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第八話 魔王軍、勇者を定義できない



 魔王城・黒曜の間。

 円形の会議卓を囲み、

 魔王軍の幹部たちが沈黙していた。

「……で?」

 玉座に座る魔王が、指を鳴らす。

「勇者ユウの最新評価は?」

 沈黙。

 誰も口を開かない。

 ついに、黒衣の外交官レイヴンが一歩前に出た。

「……分類不能です」

「またか」

 魔王は、ため息をついた。

「戦闘能力は?」

「単体殲滅力、世界最高峰。

 ただし、使わない」

「政治的影響は?」

「一言で空気が変わる。

 ただし、意図していない」

「思想は?」

「……不明」

 幹部の一人が苛立ったように言う。

「では結論は簡単だ。

 危険だ。排除すべきだ」

「不可能です」

 レイヴンが即答した。

「物理的にも、

 概念的にも」

 場がざわつく。

「概念的、とは?」

 魔王が問う。

「彼は“勝つための存在”ではありません」

 レイヴンは言葉を選びながら続ける。

「彼は——

 対立そのものを成立させない」

 沈黙。

「彼がいる限り、

 戦争は“割に合わなくなる”」

「……それは」

 魔王が、ゆっくり笑った。

「我々にとって、

 最も厄介な敵だな」

 別の幹部が言う。

「では、利用は?」

「それも、危険です」

 レイヴンは首を振る。

「彼は従わない。

 だが、反抗もしない」

「……意味が分からん」

「“選ばされる”状況を、

 本能的に嫌う」

 魔王の目が、細められる。

「……勇者は、

 自分の意志でしか動かないか」

 一方、その頃。

 王都。

 俺は、またも会議室にいた。

「……で?」

 目の前には、

 王様、宰相、ギルドマスター、

 そしてセシリア。

「お願いがある」

 王様が言った。

「“世界安定機構”の

 象徴になってほしい」

「いや急に重い!!」

 セシリアが補足する。

「あなたの存在そのものが、

 抑止力になります」

「置物扱い!?」

 リィナが、俺を見る。

「……断れる?」

「……断りたい」

 頭の中で、声が囁く。

 《最適解を提示できます》

「黙って」

 俺は、はっきり言った。

「今回は——

 自分で選ぶ」

 沈黙。

 全員が、俺を見る。

「俺は、

 世界の象徴にも、

 切り札にもなりたくない」

「だが!」

 宰相が声を荒げる。

「あなたが拒めば、

 再び戦争が——」

「それでも」

 俺は、言い切った。

「誰かに利用される平和なら、

 守る価値はない」

 セシリアが、静かに目を伏せた。

 リィナは、少しだけ笑った。

「……やっぱり、

 そう言うと思った」

 その夜。

 魔王城と王都、

 ほぼ同時に、同じ報告が届いた。

「勇者ユウ、

 “象徴”の役割を拒否」

 魔王は、深く息を吐いた。

「……面白い」

 王様は、頭を抱えた。

「……やはり、

 制御不能……」

 そして。

 頭の中に、最後の通知。

 《選択を確認》

 《外部依存率:0%》

 《次段階:自己定義フェーズへ移行》

「……フェーズ分けやめて」

 俺は、天井を見つめた。

 どうやら次は。

 “何者になるか”を、

 自分で決めろという話らしい。

 静かに暮らすには、

 まだ試練が多すぎる。

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