人生における幸せとは
ここは「ジグ」によって悩める子供達が集う場所。軽い怪我や悩みの相談、そして悩める彼らの「憩いの場所」にされかけている。
私は静かが好き故にあまりよろしく思わない。しかし若者から得られる情報は、私の研究に大いに役立つ事になる。
「『カイン』先生!!お時間よろしいでしょうか!?」
うるさく扉を開けるこの生徒は「ヒカネ」。ここの所毎日の様に来ている「悩める若者」だ。
「…長くなりそうか?」
「それはもう!」
この子はジグ持ちにも関わらず関係の無い特殊能力を持っている。
ジグとは自分のもう一つの人格であり、自分を守るか慰めるか、はたまた戦いに役立てるか様々な使い勝手がある。ヒカネのジグは…かなり恐ろしい戦闘狂だ。
「ボク何度も巡り回って考えついたんです!『恋愛』とは即ち切っても切り離せない必要な『人生』だと!!!」
「言ってる意味が分からないな 愛など人類繁栄の『催眠』だ 人類が続く為に無自覚に植え付けられた動物的本能だろう」
「カイン先生そんな考え方じゃモテませんよ!恋愛は等しく『尊い』ものなのです!!」
こいつとは考え方が根本的に違う。私は人類の繁栄方法を研究していた。しかし結局は交わう欲望の延長に過ぎないと決めつけていた。
しかし彼女はどうだろうか、考え方が腐っている。いわゆる「腐女子」というものなのだろうが、私には思いつかない意見を並べて実に飽きない。
「異性愛も同性愛も!家族愛も人類愛だって等しく尊いのです!それを先生には知ってもらいたい!!」
「理解出来る気はしないが…君の話は正直面白い」
「それって褒めてます!?」
「どうだろうな」
沸いたポッドでコーヒーを、ヒカネ用に紅茶を淹れて机に座り直す。
「でもカイン先生だけなんですよ!ボクの話をちゃんと聞いてくれるの!」
「それはそうだろう 業務時間中は生徒の話を聞けばその分ボーナスに繋がる」
「聞きたくなかった裏事情!!」
悩みを解決できれば私の雇い主から報酬がもらえるのだ。やっていて損は無い。
「それで…カイン先生は恋愛をしないんですか?」
「もうそんな青春ができる歳じゃない それに私は公に出来ない『大罪』を犯した贖罪中だ」
「何をやったか…ボクにも教えてくれませんか」
「当たり前だ」
まだ不幸を知らない子供に、私の過去を話すわけにはいかない。それほどの罪なのだ。
「邪魔するぞ!」「お邪魔します」
赤と緑の生徒がノックもせずに保健室に入る。こいつらも常連であり、「暴走」したジグを鎮める正義のヒーローを名乗っている連中の一部だ。
「タツキちゃん!?」
ヒカネは慌てて顔を隠し、そそくさと逃げようとする。
「先生私のことは秘密でお願いします…!!」
必死なのか本来の一人称で頼まれた。ヒカネとタツキは仲が良いはずだが、ヒカネの妄想癖はタツキに隠していたいらしい。多分もうバレてるけどな。
「取り込み中だった?武勇伝語りに来たんだけど」
「そんなに誇らしいものでも無いでしょう…」
偉そうな小さく長い緑の髪が「龍忌」。敬語で捻くれている赤髪の男が「文也」だ。
ヒカネも慌ただしく去り、今度は二人のジグを鎮めた武勇伝を聞かされる。これもまた、私の研究にきっと繋がっていくのだろう。
「ジグ」とは自分の愚かと書いて「自愚」と読む。その真髄に、果たして気づけるのだろうか。




