表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ABSOLUTE CONTROL ~リアルの呪文をあげる  作者: メイズ
穏当な帰結と当惑の帰趨
89/221

The two secret admirers〈ライダ〉

 木見戸リンから受け取った弁当。


 若草色の包みを開けると漆塗りの3段重が出てきた!



「すっげーな。ライダ」


「早く並べてみようぜ」



 頑張ったな、木見戸。すっげぇうまそうじゃん!

 ついでに俺の分まであるなんて、キサラの親友の役得だな。


 生徒会室で重箱を広げた俺は相当木見戸を見直してる。

 こんなの作れる女の子ってマジいいよな。これならキサラだってきっと。




「キサラ、誕生日おめでとう! 俺より先に17才だな」


 キサラと二人、こうして過ごせることに感謝するぜ!



「サンキュー! ライダ。俺、家でも誕生日にこんな豪華なごはん出してもらったことねーし」


「そうなのか? じゃあ作ったかいがあったってもんだな」


「ライダも少しは手伝ったのか?」


「いや、俺はなんも」



 木見戸のことキサラにどうやって伝えよう?

 本命彼女がいるわけだし、ここは慎重に進めないとな。


 俺はこの弁当のこと どう切り出そうか考えてたら、キサラが重大な欠損を発見した。



「・・・でもさ、箸無くね? 取り皿とかも。このグレープフルーツの皮に入ってるゼリーもスプーン必須だぜ」



 マジ? 木見戸ぉ・・・


 この失態はなんとかカバーしねーと。 



「・・・マジで?・・・・・と、とりあえずおむすび食おうぜ、ほらっ! これならまず問題はない」



 俺はおむすび片手にもう片手で木見戸にメッセージを入れる。


『木見戸、箸無いっ! マジ無いのか? 俺ら生徒会室』


 あいつ、ほんとに忘れたのか?



『すぐ持ってくっ!』


 秒で返事が来た。


 良かったー! 



 事情知らないキサラは、箸無くてこれどうすんだよって顔してる。


 俺はおむすびにかぶりつきながらとにかくキサラも食うようにジェスチャーで伝える。



「お、おう・・・」


 キサラがおむすびに手を伸ばした。


 俺は笑顔をキサラに向けながら一言。


「お、このタラコおむすび、うめぇ!」



 この間を持たせなければ。木見戸の良い印象だけを残すために。


 戸惑う面持ちのキサラに、俺はどうってことない風に振る舞った。


「俺のはシャケだ。これもすごく美味いぜ」


 キサラが一口食べて笑った。


 ああ、よかったぁー! 妙な雰囲気の間が埋まったぜ。




 ・・・って、食うのはえーなキサラっ! よく噛んで食ってんのか?


 またもや微妙な間が出来ちまった。


 おむすびはまだ残ってるけど、目の前にうまそうな唐揚げに卵焼きもあんのに、おむすびばっか連チャン食いしたくないよな。


 お預け状態の俺ら。



「・・・・・」


「・・・えっと」



 木見戸リン! まだかっ? 



 ・・・・・バタバタバタバタバタバタっ・・・ピタッ



 騒がしい足音がこの部屋の前で止まった。



 木見戸だ! ノックしたと思ったらいきなり戸を開けた。


 髪 乱してすげぇパニクりようだ。



 そこまで慌てなくてもいいだろってくらい息を切らした木見戸が、俺らのとこまで来たはいいけど、立ったまま膝に手ぇついてうつむいたまま動けなくなってる。


 少し息が落ち着いて来ると、体を起こし俺に小さなバッグを差し出した。



 キサラはこの女子を見て、先週 自分が話を聞きに行った木見戸リンだってわからなかった。


 キサラは化粧を落とした(なま)木見戸は初めてだ。


 俺、一回だけ、素顔の写真は見せたことあったけど、さすがにそれだけじゃわかるわけない。


 木見戸は木見戸で、キサラを目の前にしてとんでもなく狼狽えてる。

 まるでアイドルタレントを目の前にしてるかの如くの周章狼狽。


 これは純情ぶったあざとい演技じゃねぇってわかる。

 女の子ってマジ好きな人の前だと、こんなんなるんだ?


 俺の経験上ではいなかったタイプだな。


 木見戸ってこんな純情な子だったっけ? 1年の最初の頃は男子に囲まれて高飛車っぽいイメージがあったけど、あれからルルスの呪いで性格も変わっちゃってたのかもな。


 ま、呪われて、1つくらいは良いこともあったってか? はん?



 キサラに素顔を褒められたら、ガチ浮き足立ってしまったようで、山で熊に出会った時の退避のお手本みたいな見事な後ろ歩きを披露し、立ち去って行った。



「ほらよ、箸とスプーンと皿」


 俺は木見戸(きみど)が持ってきたものを出した。


「あざー・・・ライダ、これ・・・?」


「あは、実はさ。これ木見戸(きみど)リンが作ったんだ」


 もう言ってもいいよな。


 キサラのことだから本命彼女の作ったもの以外受け取れねぇとか律儀に言い出しかねなかったからな。


 ここまで来れば食うしかないよな。


 もう、おむすびも食ったし、ご馳走が目の前に並んでんだから。



「はっ? お前、俺の誕生日祝うために木見戸(きみど)さんにわざわざ頼んで作ってもらったのかよ?」


「はっ? 違うって。俺がそんなことお前にするわけないじゃん」


「はっ? するわけ無いって? ライダ・・・これにはライダ愛が詰まってたんじゃねぇのかよ・・・?」



 ・・・! 



「はっ? 何で俺の愛が・・・?」



 何でそう思った? 俺の気持ちバレて?



「はっ? だって、お前俺のこと・・・」



 ・・・バレてたのか? 知ってたのか? 俺のどこでそう感じた?



「はっ? 何言い出しちゃってんの・・・」



 とりあえず誤魔化せ! 



「だって・・・・・俺のこと考えてただの言ってにやけてたり、俺が本命彼女いるって話したら、自分戸惑ってるけど引き返せないだの、この弁当にも俺への愛が詰まってるって言ったじゃねぇか」


「・・・・・確かに」



 ・・・ビビった。なんだ。ほぼ、木見戸関連のことじゃん。キサラが単に勘違いしてただけだ。



「だから、俺はてっきりライダは俺のこと・・・って思っちゃって・・・」



 ああ、だからさっきから会話の間が空く度に微妙な空気が流れてたんだ・・・


 キサラが俺の気持ちを受け入れる事なんて無いってわかってんのに知られる訳にはいかない。


 でもさ、聞いてみたい。キサラの気持ち。


 きっと今が最初で最後のチャンス。



「ぶはっ! マジかよ? そんで、キサラはどうする気だったんだよ? 俺の愛をどうする気だったんだよ?」


「・・・・・言うか! バーカ」



 ・・・その冗談めかした言葉と表情の中に 微かににじみ出た嫌悪感。


 だよな。


 知ってる。キサラは女の子オンリー。



 ・・・俺の気持ちバレたらどうなるかなんて、だいたいのことわかってるって。


 キサラは俺を傷つけないようにそっと俺から離れてく。


 だから、俺はそんな素振り、見せる気無いさ。


 俺はキサラの側にいたい。



「くっくっくっく・・・もういいから早く食おうぜ! キサラ」


「おう、いただきます!」



 俺、可能性ゼロ。


 いいさ。俺らには友情がある。俺は心の奥の痛みに蓋をする。



「この、卵焼きすげぇな。俺の姉ちゃん作るのなんて、もっとぐっちゃーってしてるけど、これ見た目もキレイだし、おいしいし、木見戸(きみど)さんハイスキルだな」



 キサラはもう食う方へ意識が変わってる。

 後は木見戸リンをアピールしとかなきゃ。



「夕べのうちから仕込んで今日は4時起きで作ったらしいぜ?・・・キサラの為にな」


「何で木見戸(きみど)さんが俺の為にそんなこと?」


「・・・ったく、決まってんだろ! そんなこと」


「は?」



 は? じゃねーよ、キサラ! 気づいてやれよ。この献身愛にさ。



「女子が弁当作って来るなんて、好きな人の為に決まってんだろ?」


「・・・木見戸(きみど)さんが・・・俺のこと?」


「ああ、彼女、キサラにすごく感謝してた。お前のお陰で "ルルスの呪い" が解けたってさ。お前、魔女の呪いを解いた王子様ってとこだな」


「・・・俺? あの清楚な美人でこの料理って・・・・・ヤバくね? でも、俺には本命彼女いるし、俺らもう心は通じあってっから。たぶん」


 よっしゃ。キサラ、木見戸のこともわりと気に入ってるみたいだ。


 でもな、やっぱり本命彼女には敵わねぇみたいだな。だよな。

 出会いからして出遅れてるんだ。今すぐ振り向かせるなんて無理だって。



 わかってたけど・・・



「何だよ、たぶんって。まあ、ライダが木見戸(きみど)の気持ちに応えられなくてもそれは仕方がない。この弁当はライダのお陰で呪いが解けたお礼も兼ねてる。だから、この事は気にすんな。木見戸(きみど)だってわかってるから」


「・・・ああ、わかった。さんきゅ、ライダ」


木見戸(きみど)って、マジいい子だぜ? 1年の時もさ、狙ってるやつ、クラスだけでも3人いたんだぜ? でもさ、あのメイク始めちゃったじゃん? ふふふっ。それで今までは意図せずプロテクトされてたっていうの? だけどこれからは競争率、高くなるぜ?」



 これでキサラに木見戸リンを印象付けられただろ?


 一旦はその本命の女子にキサラをとられたとしても、次のキサラの彼女は木見戸だ。



 木見戸リンは俺のアバター。


 身代わり。


 だから。




「なあ、そんで今日の放課後の宇良川(うらがわ)ルルスとのことだけど・・・」


「ああ、それな」


 キサラの顔が明らかに曇った。



「とにかく、もう時間ねぇし、食っちまおうぜ。食いながら相談だ」


「ああ、そうだな」



 木見戸リンは料理上手だな。

 俺たちは競うように食ってあっという間に平らげちまった。



「あ、キサラ、俺ついでに生徒会の仕事ちょいしてくからこれ、木見戸に返しておいてくんね? 」



 風呂敷に包み直した重箱をキサラに押し付けた。


 ほんとは今やる仕事なんて無かったんだけどさ。



「おう、了解! じゃお先な。放課後頼むぜ! ライダ」



 生徒会室を出る時、俺に振り返り、笑顔で手を振ったキサラ。




 どいつもこいつも俺に世話かけさせやがって。


 俺がここまで協力してやってんだ。



 頑張れよ、木見戸リン!






今週多忙のため、投稿休みます m(_ _)m


でも、もしかしちゃって書けたらUPします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ