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第46話 慢心と代償

 「あーもう、やりやがったなこの野郎!」


 オーガの背後に隠れるゴブリンメイジを睨みつける。予想通りとはいえ、マズい状況になっちまった。

強化されたことでオーガの攻撃は一段と速く、鋭くなり、俺の反撃は頑丈になった外皮に弾かれてしまう。

 均衡状態が崩れてしまったのだ。

 (残りは……まだ倒せねえのか)

 4体のゴブリンジェネラルの内、1体は俺が倒し、残った3体は冒険者や騎士が戦っている。大剣使いのライアンとタンクのギルバートさんがいれば、安定して倒せると思っていたんだが、手こずっているようだ。

 その理由は――3体が背中合わせで戦っているからだった。

 奴らは一か所に集まり、互いの死角をカバーしている。そのせいで側面から攻撃できず、ダメージを与えられない。


 「グルァ!」

 

 よそ見するなと言わんばかり叫び、棍棒が迫る。【クイックドロウ】で後方に高速で移動して躱した。

 薄々察していたが、俺への援護は来ないらしい。クソが。作戦会議でオーガは俺が倒すとは言ったが、タイマン張るとは聞いてないぞ。

 ……こうなったら、覚悟決めっか。

 距離が空いてるうちにマナポーションを飲み、詠唱を始めた。


 『我が身を創りし血肉よ。内なる獣を解き放ち、スベテを喰らい尽くせ!≪サクリファイス≫‼』

 

 己の生命力と人間性を引き換えに、強大なパワーを得る魔法が発動すると同時に、力がみなぎる。

 目の前まで迫るオーガの棍棒に合わせ、刀を振り抜く。刃が棍棒の半分まで到達し、武器としての機能を破壊した。

 パリン!

 それと同時に、刀が音を立てて砕け散り、粒子となって消えてしまった。

 想定外の事態に、身体が硬直する。オーガは残骸を放り投げ、腕を叩きつけてくる。咄嗟(とっさ)に腕をクロスさせて受け止めた。

 魔法のおかげで力は拮抗し、なんとか吹き飛ばされるだけで済んだ。これなら勝てる――

 

 「ギャ!」


 勝ち筋が見えたことで、慢心し、視野が狭くなる。そのせいで、寸前まで迫る火球に気づかなかった。


 「あああああ‼」

 

 ゴブリンメイジが横から放った火球は、俺の顔の右半分に命中し、肌と右目を燃やし尽くした。

 慌てて地面に転がって距離を取りつつ火を振り払ったが、相当な威力だったのか、視界の半分が黒く染まってしまった。無様に転がる俺の姿を見て、オーガがニタリと醜い笑みを浮かべる。奴の目には、俺が瀕死の獲物に見えるらしい。

 立ち上がろうとする俺めがけて拳を握りしめ、振り下ろす。

 

 「グゥア⁉」

 

 オーガ驚きの声をあげる。真正面から放った俺の拳が、オーガの指を穿ち抜いたからだ。生命力が減ったことで、凶暴化スキルが発動し、さらに力が増したことで、強化されたオーガの防御力を上回った。

 この瞬間、俺は死ぬまで暴れる兵器と化した。

 

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