第35話 可愛い子好きな魔銃士
2日後、騎士二人と顔合わせを済ませ、4つ目の拠点を襲撃した。大剣を豪快に振り回すライアンと、魔力を弾丸に変えて放つ魔銃を巧みに操るシエルの実力は、これまで見てきた冒険者を遥かに凌駕していた。
「右から来るぞ、頼む!」
「オッケー、フォローは任せて!」
二人は常に声を掛け合い、息を合わせて攻撃を繰り出す。互いを信頼しているからこそ背中を任せられるのだろう。だが、活躍してるのは二人だけではなかった。
『天地を廻る冷たき風よ、疾風と成りて切り裂け!≪ウィンドカッター≫!!』
ルーシーの額の紋章が淡く光り、風の刃を生み出す。腕を払うのと同時に放たれた魔法は、いともたやすくゴブリンの体を切り裂いた。今まで隠してきた魔族の力により、魔法の威力を飛躍的に向上させていた。…最初に会ったときから使っていれば、少しは楽できたのになぁ。
俺は初期に買った槍の先端に刃を生成し、薙刀を作る。そして、長いリーチを活かし襲い掛かるゴブリンを次々に倒していく。3人のように派手な戦い方ではないが、的確に急所を狙い仕留めていく。
やがて、大した苦戦もなく戦闘が終わる。俺とライアンが足元に積まれた死体を片付けている間、シエルとルーシーは木陰で休んでいた。
「ルーシーちゃん。この後お姉さんと遊ばなーい?」
「…えっと、打ち上げならみんなで行きたいです」
…どうやらシエルは、可愛いもの、特に女の子が大好きなようだ。口説き方がナンパみたいなのが気になり、隣で作業してるライアンを見ると、やれやれと頭を振っていた。
「まったく、任務中だろうが……すまない、彼女はいつもあんな感じなんだ」
「止めなくてもいいのかよ」
「何度も注意はしていたんだが、『可愛いは誰にも止められないわ‼』という訳の分からない言い訳をするんだ。もう何を言っても止まらないと悟った」
「あー……なるほど」
こうして話していると、貴族らしくないというか、フランクな印象を受けた。二人は男爵や子爵といった爵位の低い家柄の出身だからだろうか。ま、見下されるより遥かに楽だ。
速やかに帰還し、報告を済ませる。女子二人はこの後遊びに行くらしく、冒険者ギルドで解散することになった。
「それじゃ、あたしはルーシーちゃんとデート行ってくるから。バイバイ!」
「え、いやちょっと、今から親睦会――」
「…ばいばい」
ルーシーはシエルに引っ張られどこかに連れていかれた。残った俺達も、親睦を深めるために飲みに行くことにした。
≪ルーシー視点≫
依頼を終わった後、私はシエルに誘われて2階建てのカフェに行った。中に入ると、如何にも高級な雰囲気で貴族御用達といった感じの店だ。
「今日はお姉さんの奢りよ。好きなの頼んじゃって!」
「あの…何でこんなことを…?」
恐る恐る尋ねてみた。
「ふふ…こんなに可愛い子と一緒にお食事すること、それがあたしの幸せなの。特に、魔族の子とお茶するのは初めてだしね。お近づきの印よ」
なるほど、貴族様の道楽だって無理やり納得するしかないわね。遠慮なくイチゴパフェを注文し、食べ始めた。クリームやイチゴの甘さが口から全身に広がっていき、幸せでいっぱいになった。
「口に合ったかしら?って聞くまでもないわね。ねえルーシーちゃん、貴女といた男の子とはどういう関係なのかしら?」
私とアオイの関係…か。出会い方はあまり良くなかったけれと、今は共に戦うパートナーとして互いに信頼している……はず。でもシエルとライアンの息の合った連携を見てると、それを言う資格があるのかわからなくなってしまった。
私が想いをポツポツと語ると、彼女は優しく声をかけてくれた。
「大丈夫よ。会って間もない相手をそれだけ信じれるって、凄いことなのよ。あたしとライアンだって、昔からの付き合いだから息が合うだけだし。そうだ、お姉さんが色々教えてあげる!」
それから、色々なアドバイスをもらった。中には異性と仲良くするコツという信憑性のない話を聞かされたりもした。最初は変な人だと思っていたけど、優しい一面もあるのだと知った。
やがて完食し、幸せな時間は終わりを告げた。宣言通りシエルが会計を済まし、二人で店の外に出る。空を見上げると、星々が淡く輝いていた。泊まっている宿に戻ろうとした時、手をつかまれ呼び止められた。
「この後ご飯食べに行かない?あたしたち二人で」
二次会に誘われたが、流石にこれ以上は迷惑になるだろうし、断ってしまおう。
「……今日は、ありがとうございました。それでは、また後日」
「え…まだ帰さな」
「そういうことなので、失礼します」
「――っ!」
私達の真後ろからアオイが声をかけてきた。気配を感じなかったことにシエルは動揺し、力が緩む。その隙に彼女の手を振り払い、アオイと一緒に帰路に就いた。
宿で夕食を摂りながら今日の出来事を共有し、長い一日を終える。途中からシエルの様子がおかしかった気がするが、明日になればきっと大丈夫。そう信じたいわね。




