エピローグ 異世界人の行方
3人称視点です。
荘厳な雰囲気に満ちた神殿。
一切の光が届かない暗闇の中、宙に浮かぶ立方体から発せられる青い光が辺りを照らす。無機質な立体の前に、一人の男性が陰鬱そうに立っていた。
「ふむ……肉体をそのままに転移させたパターンと、種族をランダムで転生させたパターン、どちらもハードモードらしい。にしても、思った以上に過酷な環境に送ってしまったな。何故か転生者だった葵くんと、教室にいなかった引きこもりの子、二人には損な役回りだったなー」
褐色肌の男性が、光に手を伸ばす。その男性は、葵たちの教室に現れ、異世界へと連れだした自称神様だった。
「となると、残った31名のクラスメイトについて、考えないと。強力なチート能力を与えるとバランスが崩れるし、どうしようかな?」
男性は光から離れ、居住スペースへと移動する。ふかふかなソファにどっかり腰を下ろし、机の上にある細長い四角の道具を手に取る。不思議な文字の刻まれたボタンを押すと、机の向こうの薄く黒い板が光り出す。
転生させられた者たちが見れば、それがテレビと呼ばれる液晶モニターだと指摘するだろう。
画面には、異世界の各地の情景が写し出される。監視カメラの如く地上の様子を眺めていると、男性はふと思いつく。
「そうだ、元々生きてる人間に、憑依させればいいじゃん!そしたら知識や経験は据え置きだし、突飛な行動もとらずに済む。そしたら与えるユニークスキルもぶっ飛んだ能力じゃなくてもいいし、すべて解決だ」
思い立ったが吉日、と言わんばかりに男性は行動を開始。
異世界人の魂と、それに適する人間をリストアップしていく。憑依される肉体のスペックに基づき、ユニークスキルを割り振る。一通り作業を終わらせると、二つの魂が取り残された。
「……葵君と、燐音ちゃんか。どうしよ、二人に適合する人間がいないんだけど」
困ったな…とつぶやき、唸る。考えてもいい答えが出なかったので、一旦あきらめて細長い四角の道具――リモコンを操作し、異世界のテレビ番組を画面に映す。
その時放送されたものは、古き特撮テレビ番組の特集だった。
『その時、不思議なことが起こった‼』
絶体絶命の状態で、奇跡としか言えない現象で大逆転するヒーローの姿が映っていた。
「……ふむ、ありえない状況を納得させるキャッチフレーズか。そっか。別に常識を考慮して辻褄を合わせる必要ないじゃん」
テレビを切って立ち上がり、青い光に近づく。
空中に現れたディスプレイに触れ、何かを操作する。数十分に及ぶ作業を終えた男性の顔には、大仕事を終えた、と言わんばかりに口角が上がっていた。
テレビの前に座り込み、酒をあおる。男性の住む場所が異世界とは思えないほどに現代人らしい暮らしっぷりだが、それを指摘する者はいない。
「後は過去の自分にメッセージを送れば仕事は完了。その後の動向は適当に観測してもらうか」
これから面白くなる、と男性は確信する。異世界人たちの今後に思いをはせ、目を閉じた。




