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人材派遣ノワール小説『幽霊社員の給与明細』  作者: 如月妙美


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第四章 崩壊のシナリオ

小章① 合同捜査

 一週間後。  湾岸労監署、首都圏労働管理局、そして警視庁組織犯罪対策部による合同捜査会議が開かれた。  異例の体制だ。  真壁は、かつての同僚である組対四課の刑事たちと顔を合わせた。

「よう、真壁。まさか労監の人間と組んでガサ入れするとはな」

 強面の刑事が笑った。

「労働基準法違反だけじゃない。詐欺、有印私文書偽造、そして組織犯罪処罰法違反だ。……氷堂だけじゃない。黒田も、竜神会の幹部も、全員挙げるぞ」

 作戦は決まった。  Xデーは明日の朝、九時。  ニブス本社、黒田事務所、そして竜神会本部への一斉家宅捜索だ。

 だが、真壁には一つ懸念があった。  氷堂は勘が鋭い。警察の動きを察知して、データを消去するかもしれない。  特に、クラウド上のサーバーにある「裏帳簿」のデータは、遠隔操作で一瞬にして消せる。

「俺が先に行く」

 真壁は言った。

「正面から乗り込んで、氷堂の注意を引く。その隙に、サイバー班がサーバーを制圧してくれ」

「危険だぞ。相手はヤクザと繋がっている」

「構わん。……あのアリーナという女性の、無念を晴らしたいんだ」


小章② 最後の賭け

 翌朝、八時五十分。  真壁は一人でニブス・スタッフィングの本社受付にいた。  アポはない。

「社長に会わせろ。重要事項だ」

 受付嬢が止めるのも聞かず、真壁は社長室へと直進した。  ドアを開けると、氷堂は窓際で電話をしていた。  真壁を見るなり、電話を切り、不快そうに眉を寄せた。

「またあんたか。不法侵入で警察を呼ぶぞ」

「呼べよ。どうせあと十分で来る」

 真壁はソファにどっかりと座った。

「氷堂。お前のゲームは終わりだ。黒田が口を割ったぞ」

 ハッタリだ。黒田はまだ捕まっていない。  だが、氷堂の顔色が変わった。

「……何の話だ?」

「死人の名前を使った助成金詐欺。そして、竜神会への上納金。全部バレてるんだよ」

 真壁は腕時計を見た。  あと五分。

 氷堂は冷静さを失い、デスクのパソコンに向かった。  データを消そうとしているのだ。  真壁は立ち上がり、デスクに近づいた。

「触るな」

 氷堂が引き出しから拳銃を取り出し、真壁に向けた。  本物のチャカだ。

「……やっぱり、クロだな」

 真壁は両手を挙げたが、その目は笑っていた。

「撃てよ。公務員を撃てば、お前の罪はさらに重くなる」

「黙れ! 俺は選ばれた人間だ! こんなドブネズミに捕まってたまるか!」

 氷堂の指が引き金にかかる。  その時。  ドーン!  オフィスのドアが破られ、機動隊が突入してきた。  閃光手榴弾が炸裂し、視界が白く染まる。

「確保ーッ!」

 刑事たちが氷堂に飛びかかり、拳銃を叩き落とした。  床に押さえつけられた氷堂が、獣のような悲鳴を上げる。

 真壁は、パソコンの画面を確認した。  消去コマンドは、実行される寸前で止まっていた。  裏帳簿は、無事だ。

「……確保完了」

 真壁は無線で告げた。


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