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ABSOLUTE CONTROL ~リアルの呪文をあげる  作者: メイズ
挿話 それはピュアな片想い 
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感謝の印に千慮の一失

 今日は津田沼くんのバースデー。


 あたしは今日は朝の4時に起きたの。


 デザートのグレープフルーツゼリーは夕べのうちに作っておいたし、材料の下準備は夕べのうちにしておいたから、特製3段重のお弁当はスピーディーに手際良く完成!


 ネットで調べた たくさんのレシピの中から、男子が好きそうで見映えが良くて、あたしにも作れそうなメニューで仕上げた。

 全部あたしだけで作ったの。ママにも触らせたくなくて。


 我ながら天晴れな出来映えよ。彩り良く並べてすごく美味しそう。


 記念写真も撮っておいた。後でアップしようっと。いいね貰えるかな?


 ママにも出来映えを褒められたしね。



 あれからの一週間でうんとお料理の練習を重ねたから、今ではもう卵焼きは完璧よ。


 今日までに練習で失敗した数々はお兄ちゃんとパパに消費してもらった。


 大丈夫。あたしが作ったって言えばそれだけで嬉しそうに食べてくれるもん。


 その成果は津田沼くんに捧げます!


 うふ、喜んでもらえますように!



 あたしは、ライダくんに連絡済みで、朝のうちにお弁当を受け取って貰うことになっている。


 出来上がった三段重をきれいな若草色の風呂敷で包んだ。それを傾けないように手提げに丁寧に入れる。


「リン、取り皿と割りばしとスプーンを忘れないで」


 ママに渡された紙皿とカトラリーは別の小さなバッグに入れ、用意は完璧っ! 



 余った特製唐揚げと卵焼きはお寝坊のお兄ちゃんの朝御飯にメモを添えてテーブルに置いておく。


 大学生っていいよね。朝ものんびりで。



 あたしは朝の身支度を手早く終えた。朝御飯はつまみ食いしながらすませちゃったし。


 朝の忙しい貴重な時間をあのメイクのために費やしていたなんて、今思うとなんて無駄してたんだろって感じ。


 玄関で靴を履いていると、スエット上下に もさもさ頭のお兄ちゃんがちょうど二階から降りてきた。


「お? もう行くのか? はえーな、リン。ん? そのかさばってる荷物は何だよ?」


 やだぁ、もう。お兄ちゃんには関係ないのに。


「えっと、今日お誕生日の人がいるの。だからお弁当を・・・、お兄ちゃんの分もテーブルにちょっとだけ置いといたから」


「・・・何っ! まっ、まさかそれ、彼氏のために作ったとか言わねーだろうなっ? 最近妙に料理し出したと思ったらそーゆーことだったのかっ?」


「ちっ、ちっ、ちがうよっ! そんなんじゃないからっ、もう、お兄ちゃんたらキライっ!」


 あたしは恥ずかしくなって慌てて家を出た。



 今日はどんよりした空模様。


 荷物も多いし、折り畳み傘がリュックに入ってる。帰りは雨らしい。


 でも、あたしの心はうきうきよ。だって、津田沼くんに陰ながらだけど、あたしの感謝を届けられるんだもん。




 学校では、予定通り朝のうちにライダくんに特製3段重のお弁当を渡せた。


 ライダくんたら、あたしもお弁当一緒に食べればいいよ、なんて誘ってくれたけど、思わず断ってしまった。


 だって、いきなりそんなの恥ずかしすぎるっ! 

 本当は津田沼くんがどんな顔して食べてくれるか見たいに決まってるけれど。



 ライダくんは、いきなり相談を持ちかけたにもかかわらず、あたしのこと応援してくれる。


 去年クラスが一緒だったっていうだけなのに。


 とても嬉しいけれど、あたし、好きな人が既にいる津田沼くんの前に、名乗りを上げて参戦なんて出来ないよ。


 だってそんなことしたら津田沼くんが困ってしまうだけだもの。

 それに、どうせ振られてしまうのは目に見えてる。


 今は想っているだけで幸せ。


 一度ちょっとお話しただけの人をこんなにいきなりすっごく好きになってしまうなんて思いもしなかった。


 こんな事って本当にあるのね。心って自分でも不思議だわ。




 その日のランチタイムは、何となく落ち着かなくて・・・



「どうしたの? リン。食欲ないの?」


 あかりんがあたしの顔を見て首を傾げてる。


 お弁当を広げたものの、津田沼くんとライダくんがあのお弁当を食べてくれてると思うとそわそわしてしまって。


「うん、今日早起きしたからボケてるみたい」


「ふうーん・・・」


 あかりんの視線はあたしのお弁当の唐揚げに向かってる・・・


「良かったら、好きなの好きなだけ取っていいよ。あたし今、あんまり食べる気しないんだ」


「もう、リン! あかりんを甘やかしちゃダメだって!」


 アンリが苦い顔してる。


「アンリも好きなの取っていいよ。あたし、後でお腹空いたら おやつに持ってきたフルーツナッツのシリアルバーあるから大丈夫」


「そう? じゃ、いっただきー! あかりん、君の唐揚げは2個までよ。卵焼きは一個づつ」


「ういーっす」



 あたしの作った唐揚げと卵焼きを美味しそうにもぐもぐしてる二人をしり目に、ふと机の上のスマホのディスプレイがちらついたのに気づいた。


 あれ? ケータイに・・・ライダくん?


 うっそ! きゃーーーっ!! 


 そうよっ! 忘れてたっ! あの別のバッグに入れた取り皿とカトラリー! リュックの中!



『木見戸、箸無いっ! マジ無いのか? 俺ら生徒会室』



 あたしはケータイ片手にガタッと勢い良く立ち上がった。


 拍子に椅子がガッターンと後ろにひっくり返った。


「どうしたっ? リンっ? 」



 回りのすべてを無視し、神業2秒で送った。



『すぐ持ってくっ!』



 あかりんとアンリがむむっと顔を見合わせてる。



「ごめんっ、急用! お弁当全部食べちゃっていいよっ!」


 机の横のリュックの中に入れっぱだった小さな布バッグを出した。


 倒れた椅子もそのままに戸口へ向かう。



「おうっ! リン、腹の具合が・・・らしい」


「うん、一刻を争うほどに・・・急げっ! リン」



 あかりんとアンリの声が後ろで聞こえた。



 やーん、違うしっ! でも今はそんなことどうだって!



 昼食を取りながら談笑でざわめく教室を、あたしは一人ダッシュで飛び出した。







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