第30話 原石の輝き
廃坑の探索を始めて3日が経った。俺達は未だに坑道を彷徨っていた。ルーシーが地図を作成してくれたおかげで迷うことはないのだが、目当ての魔晶石は一向に見つからない。
「…そろそろ帰らない?こんだけ魔石も手に入ったんだし」
ルーシーの肩には、道中狩りまくった魔物の魔石がポーチいっぱいに詰め込まれていた。この3日間、コボルトに大コウモリ、スケルトンにストーンゴーレムといった多様な魔物と戦ってきた。おかげで、レベルも上がったし、新しい戦術も開拓できた。
「利益だけを考えればな。…ま、水も食料もあと少しだし、次の道で最後にしようか。いくぞ…『探知』発動!」
それに、闇雲にさまよっていたわけではない。探知スキルを使うことで、魔力を感じることが出来るようになった。レベルが低いせいか精度はビックリするほど低いが、ゴーレムみたいな大きな魔力ならハッキリ感知できる。魔力の塊である魔晶石なら余裕で見つかると思っていたが…なかなかうまくいかなかった。
「また外れかしら…」
「いや、今度こそ当たりを引ける……ん?ちょっと待て、今までよりデカい反応だ。この先からだ!」
急ぎ足で進むと、開けた空洞に出た。そこには、赤や青、緑色などに光るカラフルな結晶が足元から天井まで散りばめられていた。
それから間もなく紫色の結晶を見つけた。…これだ。これこそが、俺の求めた魔晶石の塊だ。早速、ツルハシを取り出して採掘を始める。カツン、カツンと心地良い音が洞窟に響き渡る。こぼれ落ちた欠片をバックパックに放り込み、再びツルハシを叩きつける。俺は夢中で掘り続けた。
…だが、至福の時間は終わりを告げた。
「魔物が来たわ!備えて!」
ルーシーの言葉によって、現実に引き戻される。後ろを見ると、宝石を纏い虹色に光る全長1,5メートル程のトカゲが姿を現した。
「チッ、音に釣られて来やがったか。」
「ジュエルリザード…確かCランクの魔物よ。気を引き締めて!」
今の俺にとって2つも格上か…ま、採掘の邪魔をするなら戦うしかない。手元にハンマーを生成し、迫ってくる宝石トカゲに振り下ろす!
ガキン!
だが、その一撃はいともたやすく受けられてしまった。宝石トカゲはハンマーを跳ね返し、体制が崩れた俺に体重をかけてのしかかる。
俺の体は地面に背中を叩きつけられ、肺の空気が吐き出される。全力で撥ね退けようと力を込めても、びくともしなかった。宝石トカゲが大口を開け、俺の頭をかみ砕かんとばかりに顎を近づける―――
「【パワースナイプ】!】
宝石トカゲの頬にルーシーの【戦技】が炸裂し、火花が飛び散る。注意がそれたその隙に俺の上から撥ね退け、体制を立て直す。
ハンマーを拾おうと手を伸ばしたが……ヤツは体高が低くて素早く、ハンマーを受け止める耐久力を持つ。ただでさえ当てるのも難しいし、別の武器で対処しよう。ひとまず宝石トカゲのヘイトがルーシーに向かったので、その先に移動して視線を遮る。
「シュ―――ッ」
宝石トカゲは苛立ちを露にし、威嚇してくる。その顔を睨みつけていると、歯の一部が欠けていることに気づいた。…ふむ。口の周りは柔らかく、クッション性は低いのか。だったら、真正面から攻めてやろう。
「―濃縮生成」
魔力を右手に収束し、槍を生成する。多くの魔力から出来上がったそれは、ゴブリン戦で作った刀と同じように淡く黒い光を放っていた。
再び襲い掛かってきた宝石トカゲの顔面に突きを放つ。だが、なめらかな動きで回避し、反撃を狙ってくる。…よし、今だ。噛みつき攻撃が繰り出される直前、下顎から蹴り上げる!
「――ッ!」
さすがに下からだと重いな。でも確かな手ごたえを感じた。痛撃を受けた宝石トカゲは顔に怒りを浮かべ――後ろを向き、走り去っていった。
「…へ?」
一目散に逃げ出したことに唖然とし、固まってしまった。あまりにもすがすがしい逃げっぷりに関心し、姿が見えなくなるまで眺めるしかなかった。
「…えと、採掘を再開しよ?」
「そ、そうだな…」
初のCランクモンスターとの戦闘は、撃退という形で幕を閉じた。その後は特に問題なく採掘が進み、バックパックがいっぱいになるまで集めた。
即座に引き返し外に出ると、辺りは夕暮れに包まれていた。新しいエリアは多彩な魔物が生息していて、森では得られない貴重な経験を積むことが出来た。
特に宝石トカゲとの戦闘では、火力不足が目立った。高ランクの魔物と戦うためには、【鉄鋏】とは別に高火力な【戦技】を身につける必要がありそうだ。
冒険者ギルドメモ
ジュエルリザード:Cランクに分類されるトカゲの魔物
暗い洞窟などに生息し、宝石を主食とする
他のCランクの魔物と比べ力は弱いが、逃げ足の速さや打撃、斬撃に加え、高い魔法耐性を持つため討伐は難しい。顎や腹など、宝石のない箇所への攻撃や、弓矢など刺突が有効である




