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ABSOLUTE CONTROL ~リアルの呪文をあげる  作者: メイズ
穏当な帰結と当惑の帰趨
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私しか知らない死の真相〈永井ヨネリ〉

古典教師 永井イネリの姉、ヨネリ目線で。

 私には罪はない。


 当たり前じゃない。

 私はあの人たちが死んだ際には指一本触れてはいないのだから。


 XXX遊びなんて誰でも知っていることでしょう?

 純真なかわいいイネリは知らなかったけれど。


 そんなの私が生まれる何十年も前から続いてるらしいし。


 私はそれについての話題を母親に振っただけ。一回くらいならと試した人がいけないのよ。私が勧めた訳じゃない。


 見栄っ張りで体裁を気にする人だから、父の浮気と隠し子を知っても、回りには一見平静を装ってはいたけれど、精神は衰弱していた母親。


 あの夜も母は眠れずにいた。


 お父さんが宿泊研修で留守の間に薬を抜こうとしたようね。苦しい最初の夜。脳がいつものように要求して来るから落ち着かなくてじっとしていられないのよ。


 眠剤(みんざい)を飲んでいた模様だから、朦朧としながらも眠れないという哀れな状態ね。


 化学物質摂取で脳を誤魔化そうだなんて お馬鹿なことするからそうなるのよ?


 そんなにリアルが嫌ならリアルを矯正する努力をするか、はたまた全てを捨ててここを逃げ去るとかすれば良かったのに。


 世間体を気にして気取っているのも大変ね。


 あげくの果て ひと昔前に支配階級が労働階級をロボットの如く従順に強制労働させるために使っていた悪魔のような手法を自らに使ってしまうなんて、なんて愚かな人だったのかしら? 



 ーーーあの夜、静寂の中 窓を開ける音で目が覚めた。


 ベランダに出ていた母に気づいた私は 呼び戻そうとしたのだけれど、私の言うことは聞いてくれなかった。

 心底私を見下して 支配下に置いているという意識でいる母は、私のことを薄ぼんやりとは認識出来ていたようで。


 仕方がないから、私はとうに死んでしまったおばあちゃんの真似をしてみたの。


 そう、お母さんのお母さんの振り。


 私がすごく小さな頃、一度だけお母さんから聞いた事がある。

 おばあちゃんはすごく厳しくて怖かったって。それに比べたらお母さんはあなたに優しいのよ、って。



『お母さん、"あれ" されたこと、いまだに夢に見るくらいよ』



 覚えてた。私、昔から記憶力いいもので。



『マヨリ、こっちへ来なさい! お母さんの言うことは絶対よ! 守れないのならあれするよ!』



 これで戻ってくれるかな?


 "あれ" って言うのは私、何かは知らないけれど。


 そしたら、あの人・・・私を怯えた目で見ながらあわあわと後退りを始めて。


 危ないから無理にでも引っ張って連れ戻そうと思って近づいたら、いきなりエアコンの室外気に乗って、それから柵の外に飛び降りてしまったのよ?


 あっという間の出来事だった。


 私の計画では、その内にそっと薬物依存症の治療施設に入れて、晴れて私たちの前から消えてもらう予定だったのだけれど。


 こんな派手なことされたらもう隠しようもないよ。



 ま、こうはなったけれど私の目的は達成出来た。



 それから、父親の方ね。


 面倒な性格が露見した自分の妻を私たちに押し付け、自分だけは安らぎの居場所を作っていた、という とんでもない男。


 しかも母親がラリって死んだ後は、私たちにわずかな生活費を与えただけで放置。あげくの果て私たちを棄て、これまでのことは無かったことにして自分だけは幸せに暮らそうだなんて。


 この有り様で、世間での顔は真面目な中学教師だなんて、嗤わせるのはやめて欲しいものね。


 こういう人って一番たちが悪いよ。

 だってその仮面は世間ではわりと信用されている様子。


 こいつに対抗するにはそれなりの覚悟が必要だった。


 父には、今まで仮面をつけて守ってきた その教師としてのキャリアと、愛人とその子どもの存在、全てを強制的に賭けてもらうことにした。


 私の命と引き換えに。


 イネリにも余興に付き合ってもらったのよ。もちろん、イネリだけは鉄壁守ってみせる。昔から私を純真に慕ってくれるかわいい妹。

 私より弱いくせに、母に怒られてる私を見ると小さな全身でかばおうとして来たイネリ。


『よっちゃんをおこらないで! おかあさん、もうやめてっ!』


 巻き添えでいっちゃんまで叩かれて泣いて、泣くと更に叩かれて・・・


 ああ、思い出したらまたムカついて来た。もう、死んでくれたのに。


 イネリは本当にいい子だから、いざとなったら腰が引けて私を止めるかもしれない。だから、あの子の立ち位置をどこに置いとくかには細心の注意が必要だった。

 念のため、この事においては 私と同化させなければならなかった。


 本当は最終的に最悪の事態となってもこの子だけは絶対に死なせはしないのだけど、この子にも命を張っているように錯覚させることにした。


 だから、ちょっとだけイネリにも付き合ってもらうことにした。私はその時、心の中では妹に謝っていたわ。



 早速私は、私たち子どもの教育と生活への責任を放棄して、自分の事しか もはや頭に無い父親との対決をイネリに提案した。



『そうよ。お互い命を賭けてってどう? 3人揃って今までの人生の事実をさらけだそうよ。私たち家族の総決算よ? 面白そうでしょう?』


『命って・・・』


 イネリの青ざめた顔にも私の計画は揺らぐ事は無い。


『・・・私は許さない。私とイネリのこと見て見ぬふりして来たあの男のことを。自分だけは安らぐ場所を作っておいて、私たちはあの女の生け贄にされたのよ。自分から目をそらせておくためにね。とんでもなく無責任で卑怯な男だと思わない?』



 あんな父親はいなくても全く構う事ではないのだけれど、自分だけ 都合良く いち抜けなんて卑怯は許さない。


 私たちに暗闇の生活を提供してきた責任者はこの人に他ならなかったのだから。




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