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第三話

 ~♪♪

 部屋中に響き渡る爽やかなメロディーで目を覚ます. 時計には06:00と表示されている.

「~~っ. もう朝かぁ.」

 顔を洗い,うがいをする. 着替えようとしたところで替えの服がないことと,一昨日にこの世界に来てから風呂に入っていないことを思い出す. 幸いにおいなどは問題なさそうだが,風呂に二日も入らないと恋しくなってくる.

 そんなことを考えていると,扉がノックされる.

「おはようございます,同志カエデ. 同志ナタリアがお呼びです.」


 昨日の晩と同じ男についていくと, ナタリアの部屋についた.

「おはよう. お前のタヴァーリシと居住用コンテナの準備ができた. それを食べ終わったら受けとりに行こう.」

 そういって机に並べられた簡素な食事を指差す.

「わかりました. いただきます.」

 見た目は簡素だがカロリーの感じられる味で,満腹になった.


 朝食を食べた後,ナタリアと共に別の部屋に向かった. 部屋にはベッドが置かれていて,そこには私と似た顔の美少女が横たわっていた. 彼女の髪は輝くような銀髪で,赤のメッシュがその輝きを引き立てている. 視線を体の方に向けると,彼女の豊かさを管理局の黒く,軍服のような制服の上からでも確認することができる.

「お前の設定した見た目と相違ないか?」

「想像以上に完璧です!」

「そうか. ではお前が彼女を起動しろ. 手を握って魔力を流し込むんだ.」

 ナタリアの指示に従って彼女の手を握る. 魔力を流し込むイメージを描くと,体から力が湧き出し眠れる美少女に流れ込んでいった. 彼女の顔を,手を握りながらのぞき込むと,その目が開き,吸い込まれそうな深い緑の目と目が合った.

《起動しています. 手を離してお待ちください. 》

 彼女が口を動かさずに合成音声を発する. 音声に従って一歩下がる.

《全モジュール異常なし,起動します. 基本姿勢に移行します.》

 再び彼女が音声を発すると,ベッドから立ち上がった. そして,私に向かってこう言った.

「初めまして,私はアリサ. あなたのタヴァーリシです. 共に貢献活動に勤しみましょう,同志カエデ.」

「…初めまして,アリサ. これからよろしく.」

 とびっきりの美少女を前に頬が緩むのを感じる. 彼女の社交用の笑顔に,私は鼓動の高鳴りを抑えることができなかった. 不意に襲ってきた衝動に身を任せ彼女の胸に飛び込む. 新品の機械特有の芳香が鼻腔をくすぐり,全身が温もりと柔らかさに包まれる. そのまま彼女の肩あたりに頬ずりしていると後ろから咳払いが聞こえてきた. アリサに抱き着いたまま振り返ると生暖かい目をしたナタリアがこちらを見ている.

「気に入ってくれたようで何よりだ. では次の場所に移動しよう.」

「っっ!わかりましたっ!」

急いでナタリアの方に体を向け姿勢を正す. 頬が熱くなるのを感じる. 完全に彼女のことを忘れていた.

 

 ナタリアについてくと,今いる建物とは別の,倉庫のような建物に入る. 少し進むと体育館のような大きな空間に出る. そこは何かの油のようなにおいが漂っていて,よくわからない機械がところどころに並んでいる. その空間の一角に翼の無い飛行機のようなものが停まっている.

 近づくと,それは思ったより大きいことに気づく. ちょうど大型トラックぐらいの大きさがあるようだ. 前方の扉の前で立ち止まったナタリアがこちらに振り向く.

「これがお前の居住用コンテナだ. 今日からはこの中で生活してもらう. 外出は可能だがお前のタヴァーリシ,アリサと一緒に行動するように. 質問はアリサに聞いてくれ. また今度会おう.」

 そう言って車の電子キーのようなものとどこかのカギを二本,アリサに渡した.

「わかりました. ではまた,さようなら.」

「ああ. またな.」

 ナタリアは私たちが入ってきた扉から出て行った.


 早速,居住用コンテナに入ろうとしたが,扉にドアノブの類がない.(図1)


挿絵(By みてみん)

図1 居住用コンテナの出入り口(※本文と画像で矛盾しているところがありますが,本文の描写が正しいです.)


「どうやって中に入るの?」

アリサにそう聞くと,アリサが電子キーのボタンを押した. すると,モーター音と共に乗降用の梯子が展開され,同時に扉が開いた. 中に入ると,左側にコックピット,右側に階段と扉がある. コックピットの窓は大きく,コンテナの外がよく見えた. (図2)


挿絵(By みてみん)

図2 居住用コンテナのコックピット(※背景が砂漠ですが気にしないでください)


アリサが階段を上って扉の前に行った. 扉には二つカギがついており,それぞれナタリアからもらったカギで開けた. アリサに続いて中に入ると,左手にハンガーラックと靴箱があり,正面に廊下が続いていた. (図3)


挿絵(By みてみん)

図3 玄関


靴を脱いで廊下を抜けるとリビングに出た. そこには右側に机と椅子,左側にキッチン,奥にセミダブルのベッド,ベッドとキッチンの間に謎の機械があった. (図4)


挿絵(By みてみん)

図4 リビング


「なにあれ」と謎の機械を指差しながらアリサに尋ねる.

「空間魔法を応用した魔道具,魔導ドライブです. あれ一つで概ね中型トラック一台分ぐらいの荷物が入ります. また,このように持ち運ぶこともできます. こちらに来てください.」

  そう言って彼女と魔導ドライブに近づく. 魔導ドライブは4つ横並びにおいてあり,スタンドと中心の黒い直方体で構成されている.(図5)


挿絵(By みてみん)

図5 魔導ドライブ


 直方体には幾何学模様が刻まれていて,青緑色に淡く光っている. アリサが上部のレバーを上げると,直方体の光が強くなり,直方体がひとりでに浮き上がった. 彼女が直方体を手元に引き寄せると,中空にファイルブラウザのような画面が浮き上がった. 画面上でいくつか操作をすると,魔導ドライブの幾何学模様から光る粒子の流れが漏れ出てきて,ベッドの上に集まっていく. それはすぐに何かを形作り,光がふっと消えた. そしてそこに一人分の衣服が現れた.

「すごい!!!私もやりたい!!!」

「いいですよ. どうぞ.」

アリサから直方体を受け取る. 野球バットを何本か束ねたぐらいの大きさのそれは,見た目に反して軽く動かすことができる. 魔法か何かで動かしやすくしているのだろう. 幾何学模様に触れるとアリサの時と同じ画面が浮かび上がる. 画面には様々な物品の名前が並んでいる.

「そこの,携帯食料を選択してください.」

アリサの指示に従って携帯食料を選択すると,画面が消えて,代わりに半透明で淡く光る食品っぽい袋が目の前に現れる. それをキッチンに置くと,直方体から光る粒子の流れが漏れ出てきて携帯食料の袋を形作った.

「おおー!!できたー!!」

「よくできました.」

 喜びを全身で表現すると,アリサも私に微笑みかけた.


 ちょうどおなかがすいてきたので昼食をとることにした. 携帯食料の中身は今朝食べた簡素な食事と同じものであった.


アリサが「他の部屋も紹介しましょう」と言いながら廊下の方に行く. 廊下の端にはまだ開けていない扉が続けて二つあった.

手前の方はトイレであった.(図6)


挿絵(By みてみん)

図6 トイレ


奥の方は引き戸で,開けるとそこは洗面所であった. (図7)


挿絵(By みてみん)

図7 洗面所


洗面所に入ると奥にも扉があり,そこには浴室があった.(図8)


挿絵(By みてみん)

図8 浴室


「お風呂だ!今から入ってもいい?」

精神的には二日ぶり,この世界では初めてのお風呂である. どうして我慢できるだろうか.

「今からですか?準備するので中で待っていてください. 脱いだ服はそこの洗濯機に入れてください.」

 アリサはそう言って洗面所から出て行った.

 服をすべて洗濯機に入れ,一糸まとわぬ姿で浴室に入る. 浴室の扉を閉め,ちょうどそこにあったお風呂の椅子に座ってアリサを待つ.

 鏡に映った自分の姿に思わず見惚れてしまう. その透き通った肌は触れると程よい弾力を返し,胸部の豊穣な部分はいつまでも触れていたくなるもみ心地である.

「準備が出来ました. シャワーなどの使い方はわかりますか?」

 体の他の部分を楽しもうとしたところで,アリサに扉の向こうから話しかけられた. 自分に夢中になっていたため気づいていなかったが,言われてみると使い方がわからない.

「どうやって使うのー?」

「少々お待ちください.」

 すると衣擦れの音が聞こえた後,浴室の扉が開く.

「っっ!?」

「使い方は使いながら覚えればすぐ覚えられるでしょう. 早速使っていきましょう.」

そう言ってアリサもあられもない姿で浴室に入ってくる. アリサの豊穣な部分が目に入り思わず釘付けになってしまう. すると先端の突起がないことに気づく. 他にもおへそなどの,人間にはたいていある部分がない.

「………私の体に何かついていますか?」

「っっ! ………アリサってアンドロイドなんだなって改めて実感したよ.」

「そうですか…. それでは使い方を説明します. まずこのボタンを………」

 そう言ってアリサは浴室の設備の使い方を教えてくれた.

 

 風呂から上がった後,私はアリサとおそろいの寝間着をきて,ベッドでゴロゴロしていた.

寝間着はジャージのような見た目で,着心地は悪くなかった. さっきからアリサは料理をしており,おいしそうなにおいが部屋中に漂っている.

「少し早いですが,晩御飯にしましょう. 」

 席に着くとアリサが食事を並べてくれる. 彼女が向かいに座ったが,彼女の分の食事がない.

「アリサはなにか食べないの?」

「私に食事は必要ありません. その代わり,寝る前に魔力を私に注いでください.」

「魔力を? そう,わかった. いただきまーす.」

 今日の晩御飯は野菜と加工肉を煮込んだスープだった. 朝,昼と携帯食料だけだったので,スープによるちゃんとした満腹感が心地よかった.


 晩御飯を食べた後,私はすぐ眠くなったのでベッドで寝転がった. 何かを忘れているような………

「私に魔力を注いでくれますか,同志カエデ」

そういえばアリサのご飯がまだだった.

「わかった. どうすればいい?」

「ベッドの奥に行ってもらえますか.」

 私が奥にずれると,アリサが隣で横になる. そして彼女は私を抱きしめた.

「それでは魔力を注いでください.」

 私はアリサを抱きしめ返して魔力をアリサに流す. 少し経つと,アリサが「もう大丈夫です.」といったので魔力を流すのをやめる. アリサの程よく低い体温と柔らかい抱き心地で眠気がさしてきた.

「ふあぁ~~. おなか一杯になった?」

「ええ,もちろん. もう眠くなってきましたか?」

「うん. もう寝ようかな. おやすみ」

「おやすみなさい. また明日,カエデ」

 私の意識はアリサの腕の中でとけていった.


https://www.pixiv.net/artworks/126793963

↑今回登場した居住用コンテナの詳細がこちらにあります.

興味があれば見に行ってくださると作者が喜びます.


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