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エイプリルフールには早すぎる日

掲載日:2026/04/18

渋で「嘘」というお題でサラッと書いたので。で、が多い?気にしたら禿げるよ?

 「今目の前に座っていることがもう驚きです」


 わし、余命宣告されたわ。普通なら立つ座るではなくて病床で苦しんでいるはずらしい。モルヒネ撃たれた状態でそれらしい。


 けどわしピンピンしてるんだが、はて?





 がん、というのは日本人なら誰しも半分くらいは何らかの形で発症すると昔聞いたことがある、そのがん細胞がたまたまわしの胃に攻撃しまくっていると。すてーじふぉー?末期も末期らしいな。昨日もしっかり食ったけど、特になんもなかったよな?それこそ医療ミス?とかいうやつなんじゃないか?現にわし痛くもかゆくもないし。でも医者が救急車呼んで県立の総合病院に無理矢理連れてこられてな?病院着に着替えさせられてな?こうやって集中治療室で四点柵されてな?便所にも行けないんだよ、便所くらい行かせてくれねえかなあと思うんだが……


 一夜明けて目が覚めたら家族呼び出されてるしみんな泣いてるし、訳が分からん。


 なんでも昨日わし峠を迎えていたらしくてな?いつも通り夢で先に旅立った婆さんがまだこっちに来るんじゃないよおって川の向こうで手振ってたからそのうち行くから待っとけって返したんだけどな?目が覚めたら一大事になってるし。みーんな泣いてて孫はぽかーんとしてるし。そりゃそうだよな、この末孫まだ3歳だぞ?もしわしが昨日旅立ったとしても、孫には訳が分からないだろうに。ちっさい子に死を見せつけても無意味だろうに、お母さんと一緒に家で待ってればいいだろう。痛みも何もないんだからせめて家に帰らせろと思うんだけどな?






 「父は、もう大丈夫なんでしょうか……?」


 「正直言いますと、何故けろっとした顔が出来ているのか不思議でしかありません。数値的に激痛を超えているはずです。出産に近い痛みを覚えるくらいなのですが、ご覧の通りでして……」


 「父さん、痛いの嫌いなはずだしちょっとした痛みですぐイライラするタイプなんです……」


 「理解に苦しみますね……逆に言えば、痛みを感じずに済むのは幸いな事でしょう……峠は越えましたが、山はこの先いくつもあります、先は見えません。手は尽くしますが、それでも持って今日、それとも明日でしょうか……」


 「……そうですか……」


 「ええ……」


 むこうでそんな深刻な話してるなんてわしは知らないし知る必要もない。麻婆豆腐食いたいなあとか考えてたぞ?






1週間後、わしは退院した。まあ、無言の帰宅だったんだけどな。嘘みたいな話だった、痛いの嫌いなわしが、特に胃の痛みが大嫌いなわしが。痛みを訴えることなく静かに眠ったよ。モルヒネしこたま打たれた結果だったのかもしれん、まあそれでもいい。痛いよりはずっといい。残していく息子娘孫たちには悪いが、このじじい最期の盛大な嘘みたいな回復力を見せつけたって事でな?1週間頑張ったらしいんだからいいじゃねえか、わし頑張ったつもり一切なかったんだけどな。さて、そろそろ婆さんのところに行くとするか、ん?どうした末の孫、見えないはずのわしとバッチリ目が合ってるな?どうしたどうした、じじいになんか用か?ピースしてくれたのか、そっかそっか、ならわしもピースして返してやろうか。しっかり生きろよ、わしはこの通りピンピンしてるからな。生きてりゃ奇跡でもなんでも起こせるんだぞ、しっかり生き抜けよ。じゃあな?

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