いいじゃないか。

そう思うことにした。


「じゃあ、早く逃げましょう」

ぼくの声に、平沢さんがあたりを見回す。

「そう言えば、荷物はどうされました?」

思わずハルと顔を見合わせる。

「すっかり忘れてたね」

「あいつらにとられちゃって……」

「じゃあ、ついでに取り返してきましょうか」


 すぐに荷物は見つかった。背負って帰ろうとするぼくたちに、平沢さんが言う。

「大事なものはだいじょうぶですか?」

「だいじなもの?」

「ええ。いちばん大事な、なくしたらこまるものです」

なくしたらこまるもの、というと……

ひとつしか、思いつかなかった。


 右脇にいたハルの肩やほっぺたを、ぺたぺたと触ってみる。

「……なにしてるの、しゅーちゃん?」

きょとんとしているハルを見ながら、平沢さんに言う。

「だいじょうぶです。なくなってません」


 平沢さんが、不思議そうな顔をしている。

……なんかおかしかったのかな?

もう一度、となりのハルを見直す。

……ちょっと、顔赤いかな?

「具合悪いの、ハル?」

「え、ううん、べつに……」

そう言うハルのおでこに、おでこをくっつけてみる。

「熱はないみたいだけど」

顔を離すと、さっきより赤くなったハルの顔。

「ハル、ほんとどうしたの?さっきより、もっとひどいよ!」

「いいから!」

そう言って、ハルは横を向いてしまった。


「……いや、そういうことじゃなくてですね」

平沢さんが苦笑いする。

「何か、大事な荷物を取られてはいませんか?」

平沢さんの言葉に、あわててカバンの中を探してみる。

「携帯は?」「あるよ」「証明書は?」「だいじょうぶ」「お金は?」「うん、ちゃんとある」

「この服、お気に入りだったんだよ。よかった、とられてなくて」

「うん。カメラも服も、みんなある」

ぼくたちの答えに、平沢さんは納得しなかった。

「ほかに、なにかあるでしょう」

「もうほかに、大事なものってあったかな?」

ぼくの言葉に、ハルも首を傾げる。

「なんにもないと思うけど」


けれど、平沢さんは首を振る。

「そんなことはないでしょう。何か、おじいさまにもらいませんでしたか?」

「おじいちゃんに?」

「……おてがみ、かなあ?」自信なさそうに、ハルが言う。

「そっか。それがあったね」

「手紙?」

「ええ。おじいちゃんに頼まれて、とどけてほしいって」

「……どんなものか、見せてもらえますか?」

平沢さんのことばに、ハルがバッグの奥から手紙を出した。

「これです」

ハルの手に握られた小さな封筒に、平沢さんが手を伸ばす。

「大事なものでしょうから、預かりますよ」

その手から、ハルが手紙を隠す。

「だめだよ。おじーちゃんのラブレターなんだから。ほかのひとに渡しちゃ、だめなんだよ」

「……しかし……」

あきらめきれないみたいで、平沢さんは手紙にまだ手をのばす。


……なんだか、おかしい。


「すいません、平沢さん。ちょっと……」

「なんでしょう?」

「ちょっと、うちに電話してもいいですか?」

その言葉に、平沢さんは少し顔をしかめた。

「あとにしてください。今はそれより逃げた方が……」

そういって、またハルのほうに手を伸ばす。


 ……うん。絶対に、おかしい。

そうだよ。なんでこんなことに、気づかなかったんだろ?


 もうぼくは、迷わなかった。

平沢さんの視線の先にある手紙を、ぼくはハルの手からもぎ取って、ハルのバッグの中に入れ直す。

「ぼくらが持っていきますから、大丈夫です」

そういって、ハルの手を引き、外へと向かう。

「すいませんが、帰らせてもらいます」


 と、平沢さんがぼくらの行く手にさりげなく回り込んだ。

「そういうわけにはいきませんよ。一緒につれて帰らないと、こちらが怒られますし」

「しゅーちゃん、いったいどうしたの?」

不思議そうな顔のハルに、ぼくは聞く。

「……どうして、こんなとこに助けのひとがいるの?」


「……どういうこと?」

頭から?マークをとばしているハルに、質問する。

「……ハル。ぼくらは何に乗ってきた?」

「なにって、夜行列車……」

「だよね。ひとばんかけて、ゆっくりがたがたゆられてきたんだ」

「それがどうしたの?」

「ハル。ぼくたちが誘拐されてから、何時間経った?」

ぼくの言葉に、ハルが時計を見る。

「今四時だから、二時間ぐらいだと思う。それがどうしたの?」

「……父さんもおじさんもおじいちゃんも、今あの町にいるんだよ?たった二時間か三時間でここをつきとめて、助けに来ることなんかできるわけないじゃない。いまごろ、連絡があったとしたらこっちに向かってる最中だと思うよ」


「べつにおとーさん達が来たわけじゃないでしょ?」

「でもさ。ぼくたちを助け出す、なんてことは、よっぽど信用のできる人にしか頼まないんじゃないかな?じゃなきゃ警察か。警察に頼んだのなら警察が来るはずだし、それ以外の、例えば探偵さんとかに頼むのなら、とりあえず状況とかを探す人に直接説明しなきゃいけないから、一度会わなきゃいけないと思うんだ。そんな時間はないと思うよ」

「緊急事態だから、地元の人から東京での信用できる人を紹介してもらって、とりあえず動いてもらったんじゃ……」

「それでも、ここに放り込まれてからほんのちょっとしかたってない。頼むにしても、それからたったの二時間で、ぼくたちがどこで誘拐されたか調べて、どこに捕まっているか突き止めて、しかも助け出す。そんなこと、できるものなの?」


 ぼくの疑問に、平沢さんは答えない。

「それに、こういうときは真っ先におとーさん達に連絡すると思うんだ。別に、電話一本ですむことだし。けれど、それをしなかった。なんだか嫌そうな顔して、おじいちゃんの手紙のことばっかり」

 「大事な手紙を預けてあるから、なくなっていないかどうか確かめてくれと、頼まれましたので……」

「嘘だ!」

自分でもびっくりするような、強い声が出た。

「嘘じゃないですよ。ちゃんと頼まれました……」

「誰に?」


「誰に……って?」首を傾げるハル。

「さっき、いったよね。誰か、裏切り者がいるって。おじいちゃん達に頼まれたのなら、ちゃんと連絡を入れるはずだよ。それに、そんな手紙よりぼくたちの無事を知らせて、安全なところまで逃がすほうが大事だと考えるはず。間違っても、連絡より手紙を気にかけるようなことはしない。

 ……この手紙がほしいひとがいるんだね。ぼくたちの安全よりも」


 そしてぼくはハルを背中の後ろに隠して、いちばん大事なことを聞いた。

「…おじさん、誰?」

答えが来ないことは、わかっていたけれど。







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