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最終話 それでも、立ち会い続ける



 世界は、何事もなかったかのように回り続けていた。

 王国と魔王軍は、相変わらず睨み合い、

 均衡教団は名を変え、小さな対話の場として残った。

 戦争は、起きていない。

 でも、完全に消えたわけでもない。

 ——それでいい、と。

 俺は思っていた。

 王都の片隅。

 小さな集会所で、俺は椅子に座っていた。

「……じゃあ、次はどうする?」

 問いかけると、数人が顔を見合わせる。

 農民。

 元兵士。

 迷っている若者。

 誰も、答えを持っていない。

 それでいい。

「今日は、ここまでにしよう」

 そう言うと、皆が立ち上がる。

 拍手も、感謝もない。

 ただ、静かな解散。

 それが、日常になっていた。

 外に出ると、夕暮れ。

「……すっかり、板についたな」

 リィナが、壁にもたれて言った。

「板についてない方が、

 よかったんだけどな」

「今さら」

 彼女は、笑った。

 セシリアも合流する。

「最新の記録、まとめました」

「もういいって」

「いいえ」

 彼女は、真面目な顔で言う。

「あなたの存在は、

 歴史に残さないといけない」

「……英雄として?」

「いいえ」

 はっきりと。

「判断を拒んだ人間として」

 俺は、少しだけ考えてから言った。

「……それ、

 褒めてないだろ」

「最高の評価です」

 即答だった。

 夜。

 一人で歩く帰り道。

 ふと、立ち止まる。

 かつて、魔将軍を指一本で倒した場所。

 世界を揺らす力を持っていた頃。

 あの力は、今もある。

 でも。

 《最適化》は、

 もう俺に話しかけてこない。

 必要なくなったからだ。

「……最強だった理由、か」

 小さく呟く。

 剣が強かったからでも、

 能力がバグっていたからでもない。

 使わなかったからだ。

 壊せたけど、壊さなかった。

 決められたけど、決めなかった。

 支配できたけど、しなかった。

 それだけの話だ。

 星空を見上げる。

 静かだ。

「……なあ」

 誰にでもなく言う。

「もし、また世界が壊れそうになったら」

 俺は、立ち会う。

 答えを出すためじゃない。

 正義になるためでもない。

 ただ。

「選ぶ瞬間に、

 目を逸らさないために」

 それが、

 俺が選んだ役割だ。

 翌朝。

 いつものように、椅子を並べる。

 誰かが来る。

 誰も来ないかもしれない。

 それでも。

 俺は、そこに座る。

 静かに。

 立会人として。


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