第3話 冒険者になろう
ミーダの街に着いた時には、既に日が落ちていたため、とりあえず宿の情報を集めるために料亭に向かった。
そこで俺は豆と干し肉の炒め物と野菜の入ったスープを注文した。素朴な味だが、疲れた体に温かいスープが身に染みる。食後、ウェイターにあまりお金がかからない宿がないか聞いてみた。
この食堂から南に『鼠の寝床』という宿があるらしい。ウェイターに料金とチップを渡し、『鼠の寝床』に向かった。
宿の第一印象は、昔からある建物といった感じで手入れが行き届いているみたいだ。
受付にはおばあさんが眠そうに座っていて、「一泊銅貨5枚。朝食と夕食付きなら銅貨10枚だよ。」とぶっきらぼうに話しかけて来た。
俺は迷わず食事付きを選び、30日分の料金銀貨3枚を支払った。
「明日から朝食を用意しておくね」
おばあさんはまとまったお金が支払われて嬉しそうだ。
話を聞くとこの宿は30年前から続いているが、最近は客がめっきり減ってしまい、俺が来るまで1,2人しか泊まっていなかったらしい。
二階の部屋には、ベッドに机と椅子、小さな窓に大きな桶がある。桶は井戸水を汲むためのものらしい。必要最低限の設備しかなく、ベッドは硬かったが、疲れていたのでぐっすり眠ることができた。
翌日、宿屋の一階に降り、朝食を摂った。メニューはパンとサラダ、スープといったシンプルなもので、食べると心が温まった。
おばあさんに「行ってきます!」と声をかけ、宿から出発する。冒険者ギルドは宿から近く、30分ほどで着いた。
冒険者ギルドの中は依頼を求める冒険者たちでごった返していた。舐めるような視線を受けながら俺は新規登録のため窓口に向かい手続きを行う。
「冒険者ギルドにようこそ。新規登録の方ですね。こちらにお名前を記入してください。」
受付嬢に渡された紙に名前の他に特技や趣味等書き込んだ。文字の読み書きができてよかったぜ。
「確認しました。お名前がアオイ様、特技、趣味は特になし、ですね。では登録料に銀貨2枚お支払いください。それと、ステータスカード作成のためこちらの台に血を垂らしてください。」
受付嬢から針と受け皿が渡されたので、言われた通りに針を指に刺し、血を数滴垂らした。その瞬間、台が淡く光り輝き、1枚のカードが生成されていた。すごい技術だな。
ステータスカードには
名前:アオイ 16歳
職業:探索者
ランク:E
と表示されていた。
「これで登録完了です。ステータスカードに触れ、『ステータスオープン』と唱えると詳細なステータスが見れます。ご確認なさいますか?」
「あ、はい。えっと、『ステータスオープン』」
言われたとおりに唱えると、目の前に空中ディスプレイのようなものが出現した。未知の技術に驚きつつも光に目を向ける。そこには俺のステータスが表示されていた。
名前:烏野葵 16歳
職業:探索者
生命力 10/10
魔力 10/10
攻撃力 10
防御力 10
敏捷性 10
知力 10
【スキル】
なし
【ユニークスキル】
マスターウェポンLv1
「ご確認できたようですね。では、こちらをどうぞ。」
受付嬢から1枚の紙が渡された。そこには
『冒険者研修にご参加ください!』と書かれていた。研修を受けることで冒険者のイロハを教わり、死亡率を低下させることが目的の企画のようだ。
「研修は10日後に行われます。それまで簡単な依頼を受け、少しでも経験を積んでくださいね。登録手続きは以上になります。貴方のご活躍、期待しています。」
こうして、晴れて冒険者になることができた。が、ユニークスキルについて気になったので、検証するために一度宿に戻ることにした。