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最終話 異世界生活の果て

 自らの血と魔力を生成した槍をオーガの頭にぶち込み、地に伏せる。ダメ押しと言わんばかりに槍を引き抜き、心臓にも突き刺した。

 全身がビクリ、と跳ねたことを確認し、オーガから離れる。今この瞬間、息を引き取ったことがわかった。

 俺はグルリと首を回し、辺りを見回す。俺の真後ろには腰を抜かしたルーシーとそれを支えるシエル、ゴブリンジェネラルを解体し魔石を取り出すギルバートさんとライアンの姿があった。

 ――オーガの影に隠れていた、ゴブリンメイジがいない。

 慌てて【探知】スキルを発動。半径40メートルの間にひっかからないことから、どこかに逃げたのだとわかった。地面に目線を移すと、俺達誰にも該当しない小さい足跡が森の方に続いているのが見えた。

 俺はフラフラと立ち上がり、足跡を追って走り出す――

 

 「—―待って!」

 声の主であるルーシーが、俺の腕を掴んだ。金色の瞳には必死さがにじみ出ていた。じっとしていると傷が痛みを訴える。

 

 「戦いは終わったんだよ?早く休まないと死んじゃう――」

 「――もう、助からねえよ」

 俺は腕をゆっくり振り払い、冷たく突き放す。スキルと魔法の二重の反動で俺の体はボロボロだ。多分、アドレナリンが切れた時が俺の最期だろう。

 ならばせめて、ゴブリン達を根絶やしにしてやろう。そう思い、【疾走】スキルで加速。再び崩れ落ちたルーシーや寄ってきたライアン達を振り切り、足跡に向かって走り出した。

 「戻ってこい!」

 ギルバートさんの取り乱した声が後ろから聞こえた。だが、疲弊した連中じゃ俺には追い付けない。身軽なルーシーなら追いつけるだろうが、その気力もなさそうだ。

 森の方に向かうと、両腕で腹部をかばい、ヨロヨロと逃走するゴブリンメイジの姿が見えた。爆走する俺に気づいたゴブリンメイジは動揺してすっ転ぶ。隙だらけの体を踏みつけ、首へと手を伸ばした。

 

 「ヒィ…!タ、タス、ケテ」

 喉を絞めた瞬間、蚊の鳴くようなか細い声が漏れる。目が合った瞬間、俺は確信した。このゴブリンメイジ、知性がある――と。

 ぼーっとしてきた頭で、追ってきてよかったと思った。真に倒すべきなのは、オーガよりもこいつだと理解したからだ。突き出た腹部が目に入ると、手に込められた力が強くなる。

 ゴブリンメイジからこぼれる声が言葉も聞き取れないほど小さくなり、息絶える直前につぶやく。

 

 「来世は人間になれるといいな」

 ゴキッっと鈍い音と共に、ゴブリンメイジの抵抗が止まった。

 全てが終わった瞬間、俺はその場に膝をつく。もう、立ち上がる力もない。

 前のめりに倒れ、傷から血が地面に染み渡る。霞んだ視界の中、過去の記憶が思い浮かんだ。異世界に飛ばされたこと、烏野葵として親友に出会ったこと、そして、何故か死後に記憶を保持できる能力を持っていて、そのせいで十数回の人生を繰り返したこと。

 どうしてこうなったのか、誰の仕業なのか、もうどうでもいい。間もなく命が消え、次の人生が始まるのだろう。


 「――。――!」

 今はただ、ゆっくり休みたい。瞼を閉じると、意識が深い闇へと誘われる。その後、烏野葵は二度と目を覚ますことはなかった。

 

【作者の一言】

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

これまで読んだ感想・評価など頂ければ幸いです。

【烏野葵の物語】はこれにて完結ですが、残された人達の物語が続きます。


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