第28話 初めての対人戦
ゴブリンの拠点を潰した次の日、俺が目を覚ましたのは昼過ぎだった。二日酔いによる頭痛と吐き気を水を飲んで抑え、宿の一階へ降りていく。
「おはよう、婆さん。ちょっと厨房借りてもいいか?」
「おはようさん。なにか作るのかい?好きに使いな。」
早速厨房に入り、調理を始めた。以前教わった山菜スープを手際よく作成し、味見する。
…美味い。あっさりとした風味が体中にめぐり、細胞が目を覚ましていく。…だが、圧倒的にボリュームが足りない。飲んでいくうちにさらに食欲がわいてきた。小鍋一杯で作った分を全部飲み干しても、俺の体はまだ栄養を欲していた。
パンと肉を求め、冒険者ギルドに向かう。食堂に行くと、酒飲み3人衆の一人、フランツが酒を飲んでいた。せっかくだし、声をかけよう。
「よう、フランツ。昨日は世話になったな。」
「気にするな。酔いつぶれたヤツの介抱は慣れてるしな。報酬を受け取りに来たのか?」
「あー…そうだな。とりあえず飯食ってからだ。」
すっかり忘れてた。まあまずは腹ごしらえを済まそう。大皿に盛られたステーキを平らげ、カウンターへ取りに行く。受付の奥に通され、大量の銀貨と5枚の金貨を受け取った。
カウンター前で待機していたフランツに協力報酬として金貨3枚を渡し、冒険者ギルドを出ようとしたところに待ったをかけた。
「なあアオイ、俺と戦ってみないか。…どの位強いのか、確かめてみたいんだ。」
「おいおい、唐突だな…ま、いいぜ。お前の【戦技】を見てないしな。」
俺達は訓練場に移動し、刃をつぶした訓練用の武器を手に取る。フランツは長剣、俺は短めな片手剣を2本を選び、中央のエリアで相対した。
「あの薄い剣は出さないのか?」
「剣術スキルが手に入ってな。これを機に二刀流…双剣を試すつもりだ。」
名前:烏野葵 16歳
Lv 10
職業:探索者
生命力 71/71(+1)
魔力 31/32(+4)
攻撃力 62(+2)
守備力 40
敏捷性 52(+2)
知力 40
【スキル】
剣術Lv1(new)
槍術Lv2
斧術Lv1
喧嘩術Lv1
投擲Lv1
凶暴化Lv2
疾走Lv3(1Up)
探知Lv1(new)
持久力Lv2
集中Lv1(new)
【ユニークスキル】
マスターウェポンLv2
剣術Lv1:攻撃力+5 剣の扱いが少し上手くなる
探知Lv1:知力+5 周囲の様子を感知する 効果範囲:知力の半分/m
集中Lv1:知力+5 集中力が上がる
疾走Lv3:敏捷性+20 スキル発動時敏捷性1.5倍 効果時間:スキルレベル/分
剣術と集中スキルに加え、探知スキルを獲得した。それらしき行動をしていないから、いわゆる職業スキルってやつだろう。条件はレベル10到達か?
振り返るのはここまで、今は戦いに集中しよう。
「さあ…行くぞ!【クイックドロウ】!!」
フランツの【戦技】によって戦いが始まった。一瞬のうちに俺との間合いを詰め、切りかかってくる。
カキン!
咄嗟に剣を交差して受け止めたものの、息をつく間もなく2撃、3撃と連撃が襲い掛かる。二刀流に慣れてないこともあって防ぐので精一杯になり、後ずさってしまう。
「どうした…!防戦一方じゃないか!」
「そう言ってられるのも今のうちだ。…オラァ!」
相手の上段斬りを両手の剣で受け止め、がら空きの胴体に蹴りを放つ。これでフランツの体を後退させた。
「…っつ、無理矢理突破したか…!」
「その速さも見切った。もう俺に届かねえぞ。」
「ほざけ!【クイックドロウ】!!」
もう一度【戦技】を発動して加速したが、時間が経つほど俺の練度は増し、攻撃を完全に凌げるようになった。
…そろそろ決めるか。
「はっ!」
両手の剣を水平に薙ぎ払い、鍔迫り合いに持ち込む。足を止めることを嫌ったか、彼は後ろにステップし、俺と距離をとった。それと同時に走り出し、距離を詰める。俺はフランツとの間を縮めながら、全身を廻る魔力を剣に送り出し、左右に展開する。そして、剣先まで達した力を解き放つ―――
「【鉄鋏】!」
バキィィィン!!
十字に交わった二振りの剣はフランツの直剣を真っ二つに引き裂き、剣だったものは悲痛な音を上げた。
「なっ―!」
「俺の勝ちだな」
「…チッ。降参だ。」
流れるような動きで剣を構え、残身の姿勢をとる。勝ち目を失ったと悟ったフランツは、残念そうに両手を上げた。
…これが【戦技】の感覚か。感動で腕が震えるぜ。それと、少しの脱力感を覚えた。ステータスを見てみると、身体強化を練習した時よりも多く魔力が減っていた。どうやら、【戦技】には魔力が必要らしい。思い付きでやってみたが、上手くいってよかった。
その後、酒をおごってもらったり元居た世界の話をしたりして、楽しい時間を過ごした。
今後は【戦技】をたくさん習得していきたいな。




