第22話 ルーシーの報告
ルーシーの魔法のおかげで緑色の角を持つホーンラビットを討伐した。左腕を負傷したが、軽い手当をすれば大丈夫そうだ。
ルーシーはウサギのそばに近寄り、解体を始めた。ウサギの体は斬撃によって傷だらけになっていて、毛川は売り物になりそうにない。……よし、包帯が巻き終わった。
「終わったわ。肉と皮は廃棄ししちゃいましょう。あ、魔石と角は私が貰ってもいい?」
「できれば売って金に換えたいんだが…まあ、使い道があるならいいぞ。何に使うんだ?」
「魔法の杖に加工したいの。属性付きの魔石なんてそうそう手に入るものじゃないから。詳しい話は街で話すわ。」
ウサギの亡骸を処理し、街に向かって出発した。
「さっき使ってたけどさ、そもそも魔法ってどういうものなんだ?」
「…超簡単に言うと、魔力を使っていろんなことを引き起こす技のこと。火を起こしたり水を操ったり、みたいな感じ」
「なるほどな。そこから杖とか属性とか色々考えるわけか。ルーシーは風属性の魔法が使えるんだな。」
「そういうこと。一般的には杖がないと魔法をろくに使えないことが多いのだけど…私はなくても発動できるの。すごいでしょ。」
彼女は自慢するように大きな胸を張った。俺は思わず胸部に目線を向けてしまい、慌てて引き離した。
気恥ずかしさを誤魔化し、早歩きになって街へと帰還した。ギルドの受付に向かうと、顔なじみのカリンさんが対応してくれた。
「おかえりなさい。二人とも無事でなによりです。それで、どうでしたか?」
「バッチリ討伐してきたわ。はい、これが証拠」
ルーシーは緑色の角と魔石をカウンターに置いた。
「…!確認します。少々お待ちください。」
カリンさんは資料をパラパラとめくり、何かを探すような素振りを見せた。しばらくして、俺達に資料を見せてきた。そのページには、討伐したウサギの情報が記載されていた。
「今回出現したのは、このウィンドラビットという魔物です。上位個体と説明しましたが、間違いでした。長く生きたホーンラビットが進化した個体で、風属性を持つと書かれています。」
「へえ…モンスター――魔物って進化することがあるんですね。」
「…だとしたら、Eランクで対処できるレベルじゃなくない?」
そう詰め寄ると、カリンさんは観念した様子で、頭を下げた。
「申し訳ございません。こちらの手違いでした!その代わり、報酬は上乗せさせていただきますので…通常報酬の銀貨20枚に加え、銀貨10枚を上乗せします。買い取りにも色を付けますよ!」
「ふーん…そこまで言うんだったら、納得してあげる。アオイ、相談したいことがあるから、先に帰って。」
「了解。じゃあ報酬や魔法の話は別の日に改めて頼む。」
俺は別れを告げ、食堂に向かった。
≪ルーシー視点≫
アオイが離れたのを確認し、私はカリンに向き直ると、彼女はいつもの柔らかい雰囲気を消し、真剣な表情を見せた。
「ルーシーさん、アオイ君の様子はどうでしたが?」
「左腕を負傷。傷は浅く数日で治りそう。異常な行動は見られなかった。…というか、いちいち報告するの面倒くさいんだけど。まだ信じられないわけ?」
「年には念を入れろ、とギルマスからの命令でして。異世界人であるアオイ君はこの世界にとって異物なのです。どのような異能を隠しているのか、我々は把握出来ていませんから。」
カリンの言葉に、私は首をかしげた。アオイの異能――ユニークスキルは魔力を具現化し、武器を生成するものだと伝えたはずなのに……ギルドはそれが信じられないってこのかしら。
「ルーシーさんの報告に嘘偽りはないと思います。我々としては、生成に必要な魔力量や生成可能な範囲など、具体的な情報が欲しいのです。ルーシーさん、可能であれば確認していただけませんか。」
「…わかったわ。その代わり、情報料を上乗せしておいて。」
「了解しました。それでは、こちらが報酬の銀貨30枚、その隣が魔力を回復するマナポーションです。今後もご協力をお願いします。」
銀貨と3本のマナポーションを受け取り、私はカウンターを後にした。食堂を覗いてアオイを探すと、彼は数人の冒険者と酒盛りしていた。……この街に来て1月しか経っていないはずなのに、すっかり周りに馴染んでいた。
…私はうまく馴染めなかったのに。入り口付近でモヤモヤしていると、アオイが声をかけてきた。
「おーい。ルーシー!一緒に飯食おうぜ!」
私は食堂の中に足を踏み入れ、彼の下に向かった。アオイは冒険者たちに私を紹介し、私を輪に入れて食事を再開した。大人数での食事は久しぶりで、最初は戸惑ったけど、騒がしくも楽しいひと時を過ごすことが出来た。
ギルドでは爆発物のような扱いを受けているけど、私にはアオイが悪い人には見えなかった。だから、何があっても私だけは彼の味方でいよう、と思った。




