モブたちの恋愛事情
モブたちの恋。
「なんか飾ってないか?」
「うん。そうだね」
「何だろうな、あれって」
「さて。何だろうね」
イルミネーション、そう心の中で呟く。
今、僕の隣で歩いているこの人。
これまでは、関係なかったけど。
「あっ。見て! この街にもあるんだ!」
「う、うん。らしいね」
「先生にアレ見せたらはしゃぐかな!?」
「はしゃぐと思うよ」
「でしょ!?」
あれは、そう。イルミネーション。
まあ、私には関係ないけど。
…けど。
など、少女は心の中で呟く。
―数日後。
太陽が出ている、昼の休日。
「ま、待った?」
「いや、全く待ってないよ。
早くない? 待ち合わせの時間まで、まだ30分あるけど」
「待たせたら悪いって、思って。
へへ、人生初です、待たせたの」
照れ笑い。
そして、
「じゃあ、イルミネーション、見に行こうか」
「だね」
『2人のラブコメを完成させるために』
高校生でもあり、作家でもある少年。
今年の春、引っ越してきて、通う高校に大好きな作家がたまたまいて、それを追っかけている少女。
その2人のラブコメ、それを結ばせるために。
イルミネーションの下見を、少年の友人と、少女の友人、いわゆるモブたちはする。
「綺麗だね。
夜だったら灯りがついて、本当に綺麗なんだろうね」
笑顔で、少年は撮る。
「うん。そうだね」
その隣で、うなずく。
微笑み、無邪気にスマホで撮る彼を見守るように。
「人生初だよ、イルミネーション」
「私も。今まで縁がなかったから」
「だったらさ、2人で写真撮ってもらおうよ」
「しゃ、写真? なんで?」
「いや、どんな感じかなって。
2人のためにもさ。ベストポジションとか、気になるから」
「そ、そうだね。2人のために」
パシャリ。
「ありがとうございます」
撮ってくれた通行人に、少年はお礼をする。
「ここだよ。ベストポジション」
「かな?」
微笑んで2人で笑い合う。
そして、ふと気付く。
『いや、これデートじゃん』
2人とも、意識をし、顔を赤くする。
僕は、友人の恋を結ばせたいから。
だから、これは、しないといけないことなんだ。イルミネーションでデートをしてほしいから。
私は、あの子の恋愛を成功させたいから。
デートで失敗させたくないから。
自分に言い聞かせる。
「き、喫茶店行こうか」
彼は提案する。
「そ、そうだね」
イルミネーションから逃げるために、受け入れる。
だが、
「カップルのおふたりさんですね」
という何気ない店員の確認で、もっと照れてしまう2人であった。
『あの2人、早く結ばれないかな?』
モブたちは思った。
主人公とヒロインの恋よりも先に結んだからいけないから、そんな気持ちで。
―その後。
「待ったー?」
「待った待った。かなり待った」
「もー。
こんばんわ、先生」
「こんばんわ。先生はやめてよ、同じ高校生なんだからさ」
「じゃ、早く行こ? 友人がオススメしてくれたんだよ、最高のポジション」
「アイツも言ってたな。
ま、いいや。帰ろ」
「ちょっと先生ー!?」
モブたちの恋愛事情を、2人は知らない。
ありがとうございました!




