第17話 上位個体との邂逅
森に入って二日目。昨日に続きゴブリンを探しに森を進んだ。今日は適度に雑談を交わしつつ探索した。だが、2、3時間探し回っているのにモンスターが1体も見つからなかった。昨日はあんなにたくさんいたのに…一体どうなってんだ?
「…アオイ、森が静かじゃない?虫の声もしないし…」
「確かに妙だな。俺たちにビビッてる…ってわけじゃないよな。そういえば、この森に入ってからゴブリン以外見ていないな。」
「言われてみれば確かに……」
俺の言葉にルーシーが、何やら考え込んだ素振りを見せた。そうだ。南の森について調べた時この森にはゴブリン、グレイウルフのほかにも虫系のモンスターも生息していると書いてあったことを思い出した。それなのに、一切姿が見えない。
「この先にゴブリンの巣があるかも。少し様子を見てみる?」
「巣か…様子を見るだけ見て、ギルドに報告するのが無難だな。」
そう判断した俺は一歩、森の奥へと足を踏み入れた。
ヒュンッ!
次の瞬間、何かが俺の頬を掠めた。飛んできた方を注視すると、弓を構えたゴブリンと、その個体を守るように毛皮の鎧を纏ったゴブリンと、杖を持ったゴブリンがいた。
「おいおい、なんだアイツ等、武装してんじゃねえか!」
「上位個体が3体も…!気を付けて!」
鎧のゴブリンが一回り大きな棍棒を振り下ろしてきた。俺は槍で受け止めたが…力が強く、振りぬけない。今まで戦ってきたゴブリンとはレベルが違う。直撃を避けるため槍を斜めに傾け、棍棒を地面に振り下ろさせた。がら空きになった腹部に向かって突きを放つと、後ろにのけ反った。鎧に阻まれたが、ダメージは通るようだな。そのまま連続で突き、頭部を狙って追撃を放つ。
「グ、ゲギャ!」
だがその一撃は棍棒で防がれてしまった。乱暴に振り回された棍棒を避けるために後退し、仕切り直しとなった。
…残りの2体はどうなったのだろうと周りを見回すと、弓持ちのゴブリンとルーシーが木々を盾に撃ち合っていた。向こうはまだ時間がかかりそうだ。…って待て。杖を持った奴がフリーじゃねえか。そいつは杖を両手に持って何かブツブツ呟いた。次の瞬間、火球が生成され、俺に目掛け飛んできた。
面での攻撃を受けるために槍を手放し、両手斧を生成し薙ぎ払った。何とか火球を打ち消したが…その隙を見逃すほど敵は甘くなかった。ニタニタと気色悪い笑みを浮かべた鎧のゴブリンが棍棒が俺の頭を殴りつけた。
「…!」
頭部から血を流れるのを感じる。同時に頭から、いや、心臓からつま先まで熱が血を介して伝わる。『凶暴化』発動のサインだ!
「野郎ぶっ殺してやる!!!」
俺は衝動に身を任せ、走り出した。
「『疾走』!」
飛躍した脚力で鎧のゴブリンを飛び越え、一直線に杖を持った奴に突っ込み、片手でもった斧で力任せに叩きつけ、全身を粉砕した。
「ハア...ハア…次ハ、テメェダ!」
俺は後ろから走って追いかけてきた鎧のゴブリンに斧を投げ、棍棒を手元から吹っ飛ばした。武器がなくなり動揺した所ところに左ストレートを放ち、ゴブリンの体は地面に横たわった。このまま殴って息の根を止めたいという衝動を深呼吸して抑え、ハンマーを生成した。10キロを超えるそれを両手で持ち上げ、立ち上がろうとしたところに全力で振り下ろした。
グシャッ!
生物から出してはいけない音を立て、全身から血を噴き出し絶命した。俺は残った奴はどこだと振り返ると、弓持ちの頭に矢が刺さり倒れるところが見えた。
…チッ、もう残ってねえのか。そう思った瞬間、体を満たした熱が急速に下がっていった。これにて戦闘終了だ。ルーシーの方を見ると、彼女は2、3発矢を掠めたようだが衣服の損傷以外に目立った傷は見られない。今回は意識を失わずに勝てたし、『凶暴化』が解けることで体がクールダウンしてることが分かった。
色々な収穫があったと感じた俺は頭の出血を止めるため包帯をバックパックに取りに行った。




