第10話 お酒が飲みたい受付嬢
俺達はギルド直営の酒場に来ていた。ここでご飯を食べながら今後の活動について話し合うつもりだ。
「それではパーティ結成を記念してー乾杯!!」
「乾杯。」
「……」
受付嬢の音頭とジョッキの音が酒場に響き渡った。
「ところで、なんでいるんですか?受付嬢さん。」
一体どういうことなんだろう。いち冒険者にこんなにも肩入れするのか?そんな疑問に受付嬢さんは朗らかに語りだした。
「冒険者をサポートするのは受付嬢の仕事ですから。親睦を深める手伝いをしてさしあげましょう!」
「…だまされないで。カリンは昼間からお酒が飲みたいだけ。」
ルーシーの言葉に図星だったのか受付嬢のカリンさんは目を泳がせていた。酒目当てだったのかよ。仕事中じゃないのか?
「うぅ…いいじゃないですか。で、実際のところ二人は今度どんな風に活動するつもりですか?」
「俺は討伐依頼をガンガンこなしてレベルを上げたいと思っているんですが。なあ、ルーシーはどうしたい?」
そう声をかけたのだが、彼女は反応しない。料理に夢中なのか方針に賛成なのかわからないな。まあひとまず俺も料理を楽しむか。
改めてテーブルに目を通すと黒いパンに野菜入りスープ、ホーンラビットのステーキ、酒の入ったジョッキが並んでいた。
黒いパンは白パンよりも硬く、急激に水分を欲してしまう。そこでスープを流し込むことで野菜の優しい味がパンに染み渡り、絶妙な調和を生み出していた。
ひと通り味わったのでステーキを切り分け口に放り込んだ。ホーンラビットの肉は鶏肉のように淡白な感じだが鶏肉とは異なる上品な旨味を堪能した。
パンやスープで味変しながら食べていると、あっという間に300グラムほどあったホーンラビットのステーキは皿の上から消えていた。
「ごちそうさまでした」
初めて酒を飲んだが、酸味が強く疲れた体に染み渡り、とても美味しかった。改めてこの世界に来てよかった。若干酔いの回った頭でそんなことを考えていると隣の席のルーシーが俺の腕をつついていた。
「この後武器屋に向かうわ。ついてきて。」
既に食べ終えているようで、今すぐにでも出発したそうだ。カリンさんに一言「ゴチになります!」と告げて酒場を後にした。
後ろから悲鳴が聞こえてきた気がするが、気にしなくていいだろう。にしても武器屋か。何しに行くんだろうな。十分ほどルーシーにつづいて歩いた先は、先日俺が槍を購入した武器屋だった。
「おじさん、メンテナンス終わった?」
「嬢ちゃんか。バッチリだぜ!ほれ、こいつだ。」
そんなやりとりの後、店主から金属と木材を組み合わせた弓が彼女に渡された。明らかに質の良さそうな武器だな。メインウェポンが弓だから剣が使えなかったのか。ルーシーが試し打ちしに裏庭に入った時、店主が話しかけて来た。
「嬢ちゃんと組んだのか、坊主。槍の手入れはしているか?」
「汚れを落とすくらいしかしてません。あ、やり方教えてほしいです。」
槍の他に剣や斧などの手入れを一通り教わったとき、ちょうどルーシーが戻ってきたので、武器屋を出て、今日は解散となった。
長い1日を終えてようやく宿に帰還した。研修3日目でホーンラビットを倒し、助けたルーシーとパーティを組んで、受付嬢のカリンさんは酒が大好きと…いやぁなかなか濃い一日だったな。
だが寝る前にやっておきたいことがある。夕食を食べた後、おばあさんに用意してもらった藁の束を持って裏庭に出た。
そして俺は落ちてた石ころを拾って、藁の束に投げつけた。そしてを拾って再び投げた。
…この奇行にはちゃんと理由がある。【投擲】スキルを取得しようとしているんだ。あるかどうか知らんけど、戦闘力を少しでも上げておきたい。スキルの取得条件がヒット数なのかキル数なのか、動作を行った回数なのかも知りたいし。
というわけで疲れた体に鞭を打って100回まで投げ続けた。終わった時には汗びっしょりだったので服を脱ぎ、井戸水を全身にぶっかけて汗を洗い流した。その後、風邪を引かないように体に付着した水をすぐに拭き取り、横になった瞬間に眠りついた。
明日が楽しみだ。




