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ABSOLUTE CONTROL ~リアルの呪文をあげる  作者: メイズ
穏当な帰結と当惑の帰趨
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真実を教えてあげる〈ルルス〉

エタってねーぞ ( ゜Д゜)b

 驚いたわ。


 まさか今頃 またこの私に接触して来るなんてね?


 私の去年のクラスメイトの金谷(かなや)くんが私に聞きたい事があるだなんてメッセージを寄越して来たの。



 それは6月に入って最初の月曜日の夜のことだった。


 私が塾から帰っていつものように1人、夕食を食べていた9時過ぎ。


 お母さんはまだ帰ってない。今頃は最終授業している時間。


 授業を受けてる訳じゃないわよ。私のお母さんは大手学習塾の講師。


 若い頃は中学校で教師をしていたとか。

 でも、事情があって自己退職してその後、塾講師になったと言ってた。


 お母さんがいるのは私の行っている塾とは別の大手学習塾。


 まさか私が母親が働いている学習塾に通うわけないじゃない。


 


 お父さんは私が小学校3年生の時、交通事故で亡くなった。


 詳しい事故の様子は私にはわからない。お母さんは話したがらないし、無理やり聞かなくても別に。


 当時のお母さんはそれはすごい取り乱しようで、子どもの私はとても困惑して冷めた目で見ていた事を思い出す。


 それ以来、私はお母さんと、たった二人きりの家族。


 といっても、お父さんはそれまでもほとんど家にはいなかったし、特に変わりはないけれど。


 もともと、父親の記憶なんてほとんど無かった。


 一緒にどこかへ出掛けたとか、特別な思い出もないし、はっきり言って もうほとんど覚えてないし、写真が無かったら顔さえわからないくらいだわ。


 悲しみなんて全くないし、父親の写真を見たところで慕情すら抱くことはないわ。


 もともと影の薄い父親がいなくなったからって私には影響など何も無いのよ。


 だから、私は他人からそのことで同情されたり、いたわる素振りを示されてもウザいとしか言いようはないの。



 お母さんが悲しみから精神を消耗し、働けなくなってしまって次第に生活も重苦しさが かさんで来てたある日、とある弁護士からの連絡を受けとった辺から 私たちの生活は変わり始めた。


 お母さんと私はお父さんの死亡により多額の慰謝料とか賠償金を受け取れることになったらしかった。


 私もその時、書類にサインして相当の金額を受け取ったようなのだけれど、子どもだから母親が管理人で、結局はどうなっているのかはわからない。


 でも、そのお陰で私は片親の家庭にありがちな金銭的な制約も引け目も感じることなく、今まで何不自由なく過ごして来た。


 孤独ではあったけれど。


 だって、復帰したお母さんの仕事は相変わらず学生の放課後から始まるのだから。


 私とはスレ違いの生活だわ。


 家でのほとんどの時間は一人きりで過ごしてる。昔も今も。






 そのメッセージが来たのは夜9時過ぎのこと。


 私は塾の帰りに通りがかりのスーパーで買ってきた、半額になってたひつまぶし弁当をつついていた。



『久しぶり。元気? ちょい、宇良川さんに聞きたい事があるんだけど、いいかな?』



 あの因縁の金谷ライダからだった。


 もう、クラスも離れたし関わることなんて無いと思っていたのに。

 今頃何の用か知らないけれど、きっと私にとって良くない事に決まってる。


 私は即座に返信した。



『どんなこと?』


『宇良川さん、津田沼如月と同じ中学出身なんだってな』



 ・・・ほらね。


 どういう訳か、私の過去の傷口に触れた。



『誰に聞いたの? それがどうかしたの?』


『宇良川さん、知ってるだろ? 中3の時、キサラとその友だちにひどい噂流れたそうだけど』



 ・・・どこでその情報を仕入れたかは考えなくてもわかるところね。



『たぶん。思い当たることはあるけど』


『それ、宇良川さんが関わっていたってことないのかな?』


『どうしてそんなこと金谷くんが聞いてくるのか不思議』


『キサラから頼まれた。その事で宇良川さんと会って話を聞きたいって言ってる』



 津田沼如月くん。



 中3の時に流れた津田沼くんの仲良しグループ4人に対する中傷の噂話。

 津田沼くんがその事について聞きたいって言ってるらしいよ?


 ふふふっ、今頃私の魔法のスペルに気がついたのかしら?


 私を責めるつもり?

 そうだとしたらそれは間違いよ。


 私があんな下品なゲス話、したわけないじゃない。


 私はちょっとした魔法のスペルをつぶやいただけ。

 私はあなたたちの悪口なんて、一切言ってはいない。



 それが真実。



 ただの噂話があんなひどい噂になったのは正当な天誅なのよ。


 あなたたちが私や周りの人間を貶めたからなの。


 その傲慢な態度で。


 それが無意識だろうが意図的であろうが、周囲の生徒を卑屈に追いやり、与えた羨望と嫉妬心が言霊となって具現化したに過ぎないの。



 でもね、あれであなたたちの罪は償われたのよ?



 だからもう、私の関知することではないの。終わったことなのに。それなのに、今頃になって。



 うざいな。



 私は握った割り箸をひつまぶしにぐさぐさと何回も突き刺す。



 どうして急にそんな昔のことを言って来たかって見当はつくわ。


 去年の1年D組での私の噂を聞いたのよね? 金谷くんから。


 きっと津田沼くんは金谷くんから、あることないこと吹き込まれたの。


 私は本当の事しか言ってはいないのに、皆、自分に都合の悪いことは隠して私を悪者にして被害者ぶってるのよ?


 呆れてしまうわ。


 本当に人間って醜悪な生き物ね。




『私が悪口を流したとでも言いたそうだけど?』


『違うのならキサラに直接そう言ってやってくれよ』


『それで気が済むのなら』



 いいわ。


 今さらまたあれを蒸し返すというのなら、真実を教えてあげる。


 私はあの時、どれくらい傷つけられたかを。




 私は津田沼くんと今週の金曜日の放課後、進路資料室で会って話すと金谷くんに約束した。



 もちろん、どう処理するか 私の頭の中では模擬的な演算はとうに終えていて、私にとっての最善のシミュレーションは構築出来ていてよ?



 私、あなた方とは違うんです。






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