第13話 ルーシーの後悔
≪ルーシー視点≫
6体のグレイウルフを討伐し終え、私は意識を失ったアオイの下へ駆け寄った。急いで持っていたポーションを引っ搔かれた背中と嚙みつかれた左腕に振り掛け、包帯を巻いて止血した。これでひとまず安心ね。
…彼がここまで大きな怪我をしたのは私のせいだ。もっと早く気付いていたら。いや、そもそも戦いを避ければよかった。アオイは冒険者になって日が浅かったのに、私はいつもの感覚で彼に囮を頼んでしまった。
近くにモンスターはいないみたい。とにかく、目が覚めるまで安静にしておいて、グレイウルフを解体しよう。私はグレイウルフの死骸を解体するために近づいた。3体は私が弓で倒したものだけど、アオイが倒した残りの3体は三者三様な死に方をしていた。1体はお尻から血を噴き出して、もう1体は眼球が潰れて、最後のひと際大きな個体は頭部が原型を留めないほどぐちゃぐちゃになっていた。
そういえば、引っ掻かれた直後、いきなり叫び出してグレイウルフをすごい力で殴っていた。『ベルセルク』スキルを持っていたのかしら。まあそのことは一旦置いといて、解体を始めた。討伐証明の牙と私が倒した個体から毛皮を、ひと際大きな個体から肉を獲得した。
「んん…あれ、俺は…っつ、痛ってぇ」
解体を終え、昼過ぎになったころ、アオイがを目を覚ました。
「おはよう。調子はどう?」
「背中と左腕が痛むな。あと腹減ったせいか体がだるい」
「元気そうで良かった…。火を起こしてあるから、あとは肉を焼くだけよ。」
私が枝に刺した肉を焚火に持っていこうとした時、アオイが制止してきた。
「ちょっと待て。そのまま焼くんじゃねえよな。俺に渡せ。」
アオイはまな板に生肉を置き、透明な包丁を生成した。そして生肉に包丁を連続で叩きつけ、細かく切り刻んだ。…あ。そっか。ハンバーグを作ろうとしてるのね。でもあれって卵とか玉ねぎを使うと思うんだけど、ここにはないわね。じゃあひき肉の塊を作っているの?普通に焼くのとなにが違うのかしら。
「よっし。完成!これルーシーの分な。」
完成したのは、想像した通りひき肉の塊だった。とりあえず一口食べてみる。
…!ただのひき肉じゃない。噛めば噛むほど塩気が口に広がっていく。素朴な料理だけど、運動後の体に染み渡るわ。アオイの方を見ると、バックパックからパンを取り出し美味しそうにほおばっていた。なんかずるい。私の視線を感じたのか、彼は苦笑いを浮かべながら私にパンを渡してきた。私もパンをほおばり、塩気をリセットした。交互に食べるとそれぞれの良さが際立つわね。
「ごちそうさまでした」
アオイの言葉が、至福のひと時の終わりを告げた。
「さて、この後どうする?流石に狩りを続けるのはしんどいぞ。」
「…そうね。引き上げましょう。」
今回は失敗に終わってしまったので、今度はアオイの力量にあった戦いを心がけなきゃと思い、来た道を戻り街に帰還した。




