第44話 オーガ襲来
ゴブリンとオークの混成部隊第二陣との戦闘は、射撃隊が魔法を撃ちまくったおかげで一方的に攻撃することが出来た。作戦会議の段階では、本格的に攻撃するのはオーガが現れるまで我慢すると決定されていたはずだが、俺がマナポーションを配ったことで余裕が生まれ「今使っても問題ない」と結論づけたみたいだ。
火や水、風の魔法が第一陣での苦戦が嘘のように魔物の群れを壊滅させる。かろうじて魔法の雨から生き延びた個体も、事前に仕掛けられた土魔法のトラップに引っ掛かり倒された。こうして見ると、魔法が強力な兵器だと実感させられる。俺も魔力がたくさんあれば、ガンガン魔法を使えたのになぁ……
ま、ないものねだりは止めよう。
街壁の裏では、魔法を撃ち終えた射撃隊の面々が魔力を回復させていたり、やり遂げたと誇らしげに談笑したりしていた。第一陣では暗い雰囲気だったが、一転して勝ち確定といった明るい雰囲気に満ちていた。
「気を緩めるな!まだ戦いは終わっておらぬぞ!!」
ギルバートさんの一声で、緩んだ空気が一気に引き締まる。流石、騎士団をまとめてただけあって迫力が違うぜ。
俺はマナポーションが射撃隊に行き渡ったことを確認していると、ルーシーが近づいてくる。
「……ねえ、本当によかったの?」
彼女が尋ねたのは、俺が持っていたマナポーションの件だろう。魔法店に発注し、素材まで採りに行って手に入れた物をポンと手放すのは勿体ない。というのが彼女の考えだとわかった。
「おう、大丈夫だ。せっかく大量にあるんだから、ドカンと使った方が気持ちいいだろ」
「……そういうことね」
どこか納得していなさそうだ。いくら緊急事態とはいえ、自らの財産を明け渡すことに、不満を抱いたのだろう。その気持ちも理解できる。が、今守るべきなのは俺の資産ではなく、この世界に来た俺を受け入れてくれたこの街だ。その恩に報いるためなら、どんなことだってやってやる。
張り詰めた空気の中、一時間が経過した頃。
『それ』はやってきた。
『グオオオオオオオオオオ‼』
大地を揺るがすような咆哮が響き渡る。
街の外を見ると、全身が真っ赤に染まった巨大な魔物がゴブリンジェネラルを引き連れて現れた。……あれが今回のラスボス、オーガに違いない。視認できる限り、オーガの周りには4体のゴブリンジェネラルに1体のゴブリンメイジがいるみたいだ。大柄な魔物の中にちょこんと小さなメイジがいる光景に、どこか違和感を覚えた。
「オーガの姿を確認、放て‼」
ギルバートさんの号令により、魔法がオーガ達に飛来する。第二陣のように大ダメージを与えられると、誰もが思った。だが――
「ギャ‼」
ゴブリンメイジが杖を掲げると、ドーム状の薄い壁が展開した。オーガ達を狙った魔法は、それに阻まれてしまった。幸いにも物理には脆いようで、バリスタの矢が着弾すると、パリンと音を立てて割れた。
「馬鹿な――ゴブリンメイジが結界を⁉」
射撃隊による一斉攻撃は勢いを削がれ、大したダメージを与えられなかった。リアクションを見るに、結界を張ることは高度な技らしく、ゴブリンメイジごときが扱えるものではないみたいだ。
遠距離攻撃が通じないなら、近接攻撃で攻めるしかない。そう結論づけたのは俺だけではなかったので、ただちに戦士隊の出撃指令が出された。
俺は街壁から飛び降り、刀を生成する。目の前には広い草原と残ったゴブリンジェネラル達が迫っていた。
「この戦いに決着をつけるぞ‼」
刀を掲げ高らかに宣言した。




