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エピローグ 働き手の街
一ヶ月後。 ニブス・スタッフィングは倒産し、氷堂と黒田、そして竜神会の幹部たちは逮捕された。 詐取された助成金は五十億円に上り、令和最大級の労働犯罪として報道された。
大井埠頭。 あのタコ部屋だった倉庫は取り壊され、更地になっていた。 真壁は、海を見つめていた。 アリーナたち外国人労働者は、入管とNGOの保護下に置かれ、帰国するか、正規の在留資格を申請する手続きが進められている。
ポケットの携帯が鳴った。 篠原からだ。
『先輩、またタレコミです! 今度は駅前の居酒屋チェーンで、店長が過労死寸前だって……』
「……分かった。すぐ行く」
真壁は電話を切り、海風を吸い込んだ。 一つの悪を潰しても、また次の悪が生まれる。 労働搾取の種は尽きない。
だが、誰かが戦わなければならない。 働く人間が、人間として扱われる当たり前の世界を守るために。
真壁は腕章を巻き直した。 『労働基準監察官』。 その金色の文字が、夕日に輝いた。
彼は愛車に乗り込み、アクセルを踏んだ。 次の現場が、彼を待っている。
(完)
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件等とは一切関係ありません。




