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復讐魔王~勇者は皆殺し~  作者: ケイ


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"闇。剣と為せ"


意思を表明し、かざした手のひらの先に漆黒の剣を創り出すジーク。

そしてそれを握りしめ、軽く振り払う。 


そのジークの仕草。


そこにはーー


世界を創り変える。そんな子供じみた戯れ言。

それに付き合っている暇などない。


という思いが宿っていた。


金色と対する、漆黒。

その光景はまさしく。

光と闇の対峙そのもの。

 

「貴方はなにもわかっていない」


応えるように剣を振り。

自身の思いを発するガイア。


「天上という名の加虐者。それによって虐げられ続けるこの世界が正しいとでも思っているの? 加虐者たちを神託により勇者に選ばせ、被虐者である貴方を魔王に選び。光と闇という言葉を並び立て、世界を弄ぶ。貴方が受けてきた虐め。それが、今。世界中に蔓延しているというのに」


「原因を創ったのは勇者共てめぇらだろ。てめぇらのしてきたことを棚にあげ責任転嫁してんじゃねぇぞ」


「……」


「俺は天上には感謝している。こんな力を与え、最高の復讐の機会を用意してくれたことにな」


「……っ」


話しは終わりだ。

もはや、時間の無駄。

二人は揃って結論づけ、同時にその足を踏み出す。


そしてーー


魔王ジーク。やっぱり、貴方は私の障害だ」


勇者ガイア。やはりてめぇの根本は加虐だ」


そう声を響かせ、互いに駆け出す。


ぶつかり合う、魔王と勇者。

飛び散る、闇と光の粒子。


刃を合わせ、拮抗する二人の力。


「てめぇ、どこで経験を積んだ? 随分と大層な装備を創ってんじゃねぇか」


つばぜり合いを展開し、ジークはガイアへと問う。

折れない創られた聖剣。闇に侵食されない光輝く鎧。

その武器と防具は、まさしく伝説に語られる代物。


天空勇者ユーリアの装備の比じゃねぇな、その剣と鎧」


「貴方を殺すことだけに特化した装備。これを創る為には、"ソフィーナ"の死が必要だった」


「死が必要……だと?」


二度三度と剣を交わし、距離をとる二人。


ガイア。ジーク。

共に、その息は切れていない。


「やっぱりこれじゃダメ」


金色の剣と鎧。

それを霧散させ、ガイアは赤色のオーラを表出させる。


ジークはその姿に、悟った。


「勇者共の死。それが、てめぇの経験になるってことか」


「……」


ジークに応えず、ガイアは創造の力を奮う。

現出するは、赤々としたオーラ。


「ソレはアレンの死か」


焔勇者アレンが力を極めれば得ることができた力。全てを焼き尽くす、聖なる焔の調べ」


赤々としたオーラは焔となり、ガイアの身を鎧のカタチをとって包む。


ガイアの放った"障害"という言葉。

その真の意味を理解し、魔王ジークはしかし嗤う。


「てめぇの力が抑えられてったって意味での障害か。どうやら魔王オレは、知らず知らずの内にてめぇの手助けをしちまったようだな」


「嗤うな、魔王ジーク


「この俺を殺せば世界を創り変える力が手に入るって算段か。こうなることがわかってりゃ……いの一番に、てめぇをぶち殺してやったてのに」


ガイアは放つ。闇を焼き尽くす聖なる焔を。

魔王ジークの言葉。それを遮るようにして。


だが、ガイアは未だ知らなかった。

"魔王"という名の障害。

それは、ガイアの力の遥か上をいっていっているということをーー。


聖なる焔。その闇を喰らう焔。

本来なら、焔勇者アレンによって創りだされるべき力の具現。幾多の経験を積み、そして目覚めるべき深紅の矜持。


だが、それを創り出したのはーー


勇者の死を糧とする、創造勇者ガイア


魔王ジークを餌と見定める獣のごとき勢い。

それをもって、創られた聖焔はジークを包み込まんとしていた。

その光景を見つめ、ガイアは淡々と言葉を続ける。


「極められた勇者の力。それに、貴方は勝てない」


創造主オリジナル気取りか、ガイア。所詮、てめぇの操る力は本物じゃねぇだろ」


無機質なジークの声。

その余韻の中、焔を弄び。そして、己の闇の餌と為す魔王ジーク


そしてジークは、手に握っていた漆黒の剣をガイアへと投擲する。刃の向き。それを、ガイアの胸元に己の意思をもって固定しながら。


焔を裂き、ガイアへと飛来する剣。

その刃先を見据え、ガイアは更に創造の力を奮う。


瞳に褐色の光を宿し。


「堅牢」


そう、短く呟きながら。


刹那。


堅牢勇者の力。

それが、ガイアの身を守るように展開される。巨大な盾の形をとって。そしてそれは、堅牢勇者ゴウライに発現するべきだった勇者の力のカタチだった。


弾かれた漆黒の剣。

それは、校庭のほうに飛ばされ空中で霧散していく。


魔王ジークはしかし、その霧散した剣に気を向けることすらしない。


ただ、ガイアの姿を見据えーー


「次はなにを見せてくれる? クロエか? それともイライザの力か? まっ、創造主オリジナルに劣る創造勇者てめぇの力なんぞどれもこの俺には通用しないがな」


わざとらしく声を響かせ、ジークはガイアの元へと歩みを進めていく。


そのジークの姿。

それを見つめ、「虚勢」と呟くガイア。


決して退かず。そして、魔王の力を畏れず。

ガイアは、闇刃勇者クロエ迅雷勇者イライザの力を己の左右の空間に創造する。


意思持つ闇の刃ーー闇刃ダークブレード

稲妻を喰らいし竜ーー雷竜サンダードラゴン


「全ての勇者が消えた今。創造勇者たるこのガイアを上回る存在なんてこの世界に居ない。貴方でさえ、虚勢を張ることしかできないのだから」


左右の瞳。

そこに闇と琥珀をたたえ、ガイアは命を下す。

闇刃と雷竜に向けて。「魔王ジークを殺せ」と。


創造勇者の命。

それに従い、ジークを"敵"と見なし牙を剥く二つの力。


「まだ、終わらない」


声を発し、ガイアは続けて創水サファイア疾風フィンの力を創造しようとした。

その両目を蒼と碧に変えて、内からみなぎる力に勝利を確信しながら。


***


"創造勇者"。

その勇者は長い歴史の中で、全て悲惨な最後を迎えた。

勇者の死がその経験となり。

そして、その奮われるべきだった力を創造し操る。


そんな勇者に選ばれた者たち。


ある者はその力に絶望し、勇者の死を待つぐらいならと自ら命を絶ち。

ある者は勇者たちに"敵"と見なされ、虐め殺され。

ある者は魔王により、真っ先に殺され。

またある者は、自らの手で勇者を殺しそして魔王を倒し。己の内に後悔と自責を引きずったまま余生を過ごし、"世界の英雄"としてこの世を去った。


人々は、勇者の力のことを深くは知らない。

大聖堂もまた。神託により、盲信的に勇者たる者を選んでいた為に、勇者の力に目を向けることなどしなかった。


此度も世界は救われた。

そんな言葉を、ずっとずっと繰り返しながら。


***


だからこそ、ガイアは喜んだ。

自分が創造勇者に選ばれた時に、「兄の仇と世界の創り変え。それが叶えられる」と、内心で呟いて。


「……」


「なに嗤ってんだ、ガイア」


「貴方には関係のないこと」


闇刃と雷竜を打ち消した、ジークの問いかけ。

それに、歪んだ笑みで応えるガイア。


"「魔王が自害した?」"


"「うーん。別にいいんじゃない? これで世界が平和になることだし」"


"「まっ、そうだな。よし、平和になった世界で存分に羽をのばそうぜ」"


"「それにしてもラッキーだったわね。こうも簡単に英雄になれるなんて」"


あんな奴等より、兄のほうが勇者にふさわしかった。

そして今回も。もっとふさわしい人たちが居たはず。

だから、私は勇者の死なんてどうでもいい。


ガイアの嗤い。

それと共に放たれた創水と疾風の力。


水牢結界アクアプリズン

風聖烈風セイントウィンドウ


蒼色の力は水の球体となり、風は全てを切り裂く真空となり。

魔王ジークへと殺到。


だが、それをーー


「そろそろ。終わりにするぞ」


その一言と、魔王の瞬きで相殺するジーク。


そして"転移"と意思を表明し、魔王ジークはガイアの背後へと移動する。


「終わる? 終わるのは、貴方」


声を響かせ、"永久時間停止エターナル"と時勇者の力を創造するガイア。

更に、「この力をもったまま過去に戻り、貴方を殺す。そしてこの世界に創造勇者ガイアとして戻り、全てを変えるーー"完全時間跳躍パーフェクトリーパー"」と声を発し、魔王ジークへと更なる追い討ちをかけようした。



しかし、その瞬間。


勇者共てめぇらにできることが、魔王オレにできねぇとでも思ってんのか?」


そんなジークの声をガイアは聞いた。


「あの時勇者クズにも言ってやったっけな、この言葉。創造主にすらなり得るこの魔王オレを……舐めるなよ、創造勇者ガイア風情が」


時勇者の力。

それを"言葉のみで無かったこと"にし、左手でガイアの肩を掴むジーク。


「……っ」


初めて。ガイアは感じる。

魔王ジークに対する畏怖と、絶望的な力の差を。


震え、ゆっくりと後ろを仰ぎ見るガイア。

その表情は創造勇者ガイアのそれではない。。

それは、全ての思いと全ての力を砕かれた脆弱な一人の人間ガイアの表情だった。


「あ……あなたは、ナニモノ……なの? ゆうしゃ。魔王の次元を……越え……こえ……てーー」


響く、ガイアの問い。


それにジークは応えた。その右の手のひらを握りしめ。


己の手で消し去った全ての加虐勇者の力。

それを、そこに込めながらーー


被虐者オレ魔王オレだ」


と。

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