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第六話 勇者、争いを止める仕事を任される


「——というわけで、依頼だ」

 王様は、真剣な顔で言った。

「勇者ユウ。

 お主には“戦闘禁止”の任務を命じる」

「……はい?」

 隣でリィナが腕を組む。

「説明して」

「王国西部。

 人間の開拓村と、魔族の旧領が衝突寸前だ」

 地図が広げられる。

「双方、感情的になっている。

 ここで軍を出せば、戦争になる」

「それを……俺が止める?」

「うむ」

 王様ははっきり言った。

「お主なら、壊さずに終わらせられる」

 期待が重い。

 現地へ向かう馬車。

「なあリィナ」

「なに」

「戦わない依頼って、

 勇者の仕事なのか?」

 彼女は少し考えて答えた。

「少なくとも……

 あなたにしかできない仕事」

 うれしくない。

 開拓村。

 人間側は槍と弓で武装し、

 魔族側も魔力を帯びた武器を構えている。

「一触即発だな……」

 その時。

「止まりなさい!!」

 凛とした声が響いた。

 現れたのは、

 青い制服に身を包んだ女性。

 金髪をきっちりまとめ、

 書類の束を抱えている。

「王国調停官、セシリアです」

「……調停官?」

「はい。

 法と条約を基に、

 衝突を未然に防ぐのが私の役目です」

 超・真面目そう。

 彼女は俺を見る。

「あなたが……勇者ユウ?」

「そうだけど」

「確認します」

 即、来た。

「あなたは“最適化”という能力で、

 相手の意思や行動に影響を与えると聞いています」

 ……噂、広まるの早くない?

「それは、

 自由意志の侵害に該当する可能性があります」

 ぐさっ。

 リィナが小声で言う。

「正論パンチ」

 セシリアは一歩近づく。

「ここでは、

 あなたの能力は使わないでください」

「……え」

「話し合いだけで解決します」

 人間側が怒鳴る。

「無理だ!

 あいつらが先に土地を奪った!」

 魔族側も叫ぶ。

「元々ここは我々の領地だ!」

 空気が、再び荒れる。

 頭の中で声が囁く。

 《対立を解消できます》

 《最適化を推奨します》

 ……楽な道。

 でも。

「……使わない」

 俺は、はっきり言った。

「今回は、

 自分の言葉でやる」

 セシリアが、少しだけ目を見開いた。

 数時間後。

 疲労困憊。

 だが。

 境界線は引き直され、

 共同利用区域が設定され、

 双方が署名した。

「……終わった」

 セシリアが深く息を吐く。

「……正直、驚きました」

「なにが?」

「あなたは、

 もっと“力で黙らせる人”だと思っていた」

「それ、よく言われる」

 彼女は小さく笑った。

「でも……」

 真剣な目。

「あなたは、

 使わない選択ができる人なんですね」

 その言葉が、胸に残った。

 帰り道。

 リィナが言う。

「今日のあなた、

 ちょっと勇者っぽかった」

「ちょっとかよ」

 頭の中で、また通知。

 《条件達成》

 《称号:自制する者 を獲得しました》

「称号いらない!!」

 だが、今回は。

 なぜか、

 少しだけ悪くない気がした。

 セシリアが最後に言った言葉を、

 俺は思い出す。

「力を持つ人ほど、

 “使わない勇気”が必要です」

 ……静かに暮らす道。

 もしかしたら、

 まだ完全には消えてないのかもしれない。


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