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第29話 『変化』を感じて

 フランツと模擬戦をした2日後、俺達は黒曜魔法店の店主から依頼を受け、街の北にある廃坑へと向かった。

 門を通り林を抜けると、古い坑道の入口らしき人工物のある山が見つかった。

 坑道に入ると、暗闇で満ちた通路が奥へと続いていた。魔光のランタンを持っていなければ探索もままならなかっただろう。買ってよかったぜ。

 「というわけで、マナポーションの原料になる魔晶石を採掘しに来たんだ。いくらあってもいいからな。」

 「なるほど…じゃあゴブリンの巣はしばらく放置するの?」

 「掲示板見てないのか…ギルドが討伐隊を招集するって話だ。俺がいけたんだから他の冒険者でもいけるだろ、って判断だそうだ。」

 「…大丈夫かしら」

 ルーシーの心配はごもっともだな。そもそも数が多いし、疲弊したところにジェネラルが出てくる。こちらも数を集めたとしても苦戦は避けられないだろう。

 なんてことを考えつつ進んでいると、広い空間に出た。そこには鉱石の運搬に使われていたと思わしきトロッコや線路があった。かつては豊かな鉱脈があり栄えたのだろう。無数の道のうち一番右の道を進んでいく。しばらく坑道を進んでいくと、ルーシーが何かを発見した。

 「見て、あそこ。」

 彼女が指差した先に、何者かが食事をした痕跡が残されていた。冒険者が利用したのだろうか。近づくと、食い荒らされたコウモリの死骸が放置されていた。

 「なあ、これ冒険者が残したものに見えるか?」

 「どう見ても魔物の痕跡ね。骨を残す小型の獣…たぶんコボルトのものよ」

 どうやら魔物の棲み処に足を踏み入れたみたいだ。警戒しながら歩くこと4.5分、前方からうなり声が聞こえてきた。

 『ウゥゥゥゥ…』

 その先から、ゴブリンと同じくらいの体躯に犬の顔を持った二足歩行の魔物が3体現れた。あれがコボルトで間違いない。装備してきた剣を抜き、臨戦態勢をとる。お互いの姿を視認した時、一体が俺に向かって粗末なナイフを構え突進してきた。

 「はっ!」

 キィン!

 相手のナイフに合わせて剣を振り、弾く。その一撃でコボルトは大きくのけ反り、ナイフを手放してしまった。体制を崩した体に袈裟切りを叩き込み、後ろの2体に向かって蹴り飛ばす。

 『グルルルル……‼』

 仲間が飛んできたことに驚いた2体は、牙を剝き出しにし威嚇した。動きが固まった所に俺は一歩ずつ接近していく。プレッシャーに耐えかね動き出した右にいる個体に突っ込み、首を水平斬りで切り落とす。続いて左にいた奴の心臓に剣を突き刺した。その一撃によって一瞬体をけいれんさせ、動かなくなった。

 「ふう、こんなもんか。ルーシー、こいつの魔石って金になるか?」

 「……」

 「…ルーシー?」

 「…あ、ごめんなさい。聞いてなかったわ。」

 「どっか具合悪いのか?少し休もう。」

 心ここにあらずといった彼女を連れ、先程の広い空間に引き返した。壁沿いに歩くと空洞があったので、そこで一休みすることになった。食事の用意をしていると、ルーシーが声をかけてきた。

 「…その、一つ気になったことがあるの。聞いてもいい?」

 「ああ、それでさっき黙ってたのか。いいぞ。」

 「ありがとう。…今日のアオイ、なんだか今までとは別人みたい。剣の精度があった時の比じゃないし、以前より大きく見えるというか…」

 彼女から出てきた言葉に俺は、一瞬言葉を失った。きっと俺の『変化』に気づいたのだろう。ま、レベルが10になったから別人のように強く見えるのだと言えばいいか。

 「ふっふっふ、そうか。やっぱりそう見えるか。…聞いて驚け。ゴブリンの巣を潰した時、ついにレベル10に到達したんだ!これで強く見えたってことだろ?」

 「…そう。良かったわね。」

 彼女は少し納得がいかなそうにつぶやいた。…無理もないな。なんせ俺はここ数日でとんでもない速度で成長している。それに、今の俺にはこの『変化』を説明し、証明することはできない。ルーシーには悪いが、時が来るまで疑問を持ってもらおう。

 気まずい空気を消すために、簡素な食事を振る舞う。腹が満たされたことで、彼女もひとまず妥協したようだ。

 魔晶石の採掘ポイントを探すため、さっきとは違う坑道を進んでいく。この先に目当ての物があるといいんだが…

 依頼も俺の『変化』も、まだ道半ば。気を引き締めていこう。

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