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復讐魔王~勇者は皆殺し~  作者: ケイ


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金さえあれば、なんでもできる。

それが、フィンの持論であった。

世の中は常に弱肉強食。

いくら口では綺麗事を言ったところで、最後は皆金の力の前に屈する。


「ね、セシル。結局、金だよね?」


「は、離して」


「だーめ。セシルはもう、ぼくの玩具なんだから」


フィンに手足を縛られ。

セシルは、ベッドの上に寝かされていた。


「玩具は玩具らしく、ぼくを楽しませてよ」


笑い、懐からナイフを取り出すフィン。

そのナイフを目にし、セシルは目を見開く。


飲み物に混入された睡眠薬。

それを飲んだことが、セシルの過ちだった。

気づけば、手足を縛られこの状況。


そして――


「せ、セシルは怖い。痛いのは、嫌い」


目に涙を溜め、セシルはフィンへと懇願をはじめる。


「痛いの嫌い。怖い、怖い。セシル、怖い」


「はははッ、可愛い娘に言われちゃうと興奮しちゃうよね!! なぜぼくが君を選んだかわかる? それはね――」


ベッドに座り、セシルの髪の毛を引っ張りあげるフィン。


そして、ナイフの刃先をセシルの頬に伝わせ。

舌舐めずりをし言葉を続けた。


「お前が一番、いい声で鳴くと思ったからさ」


言い切り、ナイフでセシルの頬を切りつける。


「ひっぐぅ」


と声をあげ、痛みに震えるセシル。


その姿にフィンは更に興奮し、続ける。


「金さえあればね、なんだってできるんだよ。今まで何人の女の子をこうやって虐め犯したかな? ははは、覚えてないや」


「……っ」


「代わりはいくらだって居る。パパに言えば、いつだって新しい玩具を用意してくれる。今回はあのジークのせいで、好みの女の子じゃなく“強い”ことを前提に人選をしたんだけど……それが、失敗だった」


ディラン。

ペルセフォネ。


その二人の姿を思いだし、フィンは唇を噛み締める。


「あの二人は面白くない。だって、ぼくの言うことを素直に聞いてくれそうにないんだもん」


「……っ」


「だからね。だからぼくは、セシルが居てほっとしたんだよ。一人でも虐め犯したくなる女の子が居たことにね」


煌めくナイフの刃。

そこに反射する、フィンの歪んだ笑み。


「セシルのあの目。あの目でぼくは決意した」


大広間でのやり取り。

セシルがフィンの手をとった時に見せた、全てを見透かしたような眼差し。


その瞳で、フィンはセシルを虐め犯すことを決意した。


「喜んでよ、セシル。このぼくが君を選んであげたこと、今から虐め犯されること。嬉しいよね?」


セシルの上。

そこに馬乗りになり、ナイフを振り上げるフィン。


セシルは悲鳴をあげようとする。


だが、その口をフィンの左手が塞ぎ――


「まずは、胸から傷めつけようか。はははッ、これで疾風勇者として少しは成長でき――ッ」


そう声を発しようとした、瞬間。


疾風勇者フィン様。ディランです。ひとつお耳に入れておきたいことがあり、参りました」


そんな声が響き、扉がノックされる。

そしてその後に続く、もうひとつの声。


「このことは大変急を要するもの。ですので――」


「急を要する?」


フィンは舌打ちを鳴らし、扉のほうを見つめる。


そして。


「なにが急を要するって? さっさと答えてよ」


「はい。実は貴方のお父上がたった今」


魔王ジークの襲撃を受け、お亡くなりになりました」


凍りつく、室内。

フィンは汗を滲ませ、扉のほうへと駆け寄っていく。


そして――


「お、おい。それは本当か? い、いや。嘘に決まってる」


そう言い、扉を開け放つ。


刹那。


フィンの眼前に晒される、苦悶に満ちた生首。

それは確かに、フィンの父のものだった。


同時に響く、聞き覚えのある声。


「久しぶりだな、フィン。これが、金で魔王オレを倒せなかった者の末路だ」


微笑む、二人の陰。


そこからゆらりと姿を現したのは――


「じ、ジーク」


紛れもなく、魔王ジークだった。


ごくりと唾を飲み込む、フィン。

その顔に滲むのは焦燥という名の汗粒。


どうしてパパが、死んでいる?

どうして、パパがパパが。

それにどうして、底辺ジーク野郎がここに居る?


フィンの胸の内。

そこにこだまするのは、答えの出ない問答。


「じ、ジーク……き、君がやったのか?」


フィンの震える唇。

そこから紡がれたのは、そんな問いかけ。


「ど、どうして……パパは、お金をたくさんもっていた……はず、なのに」


その的を得ないフィンの疑問と言葉。

ジークはしかし、最後の手土産とばかりに答えていく。


「見りゃわかんだろ、疾風勇者フィン。俺が殺ったのさ。転移して、数十分でな。てめぇの目は節穴か? まっ、金のことしか脳にねぇボンクラなら仕方ねぇか」


そして、言葉を言い終えるのと同時に。

ジークは、手に持っていた生首を室内へと投げ捨てた。


べちゃっ。


という音と共に窓にぶつかり、ごろんと転がる生首。

その生首の目はしかと、フィンの顔を捉えていた。


「最後の最後まで金のことしか言わなかったな、その首だけ野郎は。はははッ、だから言ってやったんだよ!! 今すぐ金貨100億枚用意しろってな!! 無理です。なんて涙目で答えやがったから――殺ったのさ」


陰るジークの瞳。


「……っ」


フィンは、後退りをはじめる。


その理由は――


ジークの表情は嗤っていた。

しかし、そのフィンを見つめる瞳には一切の情けも躊躇いも宿っていなかったからだ。


「お、おいディラン」


フィンはディランへと声をかける。

そして、愚かにも助けを乞うてしまう。


「こ、この底辺ジークを殺せ。ほ、報酬は弾む」


しかし、ディランは応えない。

代わりに、指を三本立て。


「でしたら、金貨300億枚追加上乗せでお願いします。あっ、勿論セシルさんの精神的肉体的な治癒費は別でお願いしますね」


「な……っ。お、お前、ぼくを裏切るつもりか? ペ、ペルセフォネこの二人を殺してくれ。ききき金貨10万枚でどうだ?」


フィンは足掻き、ペルセフォネへと涙目を向ける。

だが、結果は変わらない。


それどころか寧ろ、事態は悪化してしまう。


「金貨1000億枚」


「へ?」


「てめぇに慈悲をかけ瞬殺してやる金貨の枚数だ。払えねぇなら、じわじわとなぶり殺しにしてやる。てめぇのパパとやらは多少の情けで瞬殺してやったが……てめぇは――金がねぇなら、是非もなしだ」


話しは終わり。

そう言わんばかりに、ジークはフィンとの距離を詰めていく。


ディランとペルセフォネはセシルへと意識を向け、ベッドのほうへと歩みを進める。


その二人の表情。

それは、とても満足気でそれでいてとても楽しそうだった。

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