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第43話 マナポーションおすそ分け

〈ルーシー視点〉

 ゴブリンとオークの軍勢との戦闘が始まり、1時間が経過した頃、私は戦士隊に配属され街壁の外で戦っていた。弓が得意武器なのに近距離戦をするということに一度抗議したのだが、私ではバリスタを扱えないと言われてしまい渋々了承した。

 戦い慣れたゴブリンは問題ないが、初遭遇のオークは大きくてしぶといため冒険者や騎士の剣では倒すのに時間がかかって苦戦している。

 ……なるほど、急所を狙えるから前に出されたのね。幸い、オークは鈍重なため近距離で狙い撃つのは難しいことではない。他の冒険者に気を取られているうちに頭部を射抜いていった。

 

 「――やべえ、一体抜けたぞ!」

 騎士の一人が警告すると同時に人間を振り切って興奮したオークが私に向かって突進してきた。私の前には誰もいないので、このままでは無事ではすまない。

 ……弓では突進を止められない。なら、魔法で吹き飛ばす必要がある。左手を額の紋章に添えて、右手を突き出す。

 『天地を廻る神秘の風よ、我が声に従い嵐を呼び起こせ!《ブリーズバースト≫!!』

 額の紋章が光り輝き、強風がオークに叩きつけられた。その魔法が命中した瞬間、オークは後方に大きく吹き飛ばされ、体勢を崩し慌てて立ち上がろうとしたところに追撃し、仕留める。

 第一陣を無事に乗り切り、街壁へと後退する。どのくらい戦うのか分からない以上、出来る限り体力を温存しなければならない。

 辺りを見回すと、傷口に包帯を巻く冒険者や騎士団の姿があった。オークの登場により想定以上に苦戦していることがわかる。特に、冒険者は騎士と比べて練度が低いため各所に傷が出来ている者が多い。


 「……先が思いやられるわね」

 弓の手入れをしながら思わず呟く。ゴブリンとオークでさえ大変なのに、裏には強力なオーガが控えている。

 やる気が盛り下がっているところに、ギルバートが次の指示を出した。


 「第一陣防衛、ご苦労であった。第二陣以降はオーガが現れるまで魔法での射撃を中心に防衛する。戦士隊の諸君は体力を温存しつつ前線で射撃をサポートしてくれ」

 

 どうやら、想定より早く攻撃魔法を解禁するみたいだ。だが、ここで魔力を使ってしまっていいのだろうか?確かマナポーションは品薄で、在庫はほとんど残っていなかったはず……

 なんて考えていると、ガラガラと車輪の転がる音が聞こえた。音がした方向に視線を向けると、マナポーションの入ったタルを運ぶアオイの姿があった。

 

 「よう、ルーシーもいるか?」

 彼はタルの側面に備え付けられたビンを紫色の液体に満たし、私に渡してくれた。まだまだ魔力に余裕はあるが、緊急用に持っておこう。以前魔法店で注文した大量のポーションが、こんな形で役に立つとは……


 (……アオイは、有事の際に配ることを想定していたのかしら。)

 何はともあれ、これで射撃隊の魔力は補充される。

 一息ついていると、間もなく第二陣の軍勢が迫ってきたと伝令が届いた。第一陣とは異なり、バリスタの砲撃に火の球が混ざり、着弾したオークは熱さに悶え絶叫した。

 ゴブリンたちは慌ててオークを盾にしたり、散り散りに逃げたりとパニックになっていた。目につくオークが全滅したところで、射撃が止んだので、前線に出る。残ったのはゴブリンだけなので、難なく倒せた。

 偵察で見つかった数の大半はこれで倒されたはず。なら、もうすぐオーガが出てくるだろう。心の準備をしておかなくちゃ。


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