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第12話 狼と重傷

 次の日、目を覚ますとテントの天井が見えた。外に出てみると、焚き火の近くで本を読んでいるルーシーの姿があった。

 「おはよう。よく眠れた?」

 「ああ。おかげさまでぐっすり寝れたよ。今から朝飯用意するから待っててくれ」

 昨晩の残りを温め直して全て平らげた。さてと、今日もゴブリンを探しますかね。

 「アオイ、プラン変更していい?」

 と思ったらルーシーがそう提案してきた。そういえば昨日グレイウルフが近くにいたんだった。来た道を引き返せば遭遇するかもしれない。荷物をまとめて出発した。

 「ルーシー、グレイウルフって食えるか?」

 「問題無いんだな。なら調理法次第でどうにか食えそうだな」

 雑談をしつつグレイウルフの痕跡を探した。

 「お、これ足跡じゃないか。どうだ?」

 「うーん、これは鹿の足跡ね。この付近に棲息地があるかも。」

 鹿の足跡を辿った先には、6体のグレイウルフが鹿を捕食していた。一体が周囲を警戒しているが、鹿肉を前に注意が散漫になっていた。

 「数が多いな。どうする、仕掛けるか?」

 「そうね。奇襲で一体倒すからアオイは残りの注意を引き付けて。」

 「おいおいまじかよ、俺に死ねと?上等だ。やってやろうじゃねえか!」

 ゴブリンの時と同じようにルーシーが先制攻撃で捕食していない1体を狙撃した。それに乗じて後ろを向いているグレイウルフに渾身の一撃を放った。ケツからの一撃にたまらず悲鳴をあげた。その悲鳴を聞いた他の個体は食事を止め臨戦態勢となった。

 その間差した槍を深くまでねじ込み、思いっきり引き抜いた。直後、後ろから血を噴き出して絶命した。うえぇ、ばっちい。

 血を振り払っている間に追加で一体倒れた。3体のうち2体が俺を取り囲み、一回り大きな個体がルーシーからの攻撃を警戒していた。

…今気づいたんだが、ルーシーの姿が見えない。あいつ、隠れながら狙撃してたのか。

 俺の方のグレイウルフは右のやつが引っ掻き、左のやつは噛み付いてきた。右から迫る爪をかわしたが、噛みつきは回避できなさそうなので左腕を口に押し付けて攻撃を受けた。

 腕に鋭い痛みが走るが、おかげで動きを止めることに成功した。右手の槍を一度手放し20センチほどのナイフを生成し眼球にぶっ刺した。

 右からの攻撃を刺したやつを盾にして受けた。ふう、この衝撃で牙が腕から離れた。

 引っ掻いてきた個体はルーシーが仕留めた。ってあれ、残りの1体はどこに行った?

「アオイ、後ろ!」

  ザシュッ!

 気づいた時には、背中を爪で切り裂かれていた。回り込まれていたのか!クソッ背中が焼けるように熱い。今にも意識が飛びそうだ。

…こんな所で終わるのか?違う違う俺はまだふざけるなふざけるなふざけるな!!!!

 「あ゙あ゙あ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!」

 攻撃したグレイウルフを視界に捉えた瞬間に視界が真っ赤に染まり、痛みが引いていく。いや、違う。頭から指先まで熱が伝わり、今にも爆発しそうだ。

 俺は衝動に身を任せ眼前の敵を殴り飛ばした。2メートル近くあるグレイウルフは吹き飛び、体制を崩した。その隙を見逃さず、馬乗りになって再び殴りつけた。

 「ゴフ…ゲホッ!ガア…あ゙?」

 殴り続けて一体どのくらい経ったのだろうか。全身の熱が引いた時には血まみれの拳とグチャグチャになったグレイウルフの死体があった。

 終わった…のか?

 木の裏に隠れていたルーシーを見つけた時、糸が切れたように身体が動かなくなり、やがて意識も深き闇へ沈んでいく。最後に見えたのは、心なしか目を見開いて驚いたルーシーの顔だった。


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